むむたんさん(40歳)
3度妊娠するもすべて胎嚢確認後に流産でした。3回とも流れは一緒で、判定日にhcg50前後と低く、その後1500くらいまで伸びたのち流産。
内容物を病理にはだしていて悪性ではないとしかわからず、遺伝子検査してないので染色体異常なのかは不明。
自然周期、ホルモン補充周期、2個移植、ヘパリンバイアスピン使用などいろいろ試していますが結果はかわりませんでした。
妊娠判定日にhcgが毎回低めなのはどのような理由が考えられますか?
また、今後採卵、移植をするにあたり有効そうなお薬や治療法はありますでしょうか?
浅田レディースクリニックの浅田 義正先生に伺いました。

名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、岡崎、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
一番大切なのは、体の中で何が起きているのか、その仕組みや原因を理解し、適切な検査や治療を選ぶことです。
生殖とは、精子と卵子が持つ遺伝情報が組合わさり、新しい命が生まれる仕組みです。
胚盤胞を移植した場合、通常は移植後1~2日ほどで着床が始まります。
その後、どの段階まで発育したかによって、妊娠の経過の呼び方が変わります。hCGが検出される前に発育が止まれば妊娠として確認されず、hCGが検出された後、超音波検査で胎嚢が確認される前に妊娠が終われば生化学的妊娠となります。胎嚢が確認された後に妊娠が継続しなくなれば、流産となります。つまり、受精卵の発育がどの段階で止まったかという違いです。
妊娠判定日にhCGが低くても、検出されていれば着床はしています。ただし、発育が十分に進んでいない可能性があり、その後の経過を確認する必要があります。
受精卵の遺伝的な問題による発育停止を、ヘパリンやバイアスピリンなどの薬で防ぐことはできません。
受精卵は遺伝子の組合わせによって一つひとつ異なり、兄弟姉妹がそれぞれ異なるのと同じです。発育に必要な遺伝子が適切に働けば成長を続けますが、多くの受精卵は途中で発育が止まります。これがヒトの生殖の特徴です。
流産の主な原因は、受精卵の染色体異常です。
染色体の数に異常のない受精卵を移植した場合には、女性の年齢にかかわらず、移植当たりの妊娠率は6割程度と報告されています。PGT-Aは、染色体数に異常のない受精卵を選んで移植するための検査で、染色体異常による流産を避ける方法の一つです。
また、極まれにご夫婦のどちらかに均衡型転座などの染色体構造異常が見つかることがあります。均衡型転座とは、染色体の一部の位置が入れ替わっているものの、遺伝情報そのものには過不足がない状態です。ご本人には問題がなくても、精子や卵子が作られる過程で染色体に過不足が生じ、流産の原因となることがあります。このような場合には、PGT-SRが検討されます。
一方、受精卵の遺伝情報の組合わせによって、発育に必要な遺伝子が上手く働かず、同じような段階で成長が止まる可能性も考えられます。しかし、どの遺伝子の働きが原因なのかを網羅的に調べ、診断することは現在の医療では困難です。
大切なのは、十分なエビデンスのない検査や薬をむやみに追加せず、有効性が確認されている治療を選ぶことです。PGT-AやPGT-SRも適応や限界を理解した上で検討し、できるだけ早く妊娠・出産につなげていただきたいと思います。
そのためにも、生殖の仕組みや治療の本質を理解し、十分に説明してくれる医師や医療機関のもとで、納得して治療を進めることをお勧めします。
なお、不妊治療の先進医療は、本来は将来保険適用される有望な治療という先進医療と違い、ガイドラインでエビデンスがないとされたものを、現在仮に入れたものです。今後、検証によって多くは保険適用されずに終了すると思われます。