初めての不妊治療で フォリスチム注50®使用後に 不正出血しました

排卵誘発剤フォリスチム注50®とは、どんな薬なの?

どんなふうに効いて、どんな副作用があるのでしょうか?

福井ウィメンズクリニックの福井敬介先生に伺いました。

福井 敬介 先生 1989年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人 科に入局、愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000年愛媛大学 産科婦人科学助教授。2001年、「高度な生殖医療をより身近な 医療として不妊カップルに提供したい」と、福井ウィメンズクリニックを 開設する。リフレッシュと体調管理のため、昨年秋からランニングを始 めた福井先生。その後、娘さんからせがまれて白い柴犬を飼い始めた そうで、「一緒に走るのが意外と楽しくて、ハマっています」とのこと。

この薬が知りたい!

●フォリスチム注50 ®

無排卵等における排卵誘発 に用いられる薬。
女性の卵 巣に働きかけ、卵胞を刺激 して排卵を促す。
医療機関 において適切な教育を受け た患者・家族の方は自己注 射ができる。
たこさん(32歳)からの投稿 Q.先月から不妊治療を始めました。卵胞の育ちが遅いため、フォリスチ ム注50®を打ちました。注射2日後、不正出血がありましたが、先生 からは「注射が原因ではない」との返答。細菌検査と炎症を抑える薬 を入れてその日は終了しましたが、6日経った今日も生理なみの出血 が続いています(生理周期31日、本日22日目)。細菌検査は陰性、 出血の原因は「何とも言えない」。そして「注射が原因ではない」と断 言されました。 インターネットで調べると、副作用の欄に不正(子宮)出血があり、一 気に先生を信用できなくなりました。この薬は私には合わないという ことでしょうか。やめたほうがいいのでしょうか?

フォリスチムと不正出血

たこさんの不正出血は、フォリスチム注 50®の使用が原因と考えられますか?
福井先生 この質問からは読み取れない部分も多いのですが、いただいた内容を見る限りでは、たこさんの場合は薬による副作用が原因ではなさそうです。
フォリスチム ® は、月経3~5日目から開始します。
たこさんは卵胞の発育が遅いため、ということですが、もともと遅いから使用を始めたのか、今回の周期に限って遅いので途中から少し補給したという状況なのか。
どちらなのかによって、結果は異なります。
フォリスチム ® は、初めての不妊治療の患者さんに積極的に使うものではありません。
おそらく、卵胞の発育が少し遅いため、誘発剤によって何個か育てようと考え、FSHを少量だけ補給したのではないでしょうか。
子宮内膜は、卵胞から分泌されるエストロゲンの値が上昇することによって厚みを増してきますが、卵胞の発育が遅いと内膜の中は不安定になり、不正出血につながります。
ですから、薬のいかんにかかわらず、卵胞が発育しなければいずれは不正出血が起こった可能性があります。
もともと不安定な内膜の状態に、フォリスチム ® を注射したために、卵胞ホルモンに変化が起こる。
しかし、投与量はホルモンが若干増える程度のもので、破綻を食い止めるレベルではなく、逆に破綻を助長した可能性が高いと考えられます。
担当の先生の説明不足があり、不信感を招いてしまった可能性もありますね。
福井先生 担当医とたこさんの間に、多少の誤解はあるのかもしれませんね。
卵胞発育に不安のある方は、フォリスチム ® を投与することで不正出血という結果も考えられます。
ホルモンバランスが崩れている状態で治療を始めると、そういうことも起こりうるのだと最初にご説明しておけば、患者さんが不安にならずにすんだかもしれませんね。

リセットすることも

今後の治療として考えられることは?
福井先生 出血が少量で、卵胞の発育が結構良いところまでいっているなら、注射を続けてもいいと思いますが、出血量が多ければ、前述のように子宮内膜が破綻しているため、排卵しても妊娠につながりません。
採卵のみの場合は別ですが、妊娠までを考えるのであれば、フォリスチム ® の使用をいったん止めて、リセット。
次の周期を待って薬を開始するという方法がベストではないでしょうか。
子宮の状態を整えてから、治療を再スタートさせるということですね。
福井先生 どの状態で始めたのかが定かではありませんが、おそらく中途半端なタイミングであったために、このような結果になったのでしょう。
卵胞が3週間近く育っていなかったので、このままでは排卵しないと先生が判断し、卵胞刺激を少しだけしたということだと考えられます。
生理から時間が経てば、子宮内膜はある程度は厚くなっていますが、卵胞の発育がないと徐々に不安定になります。
そこにホルモンを入れたために破綻を助長した。
それがこのケースでは一番考えられる原因だと思います。
これは担当の先生が悪いというのではなく、たこさんの今の状態を確かめるという意味もあったでしょうし、卵胞が発育していれば出血もなかったでしょう。
刺激はしたけれど、卵胞が反応しなかっただけで、今回はダメでも、続ければ良くなるのではないかと思います。
そのことが確認できただけでも、行った意味があると思います。

治療法の選択

この薬をチョイスするポイントは?
福井先生 卵巣に直接作用する排卵誘発剤のフォリスチム ® は、リコンビナントFSH製剤といって、ピュアなFSHのみが入っている薬です。
同じ排卵誘発剤のHMG製剤にはLHという成分も入っていますが、卵の発育に必要なのはFSHです。
通常、最初にホルモン値を検査してから、FSH製剤にするかHMG製剤にするかを判断します。
フォリスチム注 50® は量的にも少なく、卵巣が腫れたり、アレルギーなどの副作用も少なく、体に優しいFSH製剤ですから、初めての患者さんには良い選択だと考えられます。
ただし、それだけでは卵胞発育がうまくいかないケースもあって、ある程度LHを含有したHMG製剤を使うほうがよい場合もあります。
ホルモン値を測っておけば、どちらの製剤を使うかを決めるのは簡単ですが、わからない場合は、体に負担が掛からない、量の少ないこの薬の選択は、正しいと思います。
たこさんがホルモン値を計測しているかは 不明ですが、月経 31 日周期で 14 日目には排卵しているはずなのに注射は 16 日目。
その時点で卵胞発育がなかったということがおかしいので、それに対しての手助けとしての注射だったのでしょう。
難しい薬の選択ですが、マイルドな効果で体に負担も少なく、卵胞発育にも期待ができるという意味合いからFSH製剤をチョイスしたのだと考えられます。
結果、卵胞発育はしなかったけれど、ホルモンバランスの変化に拍車をかけてしまい、不正出血に至ってしまった。
今回の場合は、フォリスチム ®の副作用でもなく、たこさんの体に合わないというわけでもありません。
状況によって、うまくいくこともあれば、いかないこともあります。
単純に、うまくいかなかったケースだったとポジティブにとらえ、この結果を基に今後の治療計画を立てたり、自分に合った方法を検討していくきっかけになったと考えていただければいいのではないでしょうか。

情報に惑わされない

同じようなケースで悩んでいる患者さんへ、アドバイスがあればお願いします。
福井先生 不正出血というのは誘発剤の副作用としてはマイナーなトラブルであって、本当に怖いのは多胎妊娠やOHSS、血栓症です。
そのリスクを避けるために、ファーストチョイスは一番マイルドなこの薬だというのも、適正な選択をしていたと言えるのではないでしょうか。
薬が合わないのではなく、タイミングが悪かっただけ。そして、先生がうまく効果が出ない場合は出血の可能性を事前に伝えておけばよかったということです。
たこさんは、インターネットの情報を見て不安が高まってしまったようですが、文字から入ってくる情報は見始めるとキリがないですよね。
薬の名前や効能を知るのは悪いことではありませんが、そこに書いてあることがすべてではありません。
患者さんが副作用ばかりを気にしている状況では、治療どころではなくなってしまいます。
患者さんが置かれている状況や疾患など、その時点の判断があり、個々への状況判断や対処は医師の仕事です。
納得がいかなければ説明を求めることも大切ですが、ある程度は医師に任せていくことが最良の方法ではないでしょうか。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。