採卵しても空胞ばかり……そういう体質なのではと不安に思っています【医師監修】

【医師監修】蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院産婦人 科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990 年オーストラリ ア・PIVETメディカルセンターへ留学。帰国後、1995 年蔵本ウイメンズク リニック開院。O 型・おうし座。院内では、一般の方に向けての不妊説明会、 ART(高度生殖医療)説明会のほか、臨床心理士によるメンタルカウンセリ ング、楽々気功(気功教室)など、さまざまな取り組みを行っている。
こでまりさん(34歳)からの投稿 Q.不妊治療歴5年。これまでに約20回人工授精に挑戦しましたが、授かりませんでした。 体外受精を避けていたのは、できるだけ自然に授かりたいと考えていたからです。しかし夫 婦で話し合い、不妊の原因を探るためにも一度、体外受精を行ってみようとクリニックを訪ね、 3回採卵を行いました。すると、すべて空胞という結果が。私はこれまで、生理も順調、健 康にも自信があっただけにショックでした。先生には「年齢もまだ若いし、ホルモン値もしっ かりしているので、次回は自然周期でやってみましょう」と言っていただき、もう一度チャレ ンジしようと思っていますが、また空胞だったらと思うと不安でいっぱいです……。

内膜症の手術と卵胞

1回目の採卵は初診日に。2回目はソフィアAⓇを服用して、前日にスプレキュアⓇを投与しての採卵。3回目は周期を1カ月ずらし、2回目と同じように薬を服用してホルモン値が上がった状態での採卵だったそうです。
蔵本先生 文面から読み取ると、これまでは弱い刺激を起こすクロミフェン(クロミッドⓇ、セロフェンⓇ)の内服で少数の卵胞を育て、スプレキュアⓇで排卵させるホルモンLHを分泌させようという、マイルドな刺激の治療を行ってきたようですね。
けれど、採卵すると空胞だった。
こでまりさんからは「 33 歳の時の子宮内膜症手術が空胞の原因でしょうか?」ともありますが。
蔵本先生 確かにチョコレート嚢腫などが大きいと、卵子の数が減ったりする場合もありますが……内膜症の状態にもよるので、ここでお答えするのは難しいですね。

採卵数を増やしてみよう!

今後はどのように治療を進めていけばよいのでしょうか。
蔵本先生 これまでは、スプレキュアⓇを使用し、ホルモン分泌の中枢である下垂体を刺激。
排卵させるLHサージを起こさせて採卵、という流れで治療を進められたようですね。
しかし、なかには下垂体の反応が不十分で、LHサージが引き起こされず、卵子が採れないという方もいらっしゃるのです。
そこで、まずしっかりと卵巣を刺激して7個程度の卵胞を育て、それが 18 ㎜程度に育ったところで、直接、成熟卵胞に働きかけるHCG製剤の注射をして(指導を受ければ自己注射が可能)、卵子の最終成熟度をはかり、採卵を試みることをおすすめします。
こでまりさんは「自分は空胞の体質ではないか」と心配されていますが、そこは考えにくいですね。
まだ34 歳ですし、卵子を複数つくれば、採卵できる確率は格段に上がると思います。
ただ、これまで「できるだけ自然な形で」と、人工授精やマイルドな刺激での治療を進めていらっしゃったようですが、本当に妊娠を望むのであれば、今のうちにきちんと効果が上がるような方法をとったほうがいいと思います。
少し刺激を強めたからといって、卵巣がダメージを受けることはありませんので、心配はいりませんよ。
また、前周期にピルを服用されて結果が出なかった、ということであれば、今回は何も投与しなくてもいいでしょう。
次回はきっと、採卵できると思いますよ。
※空胞:卵胞内に卵子を認められない状態。
※セロフェンⓇ:排卵誘発薬。一般名はクロミフェンクエン酸塩。
※スプレキュアⓇ:卵胞ホルモンの分泌を抑える目的のGnRHアゴ ニスト製剤。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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