みかんさん(30歳)
精液の初見が悪いです。
人工授精を一度したのですが、ダメだった場合は体外受精にステップアップした方がいいでしょうか?
自己注射もあるので、避けたいとは思っていましたが…。
このデータでも人工授精で妊娠する確率はまだありますか?
ウィメンズクリニックふじみ野の林 直樹先生に伺いました。

1983年、東京大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療 センター(川越市)などを経て、現職。「体外受精、顕微授精も高いクオリティで対応していますが、できる限り自然に近い不妊治療をご提供したいと考えています。 患者さんはそれぞれお悩みも違いますから、どんなこと でもまずご相談を。時にはご要望に沿えず、厳しいこと を申し上げるかもしれませんが、常に患者さんにとって ベストな治療法をご一緒に見出したいと思っています」。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
【質問1】精液初見が悪い場合の人工授精成功率について教えてください。
精液所見が悪い場合でも、人工授精で妊娠する可能性はありますが、成功率は低くなることが一般的です。精子濃度や運動率が低いと、卵子に到達する精子の数が限られるためです。ただし、精子の状態は変動することもありますので、複数回試みることで妊娠に至ることもあります。記載された所見から計算される運動精子数は140万です。100万以上というのが人工授精での妊娠の下限といわれており、それに近い値です。
【質問2】人工授精が不成功だった場合、体外受精へのステップアップのタイミングを教えてください。
精子所見が軽度もしくは正常の場合、3回をめどに人工授精をおこなって妊娠にならなければ体外受精へステップアップがよいでしょう。ただし年齢や不妊期間、卵管の状態によっては最多6回まで人工授精をおこなってもよいでしょう。
【質問3】自己注射以外の方法があれば教えてください。
内服の排卵誘発剤を用いて行う方法があります。ただし採卵個数はすくなくなるので、場合により採卵を繰り返さなければならないこともあります。
年齢的には最少でも6-7個程度の卵子の中に1個の卵子が赤ちゃんとして生まれるデータと経験則となります。ただしこのデータはあくまで平均値であり、個人差はかなりあります。成熟卵子かどうか、受精や分割しない卵子もある、移植可能胚となっても染色体異常などで赤ちゃんに慣れない卵子もあるためです。みかんさんの場合、AMH4.07と良好な卵巣予備能ですので注射製剤を用いればある程度の採卵数が獲得できます。条件がよければ、その周期で得られた受精卵で妊娠出産となり、さらに凍結保管した受精卵で2人目以降が望めることも期待できます。それが注射による高刺激法のメリットといえます。
また自己注射でなく医療機関で連日注射してもらうということも可能かもしれませんが、それは通院されている医療機関にご質問なさってください。自己注射製剤は針が細くかつ短いため痛みが少なく、きちんとした注射指導のもと実施されれば案外慣れてくることが多いです。
【質問4】体外受精以外の治療方法を希望する場合、どのような方法がありますか?
ご主人の生活習慣に見直しと必要あれば改善。そして精子所見が良くない場合、いきなり人工授精や体外受精をおこなうのではなく、男性の外来受診を是非お勧めします。精索静脈瘤やまれには睾丸腫瘍が背景にある場合もあります。また治療やサプリメントなどで改善することも多々あります。精子所見だけをみて治療計画を立てるのではなく男性をトータルで診察検査そして可能ならば治療が大切です。
【質問5】妊娠確率を上げるための生活習慣の改善方法を教えてください。
適正体重を保つ、週150分の中等度以上の運動、喫煙やアルコール摂取についての制限などです。葉酸などのサプリメントは必須です。子ども家庭庁発行のプレコンセプションケアの情報などもありますので参考になさってください。