【Q&A】帝王切開後の着床の窓のズレ~井上善仁先生【医師監修】

みーさん(40歳)

移植しても着床さえできず、何が原因か分からなくて、これからどうしたらいいのか考えています。

ERA検査をした方がいいのかとも考えているのですが、通院している病院に聞いたら「5年前にも妊娠できているので、ズレはない」との回答でした。
5年前と今では、着床の窓にズレが生じる事はないのでしょうか?その間に帝王切開を2回しています。EMMA、ALICE検査も同時にした方がいいのか検討中です。

年齢も年齢なので、今ある胚を無駄にしたくなくて、少しでも妊娠率が上がるのであればと迷っています。

井上先生にお聞きしました。

【医師監修】井上 善仁 先生 昭和59年3月、九州大学医学部卒業。同年4月、九州大学医学部婦人科学産科学教室入局。平成20年4月、福岡大学病院准教授。平成28年7月に井上善レディースクリニックを開院。スタッフ一同が協力して良いクリニックを作っていき、一人でも多くの患者さんに満足していただけるよう努力している。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

①ミーさんは過去に帝王切開を2回経験されていますが、その影響で着床の窓にズレが生じる可能性はあるのでしょうか?

帝王切開で着床の窓が変化することはないと思います。ひとつ気になるのは帝王切開の創部に欠損があってそこに月経血が貯留する帝王切開瘢痕病がないかどうかです。それがあると着床が妨げられる可能性があり、超音波や子宮鏡で評価してみる必要があると思います。

②5年前に一度妊娠した経験があるため、主治医からはERA検査の必要性について否定的な見解が示されたようですが、これについて先生はどのように思われますか?

但し前回の妊娠からすでに5年が経過しており、かつその妊娠が自然妊娠であって、今回の移植がもしホルモン補充で行われているとすれば、着床の窓のズレが現時点ではある可能性は否定できません。ERAをやってみる価値はあると思います。

③ERA検査の実施により、みーさんの妊娠率を上げる可能性はありますか?また、EMMA検査やALICE検査も同時に行うことにより、妊娠率の向上が期待できますか?

上記の通りでERAで着床の窓のズレが見つかれば、移植時期を調整することで可能性を上げることは出来るかも知れません。またERAのみでなく、EMMAとALICEも実施して対応が必要かどうか見てみることも可能性を上昇させるかも知れません。

④みーさんの年齢を考慮した上で、現在保有している胚を最大限滑油するための最適な治療方法を教えてください。

他に免疫の検査としてTh1/Th2比の測定も意味があると思いますが、異常が見つかった場合に保険の範囲では対応が難しいことが懸念されます。治療が既に自費であれば検査してみる価値はあります。また着床不全の原因が本当に分からない場合は血小板由来の成長因子の子宮内注入(PFC-FDなど)を行う事、PGT-Aを行って正常な胚を移植することも妊娠の可能性を向上させるためには効果があるかと思いますが、これらはいずれも保険診療の範囲では困難です。そこがジレンマですね。

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