【体験談】「やってみるしかない」を鵜呑みにせず、自らの意志で治療を選択しました。

 

無理なく治療を継続するために行動したかった
「やってみるしかない」を鵜呑みにせず、自らの意志で治療を選択しました。

SNSの妊活アカウントをはじめあらゆる媒体で情報収集と発信を行い、最短で妊娠できる方法を模索していた山猫スズメさん。試したい治療や検査があれば積極的に主治医と相談するなど、自発的な治療を心がけていたそうです。

タイムリミットに気づき、結婚と同時に治療を開始

不妊治療の体験を赤裸々に綴った電子書籍『妊活、ナメてました。〜37歳漫画家の子作り日記』の著者・山猫スズメさん(47歳)。ジネコでは、ERA、EMMA、ALICE検査の各キャラクターを描いている作者としてお馴染みの漫画家さんです。
実は、幼い頃にドキュメンタリー番組で流れた過酷な出産シーンを目の当たりにして以来、「私には無理だ」「子どもは欲しくない」と思っていたスズメさん。人付き合いが不得手で、小さい子どもに至っては「どう接していいのかわからない」と苦手意識もあったそう。共通の趣味で意気投合し、交際に発展したシロさん(41歳)もまた、一緒に暮らし始めてからも子どもを望む素振りは一切なかったそうです。
二人だけの生活を楽しく過ごしていたスズメさんの気持ちに変化が生じたのは37歳の時。
「同級生の子どもが小学生になって、それくらい大きくなるとずいぶんかわいいんだなと思って…。もし、自分も子どもをつくるとしたら、年齢的にリミットだということにも気づき、助成金の条件など諸々考えて、入籍と同時に不妊治療を始めました」

医師の言葉に惑わされず、専門的な治療を求めて転院

20代の頃から子宮筋腫とポリープがあることを指摘され、重い生理痛と不正出血にも悩まされていたスズメさんでしたが、不妊検査では特に問題が見つからなかったため、まずはタイミング法3回、人工授精3回に挑戦。いずれも陰性だったため体外受精にステップアップし、初期胚盤胞移植で初めて陽性判定が出たものの、8週目で流産という結果でした。
「流産後は妊娠しやすいと言うお医者さんもいるし、主治医は移植を繰り返すしかないと言うだけでしたが、その後も2回連続陰性だったので、転院を決めました」
専門的な治療が受けられるクリニックに転院し、治療を始める前に不育症検査を希望しました。
「不妊の原因がわかっていないなか、移植を繰り返しながら原因を潰していく、というのが一般的な治療だと思うけど、それだとお金がいくらあっても足りないなって思ったんです。それなら、先に検査をして、悪いところがあれば対処するほうがいいと思い、先生に伝えました」

不育症対策も結果は出ず…夫婦仲にも亀裂が

具体的な不安要素があるわけではなかったのですが、実際に不育症検査を受けてみるとビタミンD不足と抗リン脂質抗体と診断。さらに、甲状腺も通常の生活には問題ないものの妊娠を目指すには影響がある数値だと指摘されます。
チラーヂンRを飲み、サプリでビタミンDを補い、初期胚移植後はヘパリンでフォローするなど対策を講じましたが、結果は陰性。原因や今後の治療のことなど聞きたいことをメモに書いて主治医に質問した時に「もともと子どもが欲しくないと考えていたことによる、心理的要因も否定できない」と言われ、その言葉は今も強烈に記憶に残っているそうです。
シロさんとスズメさんの間に大きな亀裂が生じたのもこの頃。「自分はまだ若くて問題ないし、薬以外のものは飲まない」と考えるシロさんに対し、精子の質を上げるサプリを飲んでほしかったスズメさん。「私は頻繁に通院して、お腹には注射を打たないといけないし、効果が期待できると聞けば何でも取り組もうと思って精一杯しがみ付いて治療しているのに、なんでこの人はサプリ1つ飲めないのかって…。はっきりと、飲みたくないって言われた時は、本当にショックでした」。
主治医からサプリの必要性を説明してもらってようやく理解したシロさん。「普段なら何でもないことだったのかもしれないけど、心がかなり狭くなっていて、余裕がなかった時期でした」とスズメさんは当時を振り返ります。

あらゆる可能性を想定し、自らの意思で進め方を選択

2軒目のクリニックで思いのほか費用がかかってしまい、いったん治療を中断。それは、これからのことをゆっくりと考える時間にもなりました。そして、「これを最後にする」とシロさんと約束し、PGT -A(着床前胚染色体異数性検査)が受けられる県外のクリニックへ転院。6つ検査に出した胚盤胞のうち一つが正常胚だと診断されました。
最後の挑戦であり、移植できる胚盤胞は一つのみだからこそ、可能性を少しでも高めるためにERA検査を希望しました。
「先生が出した予測と検査結果は違っていたけど、最終的に私は検査を信用することにしました。そうじゃないと、検査した意味がないから」
移植後、グレード的に「他のクリニックなら廃棄されているかもしれないレベル」と不安もあった胚盤胞は着床し、初めての妊娠継続。2019年8月、ついに出産の日を迎えることができました。
「6歳になる今、大きな病気をすることもなく、健康優良児に育っています」。治療を「自分ごと」と考えるようになっていたシロさんも娘の誕生を喜び、率先して子育てに励んでいるようです。
「やってみないとわからないことは多いかもしれないけど、自分で考え、知識を得ることで、少しでも有効な治療にたどり着けるはず」
一般社団法人 不妊・不育のためのPGT 患者会に所属し、自身の妊活アカウントを立ち上げるなど
さまざまな方法で集めた知識を治療に生かし、主体的に不妊治療を進めてきたスズメさん。一児の母になった今もなお、治療経験者として自身ができる活動と発信を続けています。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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