抗セントロメア抗体が陽性で受精率が悪い

抗セントロメア抗体が陽性。採卵数が少なく良い胚が育ちません

英ウィメンズクリニック 苔口 昭次 先生 1984 年、宮崎医科大学卒業とともに岡山大学医学部産婦人科学教室に入局。1992 年医学博士( 岡山大学)。高知県立中央病院産婦人科勤務を経て、神戸掖済会病院産婦人科部長に。2004 年より英ウィメンズクリニック勤務、2013年同院長に就任。
相談者 : キミさん(42歳)何度も採卵を繰り返してきましたが、最近では採卵数が6 個と年齢が高くなるにつれ少なくなってきました。抗セントロメア抗体も陽性で、受精率も良くありません。良い卵子が採れるまで採卵を繰り返すしか方法はないのですか? 治療に期待がもてず、何か効果がある方法はないのか教えてほしいです。同じような方で妊娠できた治療事例などを知りたいです。

抗セントロメア抗体について教えてください。

苔口先生●自身の体の細胞を攻撃する自己免疫疾患の一つです。染色体のセントロメアとよばれる部分に抗体が付着し、受精卵の細胞分裂を妨げるとされています。
 通常、体外受精した翌日の受精卵の中に男性と女性の2つの前核(2PN)が見えますが、なかには3〜5つに分裂することがあります。この異常分裂した前核は、健康な方の受精卵にも10%程度見られますが、80%を超えると抗セントロメア抗体の陽性が疑われ、抗核抗体検査の対象になります。
 多くは不妊治療で見つかり、海外の文献では、体外受精の方の0.2〜2.4%に認められるという報告もあります。
 また、抗セントロメア抗体は膠原病の方にも認められます。おもに強皮症とよばれる内科的な症状(手が腫れる、食道機能や末梢血管の循環の低下など)を伴うことがあります。症状がなければ、内科的治療の必要はありません。

こういう方の治療事例はありますか。

苔口先生●当院では、抗セントロメア抗体陽性が認められた13名のうち6名の方が妊娠されています。特に年齢が若く、1〜2回の体外受精で成功されている傾向があります。
 そのなかには、ステロイド治療をした方と、治療していない方も含まれます。抗セントロメア抗体のある方は、抗体を抑制するステロイドの服用が有効とされています。しかし、確立した治療法ではないため、その方の状態によって治療の判断をしています。

今後どんな治療が考えられますか?

苔口先生●一般的に卵子が16〜20個採れる方であれば、5〜6個は良い卵子である可能性は高いです。一方、抗セントロメア抗体のある方は、受精率や受精卵の発育率、胚盤胞の到達率が極めて低くなります。先ほどの6名の方も、1〜2個の良い卵子で妊娠されています。そのなかには初期胚を移植されて成功された方もいます。キミさんは初期胚移植を試されるのも一つの手です。
 また、当院の治療事例ではありませんが、ある報告では、採卵の2〜3カ月前から免疫を抑制するステロイドとタクロリムスを内服すると、卵子に良い影響を与える可能性も示唆されています。
 あとは良好な卵子が育つことを待つしかありません。たとえば、採卵した6個のなかに良い卵子が1つでもあれば、妊娠の可能性は十分あると思います。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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