高齢で妊娠を目指す際の治療法選択と転院について、東京ARTクリニックの小川誠司先生にお聞きしました。

2004 年名古屋市立大学医学部卒業。慶應義塾大学病院産婦人科助教、荻窪病院・虹クリニック、那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長、藤田医科大学東京先端医療研究センターの講師・准教授を経て2026年2月、東京駅八重洲に東京ARTクリニックを開業し、院長に就任。これまでの豊富な臨床経験をもとに、患者さま一人ひとりと真正面から向き合い、それぞれの背景や想いに寄り添ったオーダーメイドの治療を大切にしている。
従来の不妊治療に加え、新しい治療の選択肢も積極的に取り入れながら、患者さまにとって最適な医療を提案している。産婦人科専門医(日本専門医機構)、産婦人科指導医(日本産科婦人科学会)、日本生殖医学会専門医、日本女性医学会専門医、がん生殖ナビゲーター、日本抗加齢医学会専門医、母体保護法指定医師(日本医師会)、再生医療認定医(日本再生医療学会)
さいさん(46歳)
現在、46歳でAMHは0.27で夫は41歳の2人目不妊です。2020年6月~2023年5月の間に2つのクリニックで体外受精を行う。1つ目のクリニックで胚盤胞5個凍結するもの妊娠せず。2つめのクリニックでは初期胚3個凍結し、移植するも陰性。その間に一度自然妊娠するものの22週で死産。
2024年6月~1人目を妊娠したクリニックで治療を再開。低刺激法で10回採卵。毎回成熟卵1個取得するが、受精はするもののなかなか胚盤胞には至らず。現在胚盤胞(PGT-AでC判定)1個のみ凍結中。夫は2021年に受けた精液検査でDFI/D、HDS/A、抗酸化力Bとの判定。
年齢的に難しいとはわかっていても2人目を諦められません。やはり卵胞刺激法はクロミッドメインのたまに少量注射しかないのでしょうか。転院すれば変わるものでしょうか。また、現在のクリニックでは通常の顕微授精(レスキューICSIはある)しかないので、ピエゾICSI、IMSIなどを行っているクリニックへ転院した方が胚盤胞になる可能性は高いでしょうか。それとも卵子の質が問題で転院しても意味がないでしょうか。
●さいさんのように46歳でAMH0.27の方に対する最適な卵巣刺激法はどんな方法でしょうか。
46歳の方ですとAMHの数値は個人差が大きいです。ただAMH0.27であれば、刺激しても多くは採れないと思います。そう考えると低刺激法、例えばクロミッドと注射で刺激する方法がいいでしょう。また刺激法の選択にあたっては、患者さまのホルモン値を参考にしながら、医師の経験も踏まえて総合的に判断します。
また採卵時期を変えるのも1つの方法です。通常18-20mmで採卵することが多いですが、長く置くとプロゲステロンが上がって卵子の質が下がってしまう可能性があります。そのためエストロゲンが充分にあがっている成熟卵であれば、15~16mmぐらいの少し早い段階で採卵した方が、質の良い卵子が採れる可能性があります。
●ピエゾICSIやIMSIが胚盤胞に与える影響についてはいかがでしょうか
ピエゾICSIとは、先端が平らなピペットと振動を活用して顕微授精させる方法です。従来のICSIと比べて卵子へのダメージを軽減できます。またIMSIは、従来よりも高倍率の顕微鏡で良好な精子を見つけて顕微授精させる方法です。良い卵子と良い精子を受精させることで胚盤胞になる確率が高くなるので、どちらも胚盤胞になる確率を高めてくれると考えられます。高齢の場合、ピエゾICSIにすることで、ダメージを抑え変性卵になる可能性を低くできます。
精液検査のDFIがDとのこと。このようにDFI値が高い人や何回も失敗している人にとってIMSIは、より良い精子を選別できるので、特にこの患者さんのような場合には、どちらも適している方法だと思います。
●卵子の質に問題がある場合、転院してもあまり意味がないでしょうか。
採卵のタイミングや、卵巣を刺激する際に使用する薬剤、受精卵の発育に必要な培養液は、クリニックや医師によって全然違いますし、それによって違う結果をもたらされる可能性はあります。なので、違う先生の意見を聞いてみるのは良いと思います。ただし、さいさんのような年齢の方を本当に診られる先生はそう多くないので、経験豊富な先生のところに行かれた方が良いでしょう。

●卵子の質を向上させるための具体的な方法をお教えください。
卵子の質を向上させる方法としてPRP治療(多血小板血漿治療)や幹細胞治療などの再生医療があります。どちらも卵子の質をあげる可能性がありますが、特に幹細胞治療は、今後の可能性が期待されている治療の一つです。。幹細胞治療は、月経血から幹細胞を採取して培養。それを卵巣に注入することで、卵巣機能を回復させる方法です。おおよそ投与から1ヵ月程度で効果が現れます。実際に45歳の方でもAMHが上がって採卵できるようになった症例があります。幹細胞治療は当院でできるので、より詳しく知りたい方はご相談ください。
その他DHEAやメラトニンなどエビデンスのあるサプリを活用するのもいいでしょう。精子所見も良好とは言えないため、、できれば男性にもマルチビタミンなどのサプリを飲んだ方がいいと思います。
●さいさんへの今後のアドバイスをお願いします。
ご自身も承知されている通り、年齢的にもAMHから考えても半年~1年が勝負です。転院をお考えであれば、高齢の患者さまの診療実績が豊富なクリニックを選ばれることをお勧めします。そして何よりも大切なのが、ご自身が、実際に話をしてみて「この先生となら一緒に頑張れる!」と、思うことです。そのためにいくつかのクリニックで話を聞いてみてから転院先を見つけるのがいいと思います。
