「刺激?自然? 排卵誘発はどの方法がいいですか」
AMHの値が 1 ・ 21 と低め なので心配です。
早目の ステップアップは必要ですか?
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秋山 芳晃 先生 東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学 附属病院、国立大蔵病院に勤務後、父親が営ん でいた産科医院を継ぎ、不妊症・不育症診療に特 に力を入れたクリニックとして新たに開業。O型・ やぎ座。9歳になる娘さんはズボラ(!?)なところ が先生にそっくりとか。ランドセルの中もごちゃ ごちゃだけど、自分の分身のようで怒れないとか。 それでも可愛くてメロメロ! 最近、選んであげ た服を着てくれなくなって寂しいそうです。
目次
ドクターアドバイス
●FSH値が低ければ卵巣の反応が期待できる
●中程度の刺激で複数採卵して妊娠率をアップ
●カバサールⓇは妊娠初期まで服用しても安全
ななちさん 34 歳 Q.結婚して4年目、1年前に不妊専門クリニックを受診してひと 通り検査をしたところ、8割自然妊娠が可能だと説明を受けま した。その後、人工授精にステップアップし、6回実施。次回か らは体外受精を考えたいと覚悟を決めていますが、AHM値が 1.21で、卵の数が少なめと指摘されています。採卵をするとした ら、刺激法と自然周期、どちらが私の体に合っているのでしょう か。また、6回目の人工授精の際、プロラクチンが17.2と高値を 示し、カバサール Ⓡを6週分処方されました。一度の検査結果で 毎週服用して体に問題はないですか? 妊娠希望なので、いつ まで安全に服用が可能なのかをお伺いしたいと思います。
治療データ
【検査・治療歴】
治療歴1年。
【現在の治療方針】
AIH6回目 3日後にプレグニール5,000筋注、4日後に ルトラールⓇを9日間服用。
プロラクチンが17.2と高いため、 毎週1回カバサールⓇ0.25を6週間服用
【精子データ】
フーナーテスト良好
AIH4回目精子運動率74.1→単層法にて83.3%
AIH5回目精子運動率71.6→2層法にて98.4%
AIH6回目精子運動率48.4→2層法にて93.7%
卵管にと取り込めていないかも
人工授精6回を経て、次は体外受精へのステップアッ プを考えていらっしゃるようです。
秋山先生 基本的な検査ではご本人に大きな問題は なく、ご主人の精子の状態も悪くないようです。
こ の段階ではっきりとした不妊原因を特定することは できませんが、6回人工授精をしてもうまくいかな いということは、卵管に卵子がうまく取り込まれて いない可能性もあります。
ということであれば、こ のまま人工授精を続けてもご妊娠は難しいと思われ るので、そろそろ体外受精へのステップを考えられ てもいいかと思います。
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低AMHでも年齢が若い
ななちさんはAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値 が低く、残っている卵胞の数が少なめと診断を受けた ようです。このような方が体外受精に進んだ場合、ど のような排卵誘発法を選べばいいのでしょうか。
秋山先生 AMHは卵巣の予備能、いわゆる卵巣年 齢を示すものだといわれています。
ななちさんは現 在 34 歳ですが、ご年齢の割には低く、1・ 21 という のは 40 歳くらいの方の数値ですね。
担当医の先生が おっしゃっているように、確かにあまり卵胞が残っ ていない状態だといえます。
このようにAMH値が低い方の場合、強い刺激を 繰り返して行うという誘発法はおすすめできないと 思います。
自然周期で卵巣に負担をかけずにご妊娠 できれば、それに越したことはありません。
しかし、 自然での採卵は周期で1個。周期あたりの妊娠率を 上げるのなら、できれば複数個採卵する方法を考え たいですね。
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ななちさんはAMHは低値ですが、年齢が比較的 お若いのと、FSH(卵胞刺激ホルモン)値はまだ 低めです。
このFSHも卵巣の能力を測る一つの指 標に。卵巣の力が落ちてくると通常、FSH値は高 くなってくるので、まだ低いということはある程度 卵巣の反応が期待できるのではないかと考えられま す。
ですから、最初から自然周期ということではなく、 まずは一般的な方法で卵巣を刺激して複数個の卵を 採る形をとったほうが、よりご妊娠が期待できるの ではないかと思いますね。
中度の刺激から試してみては?
こちらのクリニックだったら、具体的にどのような方法で採卵を考えますか。
秋山先生 FSH値が低いのでロング法のような高刺 激でも反応する可能性はあると思いますが、いざ行っ てみたら卵巣がまったく反応しなかったということも 起こりうるので、当院だったらロング法は選択しない と思います。
生理中の卵胞数にもよるので何ともいえ ませんが、このような方の場合、すごくたくさん卵が 採れるということは考えにくい。
そうすると、ロング 法のようにいったん卵巣機能を抑え込んでしまい、さ らに卵巣を刺激するという方法は卵巣にとってあまり 良くないのかなと思いますね。
もし刺激をするとしたら、クロミッドⓇ+注射や注 射+アンタゴニストなど、中程度の刺激法をご提案 すると思います。
ただし、この方法がななちさんに ぴったり合うかどうかは、今の段階では断言できま せん。刺激法は一度試してみないと、どう反応する のかわからないところがあるんですね。
選んだ方法 でうまくいかなければ、また違うやり方を考えてい くことになるかと思います。
高プロラクチン血症
もう一つ、心配されていることがあって、プロラクチンの値が高いということです。このことについては どう思われますか?
秋山先生 プロラクチンは日内変動(1日の中での 数値の自然な変動)が激しいので、一度の検査で基 準値を下回っていても、再検査をすると異常値にな ることがあります。
また、月経周期に伴う変動とし て、排卵期や排卵後の黄体期中期に高くなることも。
日内変動では夜間にピークとなるのですが、運動や 食事、ストレスなどで上がることもあります。
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プロラクチンの基準値は施設によって見解が異な る場合がありますが、だいたい 20 ~ 30 を超えると異 常と診断されることが多いと思います。
5~ 10 の間 くらいの値が良いとする考え方もあって、そこから みると 17 ・2というのはやや高い数値といえるかも しれません。
しかし、厳密な意味で治療が必要かど うかはその先生のお考えによると思います。
負荷試 験でも高ければ治療をするし、負荷試験で高くなけれ ば治療は行わないという数値だと思いますね。
ななちさんは実際に治療を始め、高プロラクチンを 改善するお薬を処方されているようです。これは体や 妊娠にとって悪影響はないのでしょうか。
秋山先生 処方されているお薬はおそらくカベルゴ リン錠(カバサールⓇ錠)と思われます。
このお薬の 添付文書には「本剤投与中に妊娠が確認された場合 は直ちに投与を中止することが望ましいが、やむを 得ず投与する場合には治療上の有益性が危険性を上 回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載 されています。
しかしながら、アメリカのFDAの 薬剤胎児危険度分類基準ではカテゴリーB(人での 危険性の証拠はない薬剤)に分類されており、妊娠 初期に使用して危険な薬とは考えなくてもよいと思 います。
流産を繰り返す患者さんへの対応として使 用することもあり、当院でも妊娠6週まで内服して いただいているので、ご心配はいらないでしょう。