【医師監修】神谷博文 先生 札幌医科大学卒業。同大学産婦人科学講 座、第一病理学講座に入局後、斗南病院 にて産婦人科科長を10年間務める。1998 年、神谷レディースクリニックを開業。麻酔 科標榜医、細胞診指導医。最近はゴルフ に凝っていて、普段はまじめにレッスンに通 い、時には全国のドクター仲間と共に各地 で開催されるコンペを楽しんでいる。10月 31日生まれ、神秘的なさそり座、O型。
大松田さん 38 歳 Q.これまでタイミング法、排卵誘発剤の服用、 人工授精(5回)をして結果が出なかったため、 次回は初めて体外受精にチャレンジしますが、 どのようなリスクがあるのでしょうか? また、体外受精の限界は何歳くらい?
初めての体外受精を控えて不安な人は多いと思いますが、具体的にどのようなリスクがあるのでしょう?
神谷先生 まず、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)があげられますが、これはある程度予見でき、予防もできます。最近OHSSの予測因子として注目されているのが、抗ミュラー管ホルモン。このホルモンの数値を指標にし、それに基づいて排卵誘発剤の使い方を変えるわけです。
数値が高い場合は、誘発方法として黄体形成ホルモン(LH)含有の少ない卵胞刺激ホルモン(FSH)製剤を使用し、 ※GnRHアンタゴニストを併用する方法などがよいです。新鮮胚で移植せず、全胚凍結を行い、後日ホルモン周期で凍結融解胚移植をすることで、OHSSを予防できます。
※GnRHアンタゴニスト:ゴナドトロピンの分泌を抑制する働きを持つ製剤。
採卵時の出血について不安に思う人もいるようですが?
神谷先生 採卵時の出血は 19 〜 20 ※ゲージという細い針を使ったり、吸引圧を低圧で保つことで防ぐことができます。昔は 16 ゲージの太い針を使っていた時代もあったんですよ。
※ゲージ(G):注射針の太さを表す単位。数字が大きくなるほど針は細くなる。
受精卵を子宮に戻すときは?
神谷先生 不妊治療の最終目的は、「一人の健康な子ども」を産むことですからね。多胎を作らないことがあげられます。排卵誘発剤は多胎妊娠を発症させますが、体外受精の場合は移植する胚の数を減少させることで予防が可能です。たとえば、3つ子になると脳性麻痺になる確率が17 倍に上がるというデータもありますから。
それを避けるためにも、 35歳以下の方には1個だけ移植することが多いですね。
確かにリスクはあるようですが、技術も年々進化し、そのリスクを補っているのですね。大松田さんにアドバイスをするとしたら?
神谷先生 体に負担が少なく、自然に近い形で妊娠することが理想的ですが、 38 歳という年齢を考えたらAIHを2〜3回行い、途中に体外受精を1回行うというように、二つの方法を組み合わせるのが良いと思いますね。
また、卵の状態を見て危険性がある場合などは、その周期はあきらめて撤退する勇気も必要です。患者さんが体外受精についてしっかり理解していることが成功への鍵。担当医師から事前にしっかりレクチャーを受けてくださいね。