【Q&A】心拍確認できない原因と検査の可能性について〜浅田 義正先生【医師監修】

あみむさん(29歳)

心拍確認の壁が越えられません。
27歳から体外受精を始めて、30歳になります。
不育症検査も問題なしで、4回の移植全て4AAを移植しています。
3回ホルモン補充で移植し全て心拍確認できず、稽留流産。
4回目の自然周期では初めての化学流産でした。

病院では「もうできる検査がない」と言われています。
「子宮鏡検査はやってもいいけど、あまり意味ない」と言われやっていません。

受精胚の問題でPGT-Aしか方法はないのでしょうか?
また、受精胚以外の問題があるなら、何が考えられるでしょうか?

今は5回目自然周期移植中ですが、同じことの繰りかえしにならないかと思います。
心拍確認できるためにできる検査や治療法があれば教えてください。

浅田レディースクリニックの浅田 義正先生に伺いました。

【医師監修】浅田レディースクリニック 浅田 義正 先生
名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、岡崎、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

いつも同じような時期に成長が止まり、心拍確認に至らない、あるいは心拍確認後に発育が止まってしまう場合、その背景には受精卵が持つ遺伝的な要因が関係していると思われます。

そもそも生殖では、精子や卵子が作られる過程で、父親、母親から受け継いだ遺伝情報が組換えられます。そして、その精子と卵子が受精することで、両親から受け継いだ遺伝情報の新しい組合わせを持つ受精卵ができます。そのため、同じご夫婦からできた受精卵であっても、一つひとつが異なる遺伝情報を持っています。兄弟姉妹の遺伝情報がそれぞれ異なるのと同じです。

受精卵が成長していくためには、非常に多くの遺伝子が適切な時期に働く必要があります。心臓をはじめ、さまざまな臓器が作られる過程で、必要な遺伝子がうまく働かなければ、ある段階で成長が止まります。

また、私たちは誰でも、両親から受け継いだ遺伝情報だけでなく、新たに生じた遺伝子の変化も持っています。これも生殖に伴う自然な現象です。そのため、同じご夫婦の受精卵でも遺伝的な組合わせは毎回異なり、これまで越えられなかった発育の段階を、別の受精卵では越えられる可能性があります。

遺伝的な要因の中でも重要なのが染色体の問題です。染色体は遺伝情報の大きなまとまりで、その数や構造に異常があると、受精卵の発育が途中で止まり、流産につながります。

頻度は高くありませんが、ご夫婦のどちらかに均衡型転座などの染色体構造異常がある場合には、染色体の過不足をもつ受精卵ができやすくなり、流産を繰り返すことがあります。

こうした染色体の問題に対してはPGT-Aが検討され、ご夫婦のどちらかに均衡型転座などの染色体構造異常が認められる場合には、PGT-SRが対象となります。ただし、薬を追加したり移植方法を変えたりしても、受精卵がもともと持っている染色体の状態を変えることはできません。

一方、心拍確認に至らないと、受精卵以外、特に子宮側に何か原因があるのではないかと考える方が多いのですが、まず受精卵そのものが持つ要因を考えることが大切です。

例えば、受精卵は子宮内膜以外の場所に着床して子宮外妊娠となることがあります。また、代理出産では、受精卵を遺伝的に異なる女性の子宮に移植しても妊娠が成立し、胎児が発育します。こうしたことからも、受精卵そのものが持つ発育する力が重要であることがわかります。

そのため、妊娠や流産の原因を子宮側だけに求め、子宮内膜に関するさまざまな検査や治療を追加していくことには慎重であるべきです。現在行われている検査や治療の中にも、有効性を裏付ける十分なエビデンスが確立していないものがあります。「受ければ妊娠率や出生率が上がる」と考えるのではなく、本当に有効性が示されているのかを確認することが大切です。

自然周期で移植すれば改善する、あるいは何か薬や治療を追加すれば解決する、という問題でもありません。受精卵がもともと持っている遺伝的な組合わせを、薬や治療によって望ましいものに変えることはできないからです。

極端にいえば、遺伝的な組合わせそのものを大きく変えるには、卵子または精子の由来が変わることになります。大切なのは、生殖にはもともと遺伝的な組合わせの偶然性があり、それぞれの受精卵が異なる性質を持っているということです。

何が治療によって変えられ、何が変えられないのか、その背景にある生殖の仕組みをきちんと理解した上で治療に臨むことです。その点を十分に説明し、納得できる形で治療を進めてくれる医師のもとで治療を受けてほしいと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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