子宮内膜はどんな状態がいい?

特集1 胚移植の ギモン&不安

いつ、どのような状態の内膜に移植すればうまく着床するの?

また排卵誘発での採卵後は、移植まで間をあけるべきなのかを はらウィメンズクリニックの原利夫先生に教えていただきました。

原 利夫 先生 1983年、慶應義塾大学大学院医学研究科修了にて医学博士学位を 取得。同大産婦人科助手時代、日本初の凍結受精卵ベビー誕生の一 員として活躍。その後、東京歯科大学市川病院講師、千葉衛生短大非 常勤講師を経て、1993年はらメディカルクリニックを開院。クリニック内 の大きな水槽には、きれいな魚がたくさん。その中に、昨年の晩夏に先生 が伊豆の海で釣った熱帯魚が1匹います。「黒潮に乗ってきた南国の魚 で、死滅回遊魚といって冬を越せない魚がほとんどですが、1年過ぎても 元気に泳いでいるのは嬉しいですね」。

ココがポイント

移植する内膜の厚さ

○自然周期で8㎜以上ホルモン補充周期で10㎜以上なら移植OK。
○プロゲステロンの値も8~10以上は必須

移植の間隔について

○内膜受容体の刺激が残っているので、移植は間隔をあけるより続けたほうが有利

胚盤胞を戻す時期

○インプランテーションウィンドウが開いている排卵日(ホルモン補充の場合は論理上の排卵日)から5日目がベスト
 yukiさん( 42 歳) Q. 顕微授精で、2個凍結し1個戻しました。戻す時の内膜の厚さが 6.5 ㎜でしたが、大丈夫という ことで移植。結果は陰性でした。次の移植も内膜を厚くすることは何もせず、自然周期で戻すということです。

移植は内膜の厚さと プロゲステロンで判断

着床と内膜の厚みの関連は、データで証明されています。
一般的には自然周期の場合で8㎜以上、クロミッド ® を服用したりホルモン補充をした場合は 10 ㎜以上がいいと言われています。
内膜の厚みに加えてもう一つ判断基準になるのが、プロゲステロンの値です。
これは排卵した後に出てくるホルモンで、内膜を厚くする働きがあります。
当院では、内膜に十分な厚みと輝度があり、プロゲステロンの値が8〜 10 以上ならば移植OK、どちらかが基準値以下なら、その周期の移植はキャンセルします。
実際に妊娠した人の値をみると、内膜が 13 ㎜くらい、プロゲステロンは15 以上となっています。
yukiさんは内膜 6.5 ㎜で移植したとのこと。プロゲステロンはわかりませんが、通常でしたら移植はしないと思います。
年齢の高い方の卵を凍結すること は、卵にとってストレスをかけていることになります。
年齢の高い方の卵を1回凍結して戻すとダメになってしまうことがあります。
yukiさんの場合も、とりあえず新鮮胚を戻そうということだったのかもしれません。
凍結してある卵を融解する場合は、より繊細に、丁寧に扱わなければなりません。
さらに受け取る側の子宮の内膜をいい状態にしておく必要があります。
次も自然周期で移植予定のようで すが、一般論からいうと、これでは妊娠しにくいと思います。
yukiさんは 42 歳と年齢が高く、黄体機能が落ちていることが考えられます。
いい内膜を作ってあげるために、黄体補充はしたほうがいいでしょう。
現在日本で出ている黄体機能補充の薬は注射か飲み薬だけですが、これは肝臓を通って分解されてしまうので、あまり効果が高くありません。
海外のもので、直接腟から注入するプロゲステロンの腟坐薬は、内膜を厚くする効果が非常に高いです。
不妊専門クリニックでは、ほとんどがこの輸入の腟坐薬を使っていますので、yukiさんの場合もこれを使って、内膜を厚くしてから移植してあげるといいと思います。
かなぶんさん( 30 歳) Q. 私が通っている病院では、凍結胚は1回の生理のあと、もう1周期あけてから移植となります。卵巣が腫れていなくても、病院の方針だそうです。体は大丈夫なのに、焦ります。

お休み中にタイミング法を 試してみては

卵巣の腫れがなく、腹水も溜まっていなければ、移植は続けて行っても大丈夫です。
妊娠率が下がるということもありません。
逆に移植してダメだった場合は、続けて移植したほうが妊娠しやすいこともあります。
子宮の中に受精卵が入ると、サイトカインという物質が分泌されて、妊娠しやすい状態を作り出します。
たとえば、凍結卵が3個しかない場合、1個戻して2〜3カ月休み、また1個戻してまた休むという方法より、続けて3回戻したほうが妊娠率は高くなります。
しかし、排卵誘発剤を使った採卵の後は、少し間をあけたほうがいいです。
卵巣が腫れていてエストロゲンというホルモンが出過ぎていると、着床しにくいのです。患者さん側は1日でも早くという気持ちがあるので、1カ月お休みするというと、その時間が無駄になる気がしますよね。
採卵の時、卵巣に針を刺すと、排 卵しやすくなります。
排卵障害の人やPCOの人が卵巣に傷をつけて排卵しやすくする方法があるのですが、体外受精での採卵にも似たような効果があります。
採卵後のお休み期間に、自然妊娠するというケースもよくあります。
ですから、お休みの間も1回のチャンスを逃さないために、ぜひタイミングをとってみてください。
菜の花さん( 29 歳) Q. 2日目の時点で2分割の、発育がゆっくりな受精卵を、6日目胚盤胞で凍結してあります。移植するのは6日目胚盤胞でも、5日目に合わせて移植したほうがいいと聞きましたが、本当ですか?

内膜の受け入れは 5日目がベストです

移植の際は、受精卵の発育と内膜の発育、この両方を考えなければなりません。
まず受精卵側ですが、胚は3〜4日目までは同じスピードで分割していきますが、5日目あたりから発育スピードが少し速い胚と遅い胚ができてきます。
生まれる時には3000gの子もいれば2800gの子もいるように、差が出てくるのです。
ですから排卵日がきちんと特定できていれば、6日目の胚盤胞でも問題はありません。
ただ、菜の花さんの場合、2日目 の時点で2分割ということのほうが心配です。
胚盤胞が5日目か6日目かということより、2日目に4分割しているかどうかのほうが、妊娠に影響してきます。
子宮内膜に関していえば、インプランテーションウィンドウといって、本当に短い期間しか着床するための窓があいていません。
6日目だと窓が閉じてしまい、着床しなくなってしまうことがあります。
ですから、6日目に凍結した胚でも5日目に戻したほうが妊娠しやすいといわれています。
菜の花さんの病院は、胚に合 わせた日数で移植しようということだと思います。
子宮内膜側と胚の発育をシンクロさせることが大切です。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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