高齢出産のリスクを恐れず

高齢出産のリスクを恐れず、“夫の子”が欲しい 夫を父親にしてあげたい。

ほんの少しでも希望があるのなら 私はチャレンジし続けたい。

40 代で再婚。

まだ若い年下の夫を「父親にしてあげたい」 そう心に決めて、キヨミさんは不妊治療を開始。

可能性が0%でないのなら、諦めたくないけれど、 治療費のために、働かなくてはならない実状も。

「子ども、産めますか?」に、 「必ず産む!」と決意

梅雨明け間近の取材当日は 折しもキヨミさん( 45 歳)の 結婚記念日。

4年前に入籍さ れたご主人は7歳年下で、な んと現在でも同じ会社に勤め る上司と部下の間柄。

バツイ チ同士で、お互いに「そろそ ろ再婚を」と考えていた当時、 「一緒に婚活しよう」とプラ イベートでも会うようにな り、職場で見るのとは違う一 面を知るうちに自然と惹かれ 合うようになったそう。

「その時私はすでに 40 歳を過 ぎていました。

交際が進み、 真剣に結婚を考えるようになった時、彼が口にしたのは “子ども、産める?”との言葉 でした。

夫は今では“そんな 失礼なこと言ったかな?”と 記憶が薄れているようですが」 と、苦笑いするキヨミさん。

それを受け、「絶対に産んで みせるからね!」と誓い、キ ヨミさんは結婚後すぐに不妊 治療をスタートさせました。

夫の優しさを受け継いだ 血のつながった子が欲しい

キヨミさんの初婚は 21 歳の 時。

若いうちにママになりた いという思いがあったのと、 生理不順を気にされて、念の ため婦人科で検診を受けまし
たが、「真剣に取り合っても らった記憶がないんです。

若 かったこともありますが、も う 20 年以上前のことで、まだ 不妊治療というものが今ほど 浸透していない時代でした し、専門クリニックも情報も ほとんどありませんでした。

当時は太っていたこともあっ て、“適正体重に近づけるよ う努めなさい”と食事指導さ れただけ」と、キヨミさん。

特には問題ないと診断さ れ、そのままやり過ごすうち に、職場では仕事ぶりが認め られて、女性でありながら異 例の昇進。

仕事にやりがいや 責任を感じるにつれ、「この まま夫婦二人でも、子どもがいない生活でもいいかな」と 思うように。

ところが、結婚 生活は 16 年でピリオドを迎え ます。

離婚の原因は、子ども ができなかったことではあり ませんでした。

一方、キヨミさんのご主人 と前妻との間には、お子さん がいます。

男の子で、今年で6 歳。

「いわゆる“できちゃった婚” だったそうですが、わずか半 年で離婚。複雑な事情があ り、前の奥様は出産後すぐに 実家のご両親のもとへ。

だか ら、夫は生まれたばかりの赤 ちゃんの姿を見ただけで、“父 親になった”という実感を味 わっていないのです」と、キ ヨミさんはご主人の心の内を慮ります。

「今は会うことすらできない 息子さんですが、いつかのた めにと、夫は毎年お誕生日の たびに積み立てをしていま す。

残高を見れば今何歳かが わかるようにと。こんなに子 どもを思いやれる人なのです から、何としても父親にして あげたくて」

妊娠反応に、一喜一憂 でも、可能性があるなら!

年齢を考慮し、キヨミさん はすぐに顕微授精に挑戦。最 初に通ったクリニックでの治 療で、半年もしないうちに妊 娠反応が。

しかし喜びもつか の間、稽留流産という結果でした。

その後も治療を続けま したが、病院の方針で胚盤胞 に至らない卵子は凍結すらし てもらえず、やむなく転院す ることに。

インターネットの 口コミサイトを参考に、「こ こなら!」と選んだクリニッ クも通いやすい場所ではな く、通院も一苦労なのだそう。

「管理職でストレスも多いこ とから、思い切って 2 年間の 休職を願い出ました。

それで もその間には妊娠に至らず、 この春に職場復帰。

すると、 なぜか採った卵子が続々と順 調に胚盤胞に成長するという 嬉しい兆しが!

仕事のスト レスがなければ、と思い込ん でいましたが、私にとっては 不妊治療に専念するのもストレスだったのかもしれません ね。

実は、取材のお話をいた だいた時も約 3 年半ぶりに妊 娠反応があり、今日は良いご 報告ができると思っていたの ですが残念な結果に」と、キ ヨミさん。

不妊治療を始めて4年。最 初の病院では採卵 8 回、移植4 回。

現在の病院では採卵 16 回、移植 5 回。

これまでにか かった治療費は、交通費など を除いて約 1 千万円とのこ と。

幸いなことにキヨミさん の場合はお仕事が励みになっ ていますが、高額な治療費を 捻出するために、経済的な不 安を少しでも軽くするため に、女性も“働かなければな らない”のが現状なのです。

羊水検査はしないという45 歳で妊活する覚悟

不妊治療では、「もう諦め てください」と医師が言うこ とはありません。

患者さんが 希望をもつ限りは、患者さん の気が済むまで付き合わざる を得ません。

「妊娠の可能性がゼロなら、 不妊治療費が払えなくなった ら、子をもつことを諦める きっかけになるのでしょうけ れど、今はそうではない。

ほ んの少しでも希望があるのな ら、私はチャレンジし続けた い」と、キヨミさんの決意は 揺るぎません。

今回の妊娠反応も、「年齢 が年齢ですから、約 6 割は流 産の可能性があるので、喜ぶ のはまだ早い」と担当医に言 われていたとか。

高齢=卵子 の老化、という事実は重くの しかかります。

「 45 歳で採った卵子ですか ら、妊娠が難しいのは理解し ています。

妊娠できたとして も、高齢出産のリスクが高い のも十分心得ています。

それ でも、夫の血を受け継いだ子 どもが欲しいのです。

もちろ ん妊娠後も羊水検査などは受 けるつもりはありませんし、 万一何かしら障がいのある子 だとしても“私たち夫婦なら 大丈夫”と受け入れる覚悟も あります」と、キッパリ。

キヨミさんの願いはただひ とつ。

「子ども好きの夫を父 親にしてあげたい」、ただそ れだけ。

「子どもがいない今の二人だ けの生活も十分に幸せ。

だか ら、子どもは欲しいけれど、 養子を迎えるまでは考えてい ません。

私たちの性格からし て、可愛がることはできても、 叱ったりはできないだろうか ら」とも。

「もう、そんなに頑張らなく ていいよ」とご主人は言って くれますが、「私の気の済む まで、頑張ってみてもいい?」 と、キヨミさん。

“自分の年齢” に負けたくない!と、闘いを 続けます。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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