妊娠率を上げるために胚盤胞で凍結させた胚の移植を基本に考えています【医師監修】

【医師監修】小田原 靖 先生 東京慈恵会医科大学卒業、同大学 院修了。1987年、オーストラリア・ ロイヤルウイメンズホスピタルに留学 し、チーム医療などを学ぶ。東京慈 恵会医科大学産婦人科助手、スズキ 病院科長を経て、1996年恵比寿に 開院。AB型・みずがめ座。今年の 夏休みは1週間しっかり休養し、ハ ワイでサーフィンを楽しんできたとい う先生。日本はこれからがいいシー ズンだそう。「気力十分で、しっかり 診療していきたい」と語る。

分割胚と胚盤胞

分割胚と胚盤胞、どちらの移植が多いですか?

小田原先生 当院では基本は胚盤胞で移植をしています。

分割胚のうち、胚盤胞までいく卵は半分くらいで、そこまでいった卵は妊娠率が高くなります。

当院での着床率は、分割胚で移植すると 30 代で卵1個あたり18 %、胚盤胞のグレードAだと 43 %というデータが出ています。

胚移植の数が原則1個という状況で妊娠率をある程度キープするためには、やはり胚盤胞を基本にするという考え方がいいのかなと思っています。

ただ採卵数が少なければ胚盤胞までいかないこともあり、そうすると移植をできないという精神的なダメージがありますよね。

ですから一応のラインとして、卵が5個以上採れた場合に胚盤胞移植を原則としています。

数が少ない場合ですが、1〜2個の場合には3日目の分割胚移植、3〜4個の場合は3日目に一度来院いただき、分割の状況をみてすぐに戻すか、あと2日待って胚盤胞にするかを決めています。

胚盤胞になるまでの時間は、通常受精後5日目ですが、6日でも状態のいい胚盤胞に関しては妊娠率で変わることはありません。

胚盤胞移植のリスク

胚盤胞移植で考えられるリスクはありますか?

小田原先生 卵を体外で培養することによる流産率とか、先天異常率が増えないかということですね。

それは決して高くならないと考えられています。ゲノムインプリンティング異常も、生まれた赤ちゃんを見ても特に増えているということはないですね。

1つだけ胚盤胞移植での明らかなリスクというのは、一卵性の双子が増えるということです。

当院では分割胚の場合には 0.3 %なのですが、凍結した胚盤胞で移植すると2%になります。

それが培養条件によるものなのか、まだまだわからないのですが、胚盤胞のリスクとして患者さんにもお伝えしています。

新鮮胚?凍結胚?

新鮮胚と凍結胚はどちらのほうが多いのですか?

小田原先生 当院では、凍結胚のほうが新鮮胚より妊娠率が高いというデータが出ています。

30 代の方に胚盤胞で1つの卵を戻した場合は新鮮胚で 38 %、凍結胚で 42 %、2つ戻した場合は 44 %と 55 %という結果で、凍結胚を移植したほうが妊娠率が高くなっています。

ただし単純に成績だけいいから全部凍結、という考え方はとっていません。

刺激法による子宮内膜の状態や、エストロゲンの数値などがよくない場合、自然周期には戻さずあとで凍結胚を移植しようという考え方です。

子宮内膜の基準

胚移植を行う時の子宮内膜の基準はありますか?

小田原先生 子宮内膜は妊娠のための大事な要素になります。

厚さに関してはいろいろな考え方がありますが、経験的に薄いと妊娠率が下がるので、薬を使って厚さを保っていくようにしています。

当院の目安は 7.5㎜。

十分な厚さということでは 10 ㎜ですね。

あとは内膜の形状が正常な木の葉パターンと呼ばれる形になっていることが大切です。

※ゲノムインプリンティング異常:遺伝現象の異常で、精神発達遅滞や遺伝子疾患などの先天性疾患を起こす。

 

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