【体験談】自然周期に挑みながら、新たな選択肢を探る日々〜試行錯誤の先に見えた小さな変化と夫婦で続ける日常の工夫~Yさん・Zさんご夫婦②~

不妊治療を続けるYさん・Zさんご夫婦への取材は、2025年春先に続いて今回で2回目となります。前回は、これまでの治療の経過や、低刺激による体外受精へステップアップしてもなお思うような結果が得られない日々について伺いました。

それから数か月。ホルモンバランスや通院タイミングの難しさに苦戦しながらも、5回目の移植に向けて自分の体と丁寧に向き合い始めたYさん。その過程で生まれた小さな変化を夫婦で確かめ合いながら、次の一歩を模索していました。

自分の体に委ねる、自然周期という選択

前回の取材から約3か月。Yさんは体調の小さな揺らぎが続き、「夏バテ気味です」と話しながらも、日常生活は穏やかに過ごせているようでした。

一方、不妊治療は新たなステージへ。主治医から提案された2個移植に向けて凍結胚盤胞1個は確保できていましたが、もう1つとなる初期胚は得られないままだったYさん。より体への負担が少ない方法での採卵を目指すようになっていったそうです。
「低刺激でレトロゾールやゴナールFを使っていたときは、頭痛や出血の仕方に違和感があって…。自分のホルモンと外から入れるホルモン剤のバランスが合っていないような気がしていたんです」
Yさんは主治医と相談のうえ、外からの刺激に頼るのではなく“自分のホルモンの力を信じて、卵胞の成長を見守る”自然周期という方法を選択しました。

ステップアップで知った“妊娠しづらい”数値のこと

提携先の不妊治療専門クリニックに転院し、婦人科では調べなかったAMH値を計測。そこで初めて0・25ng/mlととても低い数値だったことを知ったYさん。
「今まで人工授精で結果が出なかったのはそういうことだったのかって納得できたし、もっと早く知りたかったというのが本音です」とYさんは当時を振り返ります。

結婚前にブライダルチェックを受けようと考えていたけれど、お互いに仕事が忙しく、機会を逃しているうちに気づけば人工授精の治療に進んでいた…という感覚。
「あの時に検査を受けていれば、もう少し違う結果になっていたかもしれないと後悔する思いもあります」

妊娠しづらいという現実を受け、体外受精にステップアップしたYさんでしたが、低AMHに加え、FSH(卵胞刺激ホルモン)が常に二桁台と高いことも判明。卵巣機能の低下は否めませんが、周期によって卵胞が育つ時もあるため「やってみないとわからない」という状況が続きます。
アンタゴニスト法をはじめ試行錯誤で刺激法を変えながら採卵を目指しても、卵胞が小さすぎて採卵できない、遺残卵胞があって採卵周期に入れない、採卵できても1〜2個しか採れない、胚盤胞まで育たない、育っても空胞…の繰り返し。現在は低刺激法に移行していますが、日常生活や仕事にも影響するほどの副作用が顕著に出てしまうなど、薬との相性にも悩まされてしまいます。

できることを増やし、少しずつ前進

「薬を使わない分、飲み忘れのプレッシャーがなくて。気持ちに余裕をもって過ごせるようになったと思います」
そう語るYさんですが、自然周期も順調というわけではありませんでした。

FSHが三桁まで上昇したため、プロゲステロンで卵巣を一度リセット。採卵可能な状態まで回復できても通院のタイミングは繊細で、わずかなズレも結果に影響したそうです。
「予定が合わなくて採血とエコーを1日ずらしたら、排卵直前まで進んでしまったり、採卵できても排卵済みの卵胞や空胞が増えていたりと、思うようにはいかなくて…」
再びリセットを経て、自然周期での採卵に挑戦。やはりFSHは高い状態でしたが慎重に経過を観察しながら進めていき、1つの卵を得ることができたそうです。

また、この期間に初めてシリンジ法にも取り組みました。知識としては知っていても「自分たちには縁がないかもしれない」と思っていた方法でしたが、採卵当日に排卵済みという結果を受けて、急遽試すことを決意。結果にはつながらなかったものの「できることが一つずつ増えていく実感がありました」と、YさんとZさんが常に大切にしている“選択肢が増えた”ことそのものに意味があったようです。

大切なのは、思いやりと支え合い

「病院どうだった?」「数値は?」など、2人はこれまでと変わらず日々の何気ない会話の中で治療や通院スケジュール、体調の変化についてこまめに共有しています。もともと食が細く体重が増やしづらいうえ、季節的に夏バテ気味というダメージにも悩まされているYさんに対して、Zさんは食事面でのサポートを継続。冷たい汁物や薄味の料理、Yさんが好きな大根おろしをふんだんに取り入れるなど、「一度に食べきれる量、食べ終えたら無理なく栄養が摂れている、そんな食事を心がけています」と優しく語ってくれました。

先日は2人でリアル脱出ゲームにも参加。これまでの“競争する遊び”とは異なり、協力して謎を解く時間は新鮮なコミュニケーションとなり、治療から少し離れてリフレッシュする機会にもなったようです。

現在は凍結結果を待ちながら次の移植に向けて準備を進める日々。久しぶりにお会いした2人は「思うようにいかない時間も含めて、自分たちのペースで支え合う」ことの大切さを改めて教えてくれました。

●心の安定を優先し、二人らしいペースで治療を継続中 ~Yさん・Zさんご夫婦①~ はこちら>>
●新しい医師との出会いが、気づきと変化のきっかけに 〜基本に立ち返り、治療と生活を見直し始めた ~Yさん・Zさんご夫婦③~ はこちら>>

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