ステップアップの計画はどのように立てているのですか?

※ イミング療法、人工授精体外受精……と 不妊治療にはいくつかのステップがあります。 不妊の原因や体の状態、年齢などによって その間隔やスピードは変わってきますが、 「なるべく体に負担をかけずに自然に」 「とにかく早く妊娠することを一番に」など、クリニックや医師の 考え方も治療のステップアップに反映することがあるようです。 最先端医療を用いた不妊治療専門施設である 吉田レディースクリニックでは、どのような考え方で 治療スケジュールを立てているのでしょうか。 院長の吉田先生にお話を伺いました。
※タイミング(療)法:基礎体温や尿中または血中のエストロゲン黄体形成ホルモンを測定して、排卵日を予測し、その排卵日前に性交渉を行う、不妊治療の一つ。
吉田 仁秋 先生  獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、不妊・体 外受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹田総合病院産 婦人科部長、東北公済病院医長を経て、吉田レディースクリニック開設。 3年前より産科・婦人科と施設を分け、不妊治療専門の生殖医療IVF センターを設立。吉田レディースクリニックで妊娠した患者さんの最高 年齢は46歳。「年齢が上がると妊娠しづらいという現実はあるが、卵 が採れる限りは可能性を捨てずに治療にあたる」と吉田先生。

ドクターアドバイス

どんな方法で妊娠した、ということではなく、 〝赤ちゃんを産んだ〞幸福感と達成感を 得ていただくことを大切に考えています。

治療方針確定のための検査

先生のクリニックでは初診の患者さんが来られたとき、まず何を目安に治療方針を立てるのですか。
吉田先生 初めて不妊治療を受けられる方はもちろん、他のクリニックから転院されてきた方など、どんな方もまず初めは基本の6つの検査を受けていただきます。
その内容は、基礎体温をつけていただくこと、超音波検査、子宮頸管粘液の検査、 ※ュナーテスト、子宮卵管造影検査(HSG)、男性の精液検査です。
※ヒュナーテスト:性交後、子宮頸管粘液を採 取して、精子や頸管粘液の状態から、子宮頸管粘液内を精子が通過できるかを調べる検査。
これらの検査に加え、血中ホルモン検査なども行って、さらに詳しく状態を調べていく場合もあります。女性の年齢が 35 歳以下でしたら、それらの検査をしながら半年くらいタイミングをとって様子をみていきます。

検査をしても、原因不明?

検査でどこに問題があるのか判明しなかった場合は?
吉田先生 当院では腹腔鏡検査も実施していますから、半年タイミングをとって原因がわからない場合は、次のステップに行く前に、今度は外科的におなかの中をチェックします。
腹腔鏡という、おなかの中を直接のぞけるものを用いて、より詳細な卵管の通過性の確認や腹腔内の癒着の有無の確認をし、また同時にその癒着の剥離治療を行うこともあります。
腹腔鏡検査は、より的確な治療方針を決められる検査なんですね。
ただし全身麻酔が必要な検査なので、事前に検査の内容を詳しくご説明して、受けるかどうかは最終的に患者さんに決めていただきます。
患者さんのニーズや年齢もありますから。年齢が高く「一刻も早く」という方は、腹腔鏡検査などは行わずに、体外受精に進む場合もありますよ。

年齢から考えるステップアップ

やはり、年齢によってステップアップの時期や内容は大きく異なってくるのでしょうか。
吉田先生 不妊治療において一番重要に考えなければいけないのは、やはり年齢です。どんな女性でも「妊娠適齢期」といって、安全生殖年齢の限界はだいたい 35 歳までと決まっているんですね。
大河ドラマ『天地人』のような時代では 10 代で出産することが普通でしたから、それを考えると今は 20 年遅い。
年齢が上がってくると卵自体の質が落ち、クラミジアや ※ 宮内膜症、子宮筋腫など他の病気を合併することが多くなるので、ますます妊娠しづらくなってしまいます。
※子宮内膜症:子宮内膜に類似した組織が骨盤内の臓器、たとえば卵巣や卵管、ダグラス窩などで増殖し、出血したり炎 症を起こしたりするもの。
さらに 35 歳を過ぎると、卵の染色 体異常の割合も1年ごとに増える。ですから僕は、 35 歳を軸に治療内容やステップアップの時期を考えています。
具体的には?
吉田先生 先ほど申し上げたように、 35 歳以下の方はタイミングから始め、体の状態をみながら半年ごとにステップアップの目安を立てていきます。 35 歳を過ぎたらそれが3ヶ月ごと、 40 歳を過ぎたら1〜2ヶ月ごと……と、時期を早めていきます。
スピードアップしなければいけないことについては、当院では「マザーリーフクラス(子宝草)」といって「不妊学級」を開いているので、そこでもきちんとご説明する。
患者さんに納得していただいたうえで治療を進めるようにしています。

40歳が自然妊娠できる確率は?

ジネコユーザーの投稿を見ていると、「なるべく自然な形で」という医師の考え方なのか、 40 歳を過ぎてもタイミングをとっている、という方もいるようですが……。
吉田先生 その考え方には正直、疑問を持ちますね。 40 歳を過ぎれば自然妊娠する確率は2〜3%です。なるべく自然にということは我々医師も患者さんも望むことですが、年齢によって治療法も異なります。
妊娠は目的ではなく、あくまで赤ちゃんを抱っこするためのスタートにようやく立ったということ。
その後、約10 ヶ月間さまざまな困難を乗り越えて初めて赤ちゃんを抱っこできるのです。我々の施設は分娩も手掛けていますので、これが実感です。
なぜ当院に来たか、それは妊娠を期待していらっしゃるからです。ですから、技術を使ってそれに応えるように最善を尽くすのが我々のつとめだと思うんですよね。

高度生殖医療という選択

高度生殖医療もその手段の一つ、ということですね。
吉田先生 一般不妊治療では結果が出ない方や年齢が高い方は、最終的には体外受精に進むことになると思いますが、僕は体外受精に対してあまり抵抗がないんです。
というのも、体外受精は今や年間2万人以上の赤ちゃんが生まれ、 60 人に1人は体外受精児という一般的な治療であり、妊娠率の高い治療法です。
当院でも、胚移植あたり妊娠率約 40 %と大変高い数字が出ています。
少しでもよい手段や効果的な治療法があれば、それを患者さんにおすすめするのが不妊治療に携わる医師の役割だと思っています。
たとえば、山を登るときに徒歩で行く人もいれば、ロープウェーを使う人もいますが、最終的な山頂からの景観は同じです。これと同じように、赤ちゃんを抱っこした瞬間、今までの苦労のすべてを忘れ、赤ちゃんの安らかな笑顔を眺めるとそれだけで感激と幸福感に満たされます。
僕はどう妊娠したかにこだわるのではなく、「自分の赤ちゃんを産んだ」という幸福感と達成感を得ていただくことが重要だと考えています。我々は自分たちを、赤ちゃんをプレゼントする「幸せ配達人」と考えているんです。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。