通院もサプリメントも嫌いな夫どうすれば治療に協力的になってくれる?【医師監修】

男性不妊の場合は夫の治療への参加が不可欠になりますが、 協力してもらえない時はどうしたらいいのでしょうか。 ファティリティクリニック東京の小田原先生にお話を伺いました。

【医師監修】小田原 靖 先生 東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。 1987年、オーストラリア・ロイヤルウイメンズ ホスピタルに留学し、チーム医療などを学ぶ。 東京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病 院科長を経て、1996 年恵比寿に開院。AB 型・ みずがめ座。多忙が続き、毎日、昼食が食べら れるかどうかというほどだそう。そのせいか、す っきりスリムな印象に。しかし忙しいなかでも筋 トレを続け、アミノ酸も飲んで筋肉はしっかり維 持。ドクターも体が資本ですね。

ドクターアドバイス

◎ サプリメントの強要は逆効果になることも
◎ 病院へ行きやすい方法を選んであげて
◎ ライフプランについてと話し合うことも大切
miraさん(27歳) Q.人工授精に挑戦しましたが、その際の精液には ほとんど活動している精子がおらず、精子全体 の数も10万個 /mLほどでした。体外受精顕微授精ができる病院に転院して治療を再開しよ うと思い、旦那にも受診を促すと、まさかの拒否。 説得して出た答えが「頑張るから2カ月待て」。 なぜ2カ月? 何を頑張るの? 仕方なく通院を断念。アルギニンやマカなど、 サプリメントだけでも摂らせようと用意しても、自 主的には飲もうとしません。夫のことは好きなの に、治療にまったく協力してくれず腹が立ちます。

 miraさんの投稿に寄せられたコメント

たまおブルー(会社員・33歳) : 男の人はデリケートだし、精子が少ないという ことは本当にショックだと思います。「2カ月 待って」というのは、気持ちの整理をしたいの では? 焦る気持ちはよくわかりますが、1人 で突っ走らずに、旦那さんがなぜ通院やサプリ が嫌なのかしっかり話し合い、「2人で頑張り たい!」という気持ちを伝えることが一番だと 思います。つい言いたくなるかもしれませんが、 「私はこんなに頑張っているのに」は絶対禁物 ですよ。
まる(主婦・36歳) : 不妊治療って、夫婦の足並みがそろわないと大 変ですよね。実際は女性のほうが、検査・治療 とも高度になればなるほど痛いし大変なのに。 でも、男性のほうがナイーブなんでしょうね。 体外受精に進まれるとのこと。ぶっちゃけた話 をしますと、サプリはあまり意味ないです。そ れほど効果は期待できないかも。無理に飲むこ とがストレスになっているのなら、やめちゃっ ていいと思います。

現実を理解すること

「頑張るから2カ月待ってほしい」と言われたとのことです。この言葉には、どのような心理が隠されているのでしょうか。
小田原先生 精子が少ないということは、男性としての自尊心を非常に傷つけてしまう部分があるので、ご主人はその現実をなかなか受け入れられないのだと思います。
嫌なことには目をつぶっていたいし、認めたくない。
「2カ月待って」とおっしゃっているのは、もしかしたら、しばらくして体調がよくなれば、精子の状態も正常に戻ると思っていらっしゃるのかもしれません。
また不妊治療は、たとえ男性側に不妊の原因があっても、女性のほうが負担が大きくなるというのが特色ですから、ご主人は奥様を気遣って、「そこまでやらなくても……」と躊躇するお気持ちもあるのでは。
しかし、もしお子さんを望まれているのなら、現実をしっかり認識しなければいけないと思います。
ヒューナーテストを2回行って、2回とも結果が悪く、精子全体の数も活動している精子の数も極端に少ないというのは、かなりシビアな状況です。
やはり、高度不妊治療に進むことが必要になってくると思います。

誤った認識は怖い

miraさんは、通院が嫌なら、せめてサプリメントを摂ってもらおうと努力されているようですが。
小田原先生 サプリメントやビタミン剤、スポーツドリンクだけで顕著な回復を期待するのは、ご主人の状態を考えると少し難しいのではないかと思います。
いろいろ試してみるのは悪いことではありませんが、治療の道筋を考えると、それが回復に直結する状況ではないと思います。
もしかしたらmiraさんは、そういうところからご主人に不妊治療に興味を持ってもらおうと、入り口の意味でサプリメントをすすめているのでしょうか。
苦肉の策かもしれませんが、そのような方法をとることによって、逆にご主人は「サプリメント程度で何とかなるんじゃないか」という誤った認識を持ってしまう可能性もあります。

医師の言葉や、セミナーの活用

では、どうすれば治療に協力してくれるようになるでしょうか。
小田原先生 毎日毎日、奥様から同じようなことを言われ続けたら、ますます嫌になってしまうかもしれません。
サプリメントを何とか飲ませようとするのも、かえってプレッシャーになりかねません。
少しずつ、じわじわというより、これはもうストレートな方法をとったほうがいいのではないでしょうか。
とにかく一度、担当の先生から客観的に現状を話してもらうことが一番だと思いますね。
きちんと話を聞いたほうが不安は解消すると思います。
どんな病気でも、その正体と対処法が明確にわかれば安心しますよね。
どういう状況ならご主人が病院へ行きやすいのか、それは人によって違うかもしれません。
奥様と一緒は嫌ということでしたら、ご主人一人で聞きに行くこともできると思います。
女性と比べると男性は非常に臆病ですから、実際、検査の結果をご主人お一人で聞きに来られるというケースも少なくありません。
また、最初から検査や診察では構えてしまうという場合は、不妊症や体外受精の説明会に参加してみることから始められてもいいでしょう。
説明会はご夫婦で参加されている方も多いので、それを見てご主人は「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」とハードルが少し低くなるのではないかと思います。
ご主人を説得するのが難しい場合は、まずはmiraさんが一人で病院へ行って、看護師やカウンセラーに相談して、知恵を借りるというのも1つの方法だと思います。
病院へ行くのは、なるべく早いほうがいいのですか?
小田原先生 乏精子症など男性因子の不妊症も、そのままにしておくと、どんどん状態が悪くなる場合があります。
1年後、2年後には精子がまったくいなくなっていた、という例もゼロではありません。
そういったケースを考えると、時間が無限にあるとはいえないでしょう。
もちろん、女性の妊娠しやすさも年齢に関わってきます。
miraさんは現在 27 歳とお若いので、ご主人としてはまだまだ、あと5年、 10 年経ってからでも間に合うのではないか、というふうに思っていらっしゃるのかもしれません。
しかしやはり、卵子も時間とともに老化していきます。
治療を今すぐに始めなくても、そのような正しい知識を得るために、今のお二人の体の状態を正確に把握するために、早めに専門医の受診をしていただきたいと思いますね。
そのうえで、ご夫婦でもひざをつき合わせてよく話し合うことが必要だと思います。
ご主人はお子さんをつくることにどこまで積極的なのか、今すぐでなければ、いつ頃から真剣に治療に取り組んでくれるのか。
ご主人がmiraさんと同世代の年齢なら、もしかしたらほかにやりたいことがあるのかもしれません。
まだスポーツや趣味、仕事などに集中したくて、本心では「子づくりはもうちょっと先に」と思っているのかもしれませんよね。
治療についてだけではなく、そのあたりの本質的なこと、ご夫婦のライフプランについても、普段からきちんとお互いの考えを確認し合っていらっしゃいますか?
もしできていないようなら、これを機会によく話し合って、ずれている部分があったら本格的に治療に臨む前に修整
を。
不妊治療はご夫婦の心がしっかり結びついていないとスムーズにできないものです。
「二人で一つの気持ち」ということを基本として、考えていっていただきたいですね。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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