フェマーラ ® 周期での採卵。 卵胞の発育が遅い場合、 薬の追加は必要ですか?
ユキチャンコさん(31歳)からの相談 Q. 採卵に向けて初めてフェマーラ®をDay3~Day7の5日間服用。現在、Day17 (←Day14)で、卵胞径は15㎜、11㎜、7㎜で、ホルモンの値はE2 /63(24)、 LH/17.4(12.6)、P4 /0.5(0.4)です。いつもはDay17頃に排卵していたの ですが、次回はDay19に受診となりました。Day21での採卵は遅くないでしょうか。 卵胞の発育があまり遅いと、空胞だったりしないか心配です。HMG注射をしたり、クロ ミッド®を追加しなくても大丈夫? もし薬を追加した場合、危険性などはありますか?
フェマーラってなぁに?
フェマーラ ® とはどんな薬なのですか?
大島先生 フェマーラ ® は本来、乳がんの治療に用いられる薬です。
乳がんは、エストロゲンの影響を受けて大きくなる性質があるのですが、フェマーラ ® はエストロゲンの産生を阻止するので、服用すると腫瘍の勢いを抑えることができます。
不妊治療では排卵を誘発するため に使うのですが、この薬は卵巣自体を刺激することはありません。
フェマーラ ® は商品名で、一般的にはレトロゾール(アロマーゼインヒビター)といわれています。
アロマターゼは男性ホルモン(テストステロン)をエストラジオール(女性ホルモン)に変換する酵素。
このアロマターゼを阻害すると女性ホルモンが生成できなくなります。
生成しないと負のフィードバックの抑制がとれて、脳から卵巣を刺激するホルモンが分泌されます。
フェマーラ ® にはこのような働きがあるため、排卵誘発に利用されているのです。
卵巣を直接刺激せず、薬の半減期 が、5〜 21 日間のクロミッド ® と比べ、 45 時間程度と短いので、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を起こしやすいPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方などに使われることが多いようです。
この方のホルモン値を見ると、LHの値がずっと高いようですね。
おそらくPCOSではないかと考えられるので、フェマーラ ® を使って誘発をされたのだと思います。
卵胞の発育が遅れる??
卵胞の発育が遅いこと、採卵がDay 21 になってしまうことを心配されているようですが。
大島先生 フェマーラ ® はある程度自然周期を誘導しているようなものですから、クロミッド ® などに比べて、卵胞の発育が少し遅れることがあるかもしれません。
Day 17 で卵胞径が 15 ㎜。1日で1・5㎜程度大きくなったとしても、Day 19 では18 ㎜。
やはり採卵はDay 21 になると思いますが、その日で遅すぎるということはないと思います。
注射で誘発した場合でも、Day 24 で採卵したという例もありますから。
注射などを使う理由
HMGの注射やクロミッド ® を追加しなくてもいいのでしょうか。
大島先生 注射やクロミッド ® を追加するのはさらに卵巣への刺激を強くするためです。
ユキチャンコさんの場合、追加があってもいいかと思いますが、すでに 17 日目なので時期的に遅すぎるのでは。
もし薬を追加するなら、7〜8日目くらいから行うのが一般的です。
薬はHMGの注射になると思いますが、PCOSの方の場合は卵巣が腫れないよう、量に気をつけて打っていくことが必要になってくるでしょう。
クロミッド ® +注射よりフェマーラ ® +注射のほうがリスクが低いので、低量でやっていけばそれほど心配されることはないと思います。
今周期はもう遅いのでそのまま採卵されて、次周期から注射を追加する方法にしてみてはいかがでしょうか。
大島 隆史 先生 自治医科大学卒業。1982年、新潟大学医学部産科婦人科学教室入 局。産婦人科医として3年間研修後、県内の地域病院の1人医長として4 年間勤務。1992年、新潟大学医学部において医学博士号を授与される。 新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県立中央病院勤務を経て、1999 年、大島クリニックを開設、院長に就任。日頃から不妊治療に関する最新の 情報を積極的に収集、研究している先生。7月は男性不妊をテーマにした 学会に出席。今後は男性不妊に悩む患者さんも受け入れられるように、準 備を進めている。