採卵数は多いのにいい結果が出ません。刺激や移植法を変えるべき?

堀川 隆 先生 琉球大学医学部卒業。国立国際医療センター、国立成育医療センター不 妊診療科勤務を経て、2009年12月より高崎ARTクリニック院長に就任。 国際医療センター勤務時より内視鏡手術・生殖補助医療に従事。成育医 療センターでは難治性不妊治療・加齢と不妊についての研究に取り組む。 B型・みずがめ座。今春、末っ子のお嬢さんが通う保育園の卒園式に出席。 1つ上の卒園生の姿を見て涙がボロボロ。来年のお嬢さんの卒園時はもち ろん、何年後かの結婚式には号泣間違いなさそうです!?
はなももさん(42歳)からの相談 Q.1年前に体外受精にステップアップし、クロミッド®、HMG、セトロタイド®で卵巣刺激を して13個採卵できました。顕微授精で5個(すべて受精)、体外受精で8個(5個受精) トライ。OHSSの可能性から全胚凍結となり、胚盤胞7個と初期胚2個を凍結しました。 自然周期1回、ホルモン補充周期で3回胚盤胞を移植しましたが、すべて陰性。AMH 1.37ng/mLという値のわりにはたくさん採卵ができていますが、良い結果につながっ ていません。卵巣刺激は自然がいいのか、それとも強めに刺激をしたほうがいいのか悩 んでいます。また、私のケースのような場合、二段階胚移植やシート法は有効でしょうか。

年齢による影響

40歳の時に採卵されて、1回で 13個も卵子が得られたのは悪くはないように思えますが……。
堀川先生 今年測られたAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が1.37 ng / mL だったということ。
この 検査は卵巣の予備能をみるためのもので、残りの卵胞の数を知る目安になるといわれています。
40 歳以上でこの数値は年齢相応で、この値からみると残っている卵胞数は少ないと予想されますが、刺激にうまく反応すれば、はなももさんのように多く採れることもあります。
卵巣刺激はアンタゴニスト法を選 択されたようですね。
13 個卵子が採れて、そのうち 10 個が受精、受精卵のうち半分以上が胚盤胞になっているというのは確かに悪くないと思います。
戻す時期も自然周期、ホルモン補充周期と2種類の方法をとられて胚盤胞を3回移植したのに、3回とも結果が出なかったのですね。
「良い条件で移植したのになぜ?」と思われるお気持ちはわかります。
どこに問題があったのか明確な原因はわかりませんが、やはり 40 歳という年齢的な要素は無視できないのではないかと思います。
たとえ胚盤胞になったとしても、いわゆる卵子の老化からくる染色体異常などの質的な問題があったのかもしれません。

アシストハッチング

何かプラスできる治療法はありますか?
堀川先生 もし、まだされていないようでしたら、アシストハッチングを試されてみたらどうでしょうか。
年齢が高くなると、透明帯(胚の殻)が硬くなったり厚くなる傾向があります。
そうなると胚が透明帯を破るのに時間がかかり、子宮内膜に侵入するタイミングが遅くなって着床までいかないことも。
胚盤胞を移植する直前に透明帯に小さな孔を開け、胚が破れやすい状態にしてあげるのがアシストハッチング。
着床がスムーズに進み、妊娠率が良くなることがあります。

刺激法も移植法も選択できる

次に採卵をする場合、卵巣刺激法は変えたほうがいいのでしょうか。
堀川先生 今回行ったアンタゴニスト法は、はなももさんにとって悪くない刺激法だと思うので、もう一度トライされてみてもいいのでは。
それで結果が出なかったら、自然周期も選択肢の1つになるかと思います。
毎月卵を採っていく自然周期なら、数は少ないかもしれませんが、毎月毎月がチャンスになります。
卵巣刺激法を変えると、育ってくる卵の質が変わる可能性もあるので、そこに期待されてもいいかもしれません。
 二段階胚移植やシ ート法とは、い きなり胚盤胞で戻すより、何らかのもの(初期胚や培養液)を最初に入れておいたほうが、胚盤胞が来るまでに子宮内膜の着床環境が良くなるというコンセプトのもとに考えられた移植法です。
まだ仮説段階の考え方ですが、実績を重ねている施設もあると思うので、もしご興味があれば試されてみる価値はあると思います。
※シート法:受精卵を培養した時の培養液を胚移植の2~3日前に子宮内に注入すること。この培養液中には受精卵の成長過程で分泌される物質が多く含まれているので、母胎側はいろいろ な情報を得て、着床の準備を促進できる。
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