今まで順調だったのに突然、排卵しなくなりました。諦めないとダメでしょうか……。

40代になって大きく乱れ始めた排卵……。 赤ちゃんを望むのはもう難しいのでしょうか。 あいウイメンズクリニックの伊藤先生に伺いました。

伊藤 哲 先生 順天堂大学医学部、同大学院修了。 順天堂大学医学部産婦人科学講師、 国際親善総合病院産婦人科医長を経 て、1999 年あいウイメンズクリニック 開院。日本生殖医学会生殖医療専門 医。O 型・おひつじ座。同クリニック にてタイミング療法で妊娠した人の最 高年齢は 46 歳。しかし、40 歳以上 は妊娠率が大きく下がることは事実。 「半年でも1年でも早く来院してほしい」 というのが先生の願い。

ドクターアドバイス

◎ FSH値10以上は閉経への黄信号
◎ 排卵誘発剤の量や種類を変えてみる
◎ 心のケアで前向きな気持ちをキープ
ビートルさん(41歳)Q.これまで毎月ほぼ同じ周期で生理がきていて、基礎体温 も低温期・高温期と分かれていました。ところが今年に入っ てから突然、排卵しなくなりました。注射をして強制的に 生理を起こし、クロミッドⓇを服用して人工授精に臨む予 定でしたが、排卵の兆候がありません。閉経になる兆し? もう諦めないとダメなのかなと弱気になっています。気持 ちの切り替え方などのアドバイスが欲しいです。

ビートルさん のデータ~今までの治療

今年初めての生理を強制的に起こした後、生 理3日目に病院に行き、生理5日目からク ロミッドⓇを服用。
去年、人工授精時に初め てクロミッドⓇを服用。
この時は1日1回の 服用で14日目に排卵しそうか確認し、翌日 人工授精。妊娠には至らなかったが、体温は 低温期・高温期と分かれ、排卵もあった。
今回も排卵できるだろうと思ったが、生理翌日から今日までずっと高温期になったかと思 えば、翌日は低温期、また翌日は高温期…… というように大きくガタガタに。
AMH値は「年齢相応だけど、たくさんの卵 子は採れないと思う」と言われている。
ストレスとはまったく関係ない生活を送って いるし、何かが大きく変わるようなことがあ ったわけでもなく、本当に突然、排卵しなく なった。

ストレスでも排卵は乱れる?

ビートルさんは昨年からクロミッドⓇを服用して人工授精に臨んでいるそうですが、今回の治療では薬で生理を起こしたにもかかわらず、低温期と高温期がきちんと分かれず、排卵の兆候もないそうです。これはやはり 41 歳という年齢によるものなのでしょうか。
伊藤先生 必ずしも年齢のせいだとは言い切れないと思います。
今回排卵しなかったのは、年齢以外の要素が影響していた可能性も考えられます。
1周期で決めてしまうのは早いと思います。
年齢以外の要素というのは、どんなことが考えられますか。
伊藤先生 たとえばストレスなども排卵の乱れに影響する場合があります。
ビートルさんは「普段はストレスとはまったく関係のない生活を送っています」と書かれていますが、人間関係などとはまた別に、治療を続けていくうちに無意識に自分にストレスをかけてしまっていることも。
それは特に年齢の高い方に多く見られるようです。
当院でも 40 歳前後の方だと、1回悪い結果が出ると「もうダメなのでしょうか」と落ち込まれるケースが多いです。
ビートルさんも「もう年齢的に赤ちゃんを望むのは無理だと体が言っているのかな、閉経になる兆しなのかな、などマイナスのことしか考えられません」と投稿に書かれています。
こういった見えないストレスで、コンディションが悪くなっていることもあると思うんですね。

加齢で生理周期が乱れる?

ビートルさんのストレスの元となっている「もう閉経?」という不安、これについては心配しなくていいのでしょうか。
伊藤先生 ビートルさんの年齢で、このまま生理がピタッと止まってしまうということは考えにくいですね。
確かに 40 歳前後になると排卵の周期に変化が起こってくることがあります。
通常は、 28 日周期でだいたい 13 〜 14 日目で排卵していたのが8〜 10 日目くらいになるなど、早くなってしまう人が多い。
なかには生理が終わってすぐに排卵してしまうという人もいます。
いきなり生理がこなくなるというより、そのような形をとって更年期に向かっていくことが多いようです。

予備能とAMH,FSH

MH(抗ミュラー管ホルモン)の検査結果では医師から「年齢相応だけど、たくさんの卵子は採れないと思う」と言われたそうです。閉経かどうか、妊娠が可能かどうかを診断する場合、どんな検査が参考になりますか?
伊藤先生 最も大きな目安となるのはFSH(卵胞刺激ホルモン)の値ではないでしょうか。
FSH値は 30以上になると閉経という診断基準があります。
12 〜 13 くらいでもきちんと排卵している人もいますが、やはり 10 以上になると黄信号です。
これは、そろそろ更年期の始まりというサインですから、妊娠が可能であっても治療を急いだほうがいい状態であるといえます。
また、ビートルさんが受けたAMH検査も参考になります。
これは卵巣の予備能を調べるものですが、 41歳だと 1.0ng / mL くらいではないでしょうか。
卵子はまだ採れる状態だと思いますが、担当の先生がおっしゃるように、たくさん採れる可能性は確かに少ないかもしれません。

状況に応じた治療選択を

閉経になるのでは、ということですが、治療はとにかく急いだほうがいいようですね。今後、ビートルさんはどのような治療をしていけばいいでしょうか。
伊藤先生 現在、クロミッドⓇを服用されているということですが、もう1周期、同じ量を服用して様子をみてみては。
それで同じ結果であれば、薬の量を増やしてみる。
もしくはFSHなどの注射で排卵誘発をしてみるという方法もあります。
今は人工授精にトライしていらっしゃるということですが、体外受精へのステップアップも考えられたほうがいい時期でしょう。
治療以外としては、当院では卵巣や子宮の血流をよくするためにDHEAなどのサプリメントを処方することもあります。
それから冒頭でお話ししたように、不妊治療においてストレスは大敵です。
年齢が高くなって焦る気持ちはわかりますが、あまり思い詰めないように。1回の結果ですべてが決まってしまうわけではないし、人間の体はそんなに単純なものではありません。
「もうダメかも」とマイナスな気持ちでいっぱいのようなら、カウンセリングなどで誰かに話を聞いてもらう機会をつくってみたらいかがでしょうか。
当院でも、メンタル面のケアをすることで気持ちの切り換えができ、結果的に治療にもよい影響をもたらしたケースがたくさんあります。
ビートルさんの場合はまだ治療初期の段階。
まだまだ方法は残されています。
前向きな気持ちでトライしていけば、きっと妊娠のチャンスがめぐってくると思いますよ。
※AMH(抗ミュラー管ホルモン):発育卵胞、前胞状卵胞から分泌されるホルモン。血液中のAMHの検査値から卵巣の予備能を知ることができる。ミュラー管抑制因子ともいう。
※DHEA:デヒドロエピアンドロステロンの略で、副腎や性腺から分泌される。加齢とともに減少するホルモンで、一定年齢以上を対象に、卵巣機能の改善を目的としてサプリメントが投与される。
>全記事がドクター編集!

全記事がドクター編集!

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。