【Q&A】胚盤胞が着床しない原因と子宮腺筋症の影響は?〜林 直樹先生【医師監修】

にこさん(32歳)

着床すらしなかった原因は何なのでしょうか。
5日目4AAの胚盤胞でも異常胚の可能性があり、着床すらしなかったのは多くの場合は染色体異常だからと説明を受けました(異常胚だったかどうか検査をしていないのでわかりませんが)。

子宮腺筋症は6mmで治療が必要なほどでもなく、着床にも影響がないとの説明で移植に進んだのですが、今回の胚盤胞が正常胚だった場合、もしかしたら子宮に問題があって着床すらできなかったのではないのかなと思っています。

子宮腺筋症をもっている場合、どのような治療方法があるのでしょうか。
普段の生活や、移植前にできることはないでしょうか。

AMHも低いので次の移植までに何回採卵すれば胚盤胞ができるのかどうかもわかりません。
自費でPGT-Aをする予算はありませんが、今後、何度も移植と陰性を繰り返すとなると…。

よもぎ蒸しや鍼などの効果はどうでしょうか。
少しでも妊娠に近づけるのであれば、できる限りのことをしたいです。

今回はアシステッドハッチングしかできませんでしたが、次回は高濃度ヒアルロン酸もできるそうです。

ウィメンズクリニックふじみ野の林 直樹先生に伺いました。

【医師監修】ウィメンズクリニックふじみ野 林 直樹 先生
1983年、東京大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療 センター(川越市)などを経て、現職。「体外受精、顕微授精も高いクオリティで対応していますが、できる限り自然に近い不妊治療をご提供したいと考えています。 患者さんはそれぞれお悩みも違いますから、どんなこと でもまずご相談を。時にはご要望に沿えず、厳しいこと を申し上げるかもしれませんが、常に患者さんにとって ベストな治療法をご一緒に見出したいと思っています」。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

子宮腺筋症を持ちながら妊娠を目指す場合、治療方法としては、症状の程度によりますが、薬物療法や手術療法が選択肢としてあります。ただし、にこさんの場合は、現在のところ治療が必要なほどではないとのことですので、主治医とよく相談しながら進めるのが良いでしょう。

低AMHの状況では、胚盤胞を得るために何回の採卵が必要かは個人差がありますが、卵巣の反応を見ながら治療を進めることになります。一般的には、AMHが低いと採卵できる卵の数が限られるため、複数回の採卵が必要となることが多いです。

着床を促進するために普段の生活でできることとしては、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスの軽減などが挙げられます。また、禁煙やアルコールの摂取を控えることも大切です。これらは体全体の健康を維持し、妊娠に良い影響を与える可能性があります。

よもぎ蒸しや鍼については、リラックス効果や血流改善が期待できると言われていますが、科学的な効果が確立されているわけではありません。ただし、リラクゼーションや気分転換として取り入れる分には問題ないでしょう。自身の体調や気持ちに合わせて試してみるのも良いかもしれません。

次回の移植で予定されている高濃度ヒアルロン酸は、胚移植の際に胚の周りの環境を整えることで着床の可能性を高めるとされています。これは、体外受精の補助技術として行われるもので、着床率の向上が期待されることがあります。ただし、効果には個人差がありますので、詳しいことは主治医と相談してみてください。
子宮腺筋症を持つ場合の妊娠治療についてですが、一般的に子宮腺筋症は着床に影響を与える可能性があります。ただし、現在の状態では、医師から着床に重大な影響はないと説明されています。子宮腺筋症の治療は通常、症状の重さや妊娠の希望によって異なります。手術や薬物療法が選択肢となることもありますが、主治医と相談しながら治療方針を決めることが重要です。子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉の中に入り込んでいる状態です。腺筋症があると妊娠しにくくなるのではないか、と心配される方も多いのですが、腺筋症の程度にはかなり個人差があります。
腺筋症が広範囲にみられる場合や子宮が大きく腫れている場合などには、着床しにくくなったり、流産のリスクがやや高くなったりする可能性が報告されています。一方で、軽度の腺筋症があるからといって、必ず着床に影響するわけではありません。
今回、主治医の先生から「それほど着床に影響するような腺筋症ではない」と説明されているのであれば、まずは通常の方法で妊娠を目指してよいのではないかと思います。
体外受精・胚移植を行う場合も、腺筋症があるという理由だけで、必ず特別な移植方法を選択しなければならないわけではありません。
腺筋症に対する治療の一つとして、胚移植前にGnRHアゴニストという薬を1~3か月程度使用し、一時的に女性ホルモンを低下させて腺筋症の活動性を抑えてから胚移植を行う方法があります。特に腺筋症が強い場合などに行われることがあります。
しかし、最近の研究では、この前治療を行った方が通常の凍結融解胚移植よりも妊娠率や生児獲得率が明らかに高くなるとは証明されていません。そのため、腺筋症があるすべての方に行う標準的な治療ではありません。
また、自然周期で胚移植する方法と、ホルモン剤で子宮内膜を作って移植するホルモン補充周期がありますが、腺筋症があるから必ずホルモン補充周期の方がよい、ということも現時点では明らかになっていません。
したがって、軽度の腺筋症であれば通常の不妊治療・胚移植を行い、腺筋症が広範囲である、子宮がかなり大きくなっている、強い月経痛がある、あるいは良好な胚を何度か移植しても妊娠しないといった場合に、腺筋症に対する治療を追加するかどうかを個別に検討する、という考え方がよいと思います。
今回のように主治医の先生が「着床への影響はそれほど大きくない」と判断されているのであれば、腺筋症を過度に心配して特別な治療を追加する必要性は高くないと思います。

低AMHの状況下で胚盤胞を得るための採卵回数については、個人差が大きく、一概には言えません。AMH値が低い場合、卵胞の数が少ないことが考えられますが、年齢的には質の良い卵子が得られる可能性もあります。医師と相談しながら採卵スケジュールを立て、無理のないプランを考えてください。32歳という年齢から考えると、採れた卵子のすべてが胚盤胞になるわけではありませんが、平均的には2~3個の卵子から1個程度の胚盤胞ができることが一つの目安になります。
AMHが0.46と低いため、一度の採卵で得られる卵子の数は少なくなる可能性があります。ただし、AMHは主に「卵巣に残っている卵子の数や、刺激したときに何個くらい採れそうか」を予測する検査です。AMHが低いからといって、採れた卵子そのものの質が同じ年齢の女性より必ず悪いという意味ではありません。
32歳では卵子の年齢としてはまだ若いため、たとえ一度に採れる卵子が2~3個程度であっても、そこから良好な胚盤胞が得られることは十分期待できます。ただし少数の卵子では偶然の影響が大きいため、2~3個採れれば必ず胚盤胞が1個できるという意味ではありません。

「着床しやすくするために、普段の生活で何かできることはありますか?」という質問をよくいただきます。
残念ながら、「これを食べれば着床する」「この運動をすれば着床率が上がる」といった特別な方法は、現在の医学では証明されていません。そのため、着床だけを目的として特別な食品やサプリメント、民間療法などを取り入れる必要はありません。
一方で、妊娠に向けて身体を良い状態に整えておくことは大切です。
運動については、ウォーキング、ジョギング、水泳、自転車などの適度な有酸素運動を習慣にすることをお勧めします。一つの目安として、週150分程度の中等度の運動を目標にするとよいでしょう。ただし、急に激しい運動を始める必要はありません。普段あまり運動をしていない方は、まず歩く時間を増やすところからで十分です。

食事については、着床に特別によい食品があるわけではありません。野菜、果物、魚、肉、豆類、全粒穀物などをバランスよく摂取し、極端な食事制限を避けることが大切です。また、妊娠を希望する女性には、妊娠前から葉酸を1日400 µg以上摂取することが推奨されています。これは着床率を上げることが主目的ではなく、妊娠初期の赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを減らすためです。

睡眠についても、特別な睡眠法で着床率が上がるというわけではありませんが、十分な睡眠時間を確保し、できるだけ規則正しい生活を心がけてください。喫煙は避け、アルコールもできるだけ控えることをお勧めします。

男性側についても生活習慣は大切です。特に体外受精・顕微授精を予定している場合、「採卵日まで精子をためておいた方がよい」と考える必要はありません。長期間の禁欲によって精子DNAの損傷が増える可能性があり、最近では短い禁欲期間の方が精子の状態が良好であるという報告が増えています。そのため、採卵日に向けて何日間も射精を控えるのではなく、普段からある程度定期的に射精しておくことをお勧めしています。具体的な採精前の禁欲期間については、治療施設の指示に従ってください。
最も大切なのは、着床のために日常生活を過度に制限しないことです。通常の仕事、家事、歩行や適度な運動によって胚が着床しにくくなるという心配はありません。
「着床のために何か特別なことをしなければ」と考えるよりも、適度な運動、バランスのよい食事、葉酸、十分な睡眠、禁煙といった、妊娠前から推奨される一般的な健康習慣を続けていただくことが大切です。

よもぎ蒸しについては、妊娠しやすくなる、子宮や卵巣の血流がよくなる、卵子の質がよくなるといった説明を目にすることがありますが、現在のところ、不妊症の治療成績や妊娠率、生児獲得率を改善することを示した信頼できる医学的エビデンスはありません。

鍼治療については、よもぎ蒸しより多くの臨床研究が行われています。しかし、最近の質の高い研究をまとめた解析でも、体外受精における生児獲得率を高める効果は明確には証明されていません。そのため、妊娠率を高めることを目的とした不妊治療として、積極的にお勧めするものではありません。
ただし、鍼治療などによってリラックスできる、体調がよく感じられるという方もいらっしゃいます。そのような目的で、ご本人が負担にならない範囲で行うことまで否定する必要はないと考えています。ただ、「これを行えば妊娠しやすくなる」と期待して、高額な費用をかけたり、標準的な不妊治療の代わりにしたりすることはお勧めしません。

次回予定されている高濃度ヒアルロン酸の使用については、着床を助ける可能性があります。ヒアルロン酸は胚移植時に胚の周囲の環境を整えると言われていますが、効果には個人差があります。これについても、主治医とよく相談し、そのメリットや可能性について理解を深めてください。胚移植の際に、高濃度のヒアルロン酸を含む移植液を使用する方法があります。ヒアルロン酸はもともと体内にも存在する物質で、胚と子宮内膜との相互作用を助ける可能性が考えられています。
これについては複数のランダム化比較試験が行われており、それらをまとめた研究では、高濃度ヒアルロン酸を使用することで妊娠率や生児獲得率がわずかに高くなる可能性が示されています。
ただし、これまでの研究には古い治療法や複数胚移植を行っていた時代の研究も多く含まれています。現在一般的になっている単一胚盤胞移植や凍結融解胚移植において、どの程度の効果があるのかについては、まだ十分には明らかになっていません。
したがって、「使用すれば明らかに妊娠率が上がる」とまでは言えませんが、まったく医学的根拠のない治療でもありません。一定の効果を示唆する研究結果はあるものの、その効果の大きさや、現在の胚移植にどこまで当てはまるかには不確実性が残っている、というのが現時点での評価です。

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