受精卵の凍結や ホルモン補充など 状況に応じた移植で タイミングを図ります。
着床するタイミング
移植のタイミングについて、先生のお考えを教えてください。
藤野先生 子宮内膜には、最も着床に適した時期というものがあります。
これを「インプランテーションウインドウ」と呼んでいて、その時期を逃すとなかなか着床しないといわれています。
それはもうピンポイントでしかなくて、その時だけ内膜の〝窓〞が開き、受精卵がその中へ入っていくというイメージです。
自然な排卵で 28 日周期の方の場合、 19 〜 20 日目くらいの時が着床に適した子宮内膜の状態といわれます。
やはり排卵誘発を行った場合はそこに何時間かのズレが生じますが、それは採卵する時にどういう方法をとったかが大きく関係します。
着床に適した時期に受精卵を子宮の中へ戻したとしても、受精卵は卵管の中を行ったり来たりしているという説もありますので、その時にちょうど窓が開いていないと着床できないから、そこが難しい。
分割胚か?胚盤胞か?
受精卵は分割胚か、それとも胚盤胞がいいのか、移植の時期についてはいかがでしょうか。
藤野先生 患者さんの持っている不妊要因にもよります。
たとえば卵管に問題がある方の場合。特にクラミジアの抗体価が高いとか、卵管の狭窄があるとか、子宮外妊娠の既往症がある方などは、やはり体外受精では自然妊娠よりも子宮外妊娠のリスクが少し高くなりますので、最初から胚盤胞移植をおすすめします。
当院で分割胚を移植するのは、たとえば第2子を希望されていて、出産歴のあるような患者さん。
子宮や卵巣のコンディションもいい場合が多いので、受精3日目くらいの新鮮胚を移植します。
当院ではマイルドな卵巣刺激を行う場合が多いので、卵巣過剰刺激症候群になる患者さんはそういらっしゃいませんが、採卵時の状況で卵子が 10 個以上採れた時は全胚凍結です。
逆にクロミフェンを使うと内膜が薄くなることがあるので、たとえ1個しか採卵できない状況でも凍結という形をとりますね。
胚移植の周期を決める
凍結胚を移植するタイミングについてはいかがですか。
藤野先生 自然周期で戻すメリットと、ホルモン補充周期で戻すメリットがそれぞれにあると思います。
自然周期は薬が少なくて済む代わりに、移植の時期設定が難しい。
黄体機能不全の場合、戻す時のコンディションも悪いでしょうし。
逆にホルモン補充法で戻すメリットは、移植の日にちが決めやすいということ。
「インプランテーションウインドウ」が自然周期だと2日のところが、ホルモン補充周期だと1日長くなって3日くらいになるので、働いている方の場合、スケジュール調整がしやすいですね。
また、排卵障害や月経周期が不順で排卵がいつなのかわかりにくい方もホルモン補充周期がよいと思います。
※抗体価:クラミジア感染などのウイルス感染をすると、体内に抗体ができる。体内の抗体の有無や値で感染しているかがわかる。
※子宮外妊娠:異所性妊娠ともいう。
※クロミフェン:排卵誘発薬の一つで、副作用に卵巣過剰刺激による卵巣の腫大がある。多嚢胞性卵巣症候群には無効の場合が多い。