顕微授精で反復不成功。今後どうしたらいいかわかりません

採卵と移植の回数を重ねてもなかなか結果が出ない。 このような場合、どんなふうに治療方針を立てていくのか、 木場公園クリニックの吉田先生にお話を伺いました。

吉田 淳 先生 愛媛大学医学部卒業。産婦人科・泌尿器科医。生殖医療指 導医・臨床遺伝専門医。東京警察病院産婦人科、池下レデ ィースチャイルドクリニック、東邦大学第一泌尿器科非常勤 講師などを経て、1999年木場公園クリニックを開院。不妊 症治療の情報収集のため、アメリカや日本国内の不妊症専 門施設の見学・研修を数多く積んでいる。「50 代は医師や 看護師、培養士などを“教育”していくことが大きなテーマ」 と語る。診療はもちろん、後進の育成にも熱い思いを抱く。

ドクターアドバイス

卵巣の機能は悪くありません。 アンタゴニスト法や新鮮胚移植など 治療の選択肢はまだあると思います。

むくけんさん(39歳)Q.卵管閉塞と男性不妊のために2年前から顕微授精をしています。これまで採卵3 回、移植5 回していますが、妊娠できません。転院を一度していますが、転院後、ますます受精卵のグレー ドが悪くなっています。年齢的なことを考えて刺激が怖くなり、完全自然周期も試したいと思っ ていますが、考えれば考えるほど迷うばかり……。 また、採卵前にカウフマンとピルのみ服用を試していますが、ピルのみ服用を試した時には Day3のホルモン値がすごく下がり、クロミッド®を朝晩服用しましたが、卵子が育つのが遅 れました。卵巣刺激法や移植法など、今後どのような治療方針を立てていったらいいでしょうか?

むくけんさん のデータ

■検査・治療歴

1回目はショート法で14個採卵(11個受精、胚盤胞 2個、初期胚7個)。
カウフマン療法後、HRT凍結胚 盤胞移植、自然周期で凍結初期胚移植、HRT凍結胚移 植と、3回移植するも妊娠できなかった。
2回目は転院して、前周期Day14からピルを10日間 1日2錠服用後、自然周期で採卵(11個受精、胚盤 胞1個、初期胚1個)。
HRT2段階凍結初期胚で移植 するが陰性という結果に。
3回目はロング法で16個採卵(うち未成熟8 個、6 個受精、初期胚 1 個、胚盤胞 1 個)。
再度HRT2段階凍結初期胚移植に挑戦したが、 化学流産をしてしまった。

■現在のホルモン初期値

AMH:19.9 LH:2.54、FSH:3.07 PRL:13.49、

薬の量やタイミングに工夫

これまでのむくけんさんの治療経緯をごらんになって、何か問題をお感じになった点はありますか。
吉田先生 まず、この方の卵巣機能に関してですが、 39 歳という年齢から考えるとよい状態なのではないかと思います。
AMHの値が 19 ・9で、他のホルモンの初期値も問題がない。
1回目はショート法で採卵して14 個採れたということですから、卵巣の機能は決して悪くはないのではないでしょうか。
3回目はロング法にトライされていますが、担当の先生も卵巣の機能が思っていたよりもよかったので、強い刺激を選択されてみたのではないかと思います。
その選択ももちろんあると思いますが、僕が1つ疑問を感じたのは、ロング法でのピルの服用方法。
この時、前周期のDay 14 からピルを 10日間1日1錠服用し、Day 21 から ブセレキュアⓇを使われたとのこと。
なぜピルをDay 14 から服用したのでしょうか。
ロング法は高温相の途中から始めるというのが一般的な方法だと思うのですが、そうすると一時的にFSHとLHの値が上昇して、卵巣が腫れることがあるんですね。
ピルを使うのはそれを防ぐ目的があると思うのですが、Day 14 からの服用だとその目的が達成されないのではないでしょうか。
この方の生理周期は 25~ 28 日ということですから、 14 日目だと排卵が起きるか、すでに起きてしまった頃の時期です。
卵巣の機能を抑えるためであれば、もっと早い時期からピルを使ったほうがいいのではないかと思います。
当院でしたら、3日目や5日目からピルを使って、ピル終了日の2~3日前からブセレキュアⓇを使う、もしくは高温相の真ん中からピルを2週間くらい服用して、ピル終了日の2~3日前からスプレキュアⓇを使う方法をとると思います。

治療の選択肢は多数ある

今後の治療方針ですが、むくけんさんはこれまでショート法、ロング法のほか、クロミッドⓇなども試されてきましたが、卵巣刺激についてほかに方法はありますか。
吉田先生 これまでの経緯から考えれば、当院では、次はアンタゴニスト法をご提案すると思います。
僕は必ずしも「年齢が高いから低刺激がいい」とは思っていません。
この方の卵巣の状態だったら、一度高刺激でチャレンジされてもいいのではないかと思いますね。
アンタゴニスト法で行う場合は、卵巣の機能をみて、前の周期にピルを使うか、エストラジオールを使うか決めます。
これらを服用するのは、卵巣刺激をする直前の卵胞の大きさを揃えようというのが目的。
何もしなくても卵胞の大きさが揃っている人もいますが、なかには揃っていない人もいます。
大きさが違うと、そこから誘発を始めると大きい卵胞がどんどん大きくなってしまい、他の卵胞がちゃんと育たないということがあるんですね。
ですから、ピルやエストラジオールなどの薬で卵巣に抑制をかける必要があるわけです。
それでも結果が出なければ、低刺激の方法にしてみたり、あるいはむくけんさんも考えていらっしゃるように、薬は一切使わず、まったくの自然周期で採卵してみる。
薬を使う場合もクロミッドⓇを使って結果が出なければ、セキソビットⓇを使ってみるなど、まだまだ治療の組み合わせや選択肢はいろいろあると思います。

移植方法のバリエーション

胚の戻し方などについてはいかがでしょうか。
吉田先生 これまで凍結融解胚移植の方法をとられてきましたが、結果が出ていないようなので、当院なら次回は第一選択で、新鮮胚で戻してみることをおすすめすると思います。
戻す周期もホルモン補充周期が多かったようですが、やはりいい結果につながっていないので、今度は自分の排卵の周期を生かしながら戻していくのがいいと思います。
また、凍結融解胚移植の場合も、いい状態の胚盤胞が入っていた培養液を凍結できれば、移植の3日くらい前にこの培養液を子宮に注入します。
それにより受精卵の成分が子宮に作用して、着床を促すと考えられているSEET(シート)法をとるという選択肢もあります。
加齢とともに受精卵のグレードが低くなっていくのはどうしても避けられないことなので、それは受け入れながらやっていくしかないと思いますが、卵巣機能はいいので、まだまだチャンスはあると思いますよ。
※ロング法、ショート法、アンタゴニスト法:いずれも体外受精を目的に卵巣から採卵するため、ホルモン剤を多めに使って排卵を誘発する方法。GnRHアナログという点鼻薬の投与時期の違いによって、ロン グ法とショート法に分かれ、点鼻薬を使用せず、GnRHアンタゴニストを皮下注射する場合をアンタゴニスト法という。AMH値やFSH値、目的によって選択する。
※ブセレキュア®、スプレキュア®:卵胞ホ ルモンの分泌を抑える目的のGnRHアゴニスト製剤。点鼻薬。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。