詳しい検査もないまま体外受精をすすめられましたが大丈夫でしょうか?【医師監修】

【医師監修】古井 憲司 先生  1986年日本医科大学卒業。 1987年名古屋大学産婦人 科学教室入局後、名古屋大 学付属病院の文部教官を務 める。大垣市民病院の産婦 人科医長を経て、1998年 クリニックママ開院。心地 よいアロマが香るロビーや、 庭に面したテラスなど、まる でリゾートホテルのように洗 練された雰囲気の院内は、 理事である奥様が女性なら ではの視点でプロデュース。
mipochiさん(39歳)からの投稿 Q.2008年と09年に自然妊娠し、いずれも11週目で稽留流産。 その後、クロミフェン1錠でタイミング1回、クロミフェン2 錠と誘発剤の注射でタイミングを2回行いましたが妊娠に至ら ず、不妊専門病院を紹介されました。そこでは、年齢的なこと もあってか、詳しい検査もしないまま体外受精をすすめられて います。不育症か否かの血液検査では異常ありません。年齢や 過去の状況から、私に一番合うのはやはり体外受精でしょうか?

年齢から考える体外受精

不妊専門病院でいきなり体外受精をすすめられて、不安なようです。
古井先生 やはりご本人も気にしているように、 39 歳という年齢が一つのポイントでしょうね。
ご存じの通り、 40 歳を過ぎると胚移植あたりの妊娠率も悪くなりますから、あまり時間がないのは確かです。
そういった意味では、体外受精も早めに考えたほうがいいとは思います。
しかし、この方の場合、 08 年、 09年と自然妊娠できていますし、クロミフェンを3回使って妊娠しないから、自然のタイミングでは妊娠しませんよ、とは必ずしも言えないと思います。
クロミフェンを使う善し悪しもありますし、いきなり体外受精をすすめるというのはどうかな、という気がしますね。

年齢と、卵巣予備能力

不育症の検査は異常なし、のようですが、他にも詳しい検査が必要?
古井先生 そうですね。まず 39 歳という年齢を考えると、卵巣予備能力を調べるために、できれば生理3〜5日目のFSHLH、 E 2 と、抗ミュラー管ホルモン(AMH)などの検査をしておいたほうがよいと思います。
ご主人の精子も未検査のようですが、過去に妊娠していても、運動精子数やその動きの質まで実際に問題ないのかどうか、確認するべきです。
また不育症の検査としては、ループスアンチコアグラントや、抗 B2 グリコプロテインⅠ抗体などの抗リン脂質抗体は調べておくとよいでしょう。
それから、ご本人の希望があれば染色体の検査も。
ご夫婦のどちらかに染色体の構造異常などがあれば、流産の可能性は増えますから。
いずれにしろ、ご主人と一緒にもう少し詳しい検査をしてから、体外受精か、それとも他の手段かを考えることはできると思います。

ステップアップのタイミングは?

先生が考える他の手段とは?
古井先生 ご夫婦とも検査で問題がなければ、体外受精に進む前に1〜2回は人工授精が可能だと思います。
その場合、まずは自然の排卵で試してみて、妊娠しなければ次はクロミフェン1錠で。
その後、HMG製剤の注射を打っての人工授精という方法もありますが、これは多胎の可能性もあるので、それなら体外受精へ進んだほうがいいかと思います。
逆にFSHなどが高かった場合も、やはり一度は人工授精をすすめます。
それによって、精子や子宮内膜の状態、卵胞がきちんと育つか、また、クロミフェンの反応を見るなど、この方のことをもう少しわかってから体外受精へ、というのが私のスタンスです。
とはいえ、人工授精を延々とやって、 40 歳を超えてしまうのはよくない。
体外受精に進むまでの期間は長くても3ヶ月。その間にできるだけのことをしたいですね。
※LH:黄体形成ホルモン。卵胞刺激ホルモンとともに卵子の発育や排卵、黄体の形成を促す。
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