【Q&A】漢方・鍼灸・サプリの効果は?~林先生【医師監修】

りんさん(45歳)

高齢で不妊治療を開始し、漸く採卵→胚凍結を5個出来ました。
子宮筋腫(漿膜下筋腫)を切除し半年後に着床に向けて治療再開をします。
質問ですが、漢方、サプリ、鍼灸は意味が有るのでしょうか?何が正解か分からず、時間、費用だけ嵩むだけな気がします。何を基準に選択すべきか、トータルコーディネートをしてくれるクリニックではないので、悩みます。
現在→治療半年前後に治療以外で自分で何か出来ないか調べていて、漢方、鍼灸を追加しました。
漢方では、更に発酵大豆胚芽抽出物含有食品を着床前に服用したら良いのでは?と勧められました。
既にサプリ、漢方、鍼灸とやっており、一体何が良いのか?本当に意味が有るのか?しかし何かをしないと、、と思いながら正しい判断が分からず、無駄な事をしていないか悩んでいます。
クリニックで勧められたサプリだけで充分なのでしょうか?漢方、鍼灸、サプリに対する適切な考え方を教えて頂ければ助かります。
また真夏でも足湯は必要でしょうか?

ウィメンズクリニックふじみ野の林先生にお聞きしました。

【医師監修】ウィメンズクリニックふじみ野 林 直樹 先生
1983年、東京大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療 センター(川越市)などを経て、現職。「体外受精、顕微授精も高いクオリティで対応していますが、できる限り自然に近い不妊治療をご提供したいと考えています。 患者さんはそれぞれお悩みも違いますから、どんなこと でもまずご相談を。時にはご要望に沿えず、厳しいこと を申し上げるかもしれませんが、常に患者さんにとって ベストな治療法をご一緒に見出したいと思っています」。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

45歳の方で、筋腫切除後、凍結胚を合計5個保管中とのことですね。

採卵がなかなかできなかったとのことですが、レトロゾールでは効果が無く、ゴナールFを使用した高刺激法?で採卵し凍結胚を貯胚されたとのことでしょうか。AMHが1以下ということですが、月経周期が27日ということ、採卵2~3個ずつ獲得できたとすると、おそらくAMHは0.1未満ということではないと推測されます。

年齢からいうと採卵治療が急がれます。移植可能となる12月までの間にさらなる採卵の追加による貯胚も考慮されるのではないでしょうか。子宮筋腫の手術後ということですが着床環境は問題ないということでしょうか。

漢方、鍼灸、サプリ(DHEA、メラトニン含め)には採卵数を増やしたり、質をよくしたり、染色体を正常にすることの明確なエビデンスはありません。着床するかどうかは、ほぼ卵子、精子、受精卵の質そして着床環境(解明されていることは少ないです)が鍵を握っているのです。ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)が2023年発行した「Good practice recommendations on add-ons in reproductive medicine 生殖医療におけるアドオン関する良い診療の推奨」においても漢方、鍼灸やサプリメントは推奨されないと明確に記載されています。サプリメントで有効なのは葉酸(神経管損傷児を大幅に減らす)とビタミンD(エビデンスは強くはない)くらいと考えます。

足湯は経験症例がありませんので不十分なお答えとなりますことをお許しください。足から上がってくる静脈血は骨盤内で卵巣のすぐ隣を戻ってきます。卵巣を温めるということだと理解しています。温めるということでしたら、ウオーキングや体操など適度な運動することの方が心身とも健康を増進するということでは、よりメリットがあるように思います。これらのサプリや漢方、そして鍼灸により明らかに体調がよくなるのであればそれは健康増進という点ではメリットはあるかと思いますがいかがでしょうか。

失礼ながら、この年齢で成功するかどうかは採卵数(AMHにより規定される)、受精卵の数と、質(形態良好か、染色体が正常か)が大切です。合計5個の凍結胚というのは胚盤胞でしょうか。仮に44歳時の採卵でできた形態良好(3BB以上)胚盤胞が染色体正常であるのは10%程度で、残念ながら年々低下していくと報告されています。

しかし染色体正常胚盤胞1個移植での生児獲得率は年齢に関係なく50~60%です。つまり形態良好胚盤胞1個移植あたり5-6%(α=0.05~0.06)が生まれてくる計算となります。5個胚盤胞を順次移植していった場合、生児が得られるのは、1-(1-α)5で計算され23~27%となります。胚盤胞の形態が良好(3BB以上)でなかったり(良好胚盤胞の仮に1/2の着床率としましょう)、初期胚での凍結であったり(良好胚盤胞の仮に1/3としましょう)すると、生児獲得期待率はさらに割り引いて考えなければなりません。

移植をおこなってみて2回不成功が続いた場合(我が国のPGT-Aの規則による)、採卵のたびに1個ときに複数個の良好胚盤胞が得られる方であれば、染色体正常胚が得られるまで採卵しPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を実施することも一案です。PGT-Aは、採卵周期あたりの成功率を上昇させることはありませんが、無意味な胚移植を避けることができるため生児獲得への時間が短縮されるメリットがあります。繰り返しになりますが、良好胚盤胞が得られる方でなければPGT-Aは適応ではありません。

良好胚盤胞が今後得られにくい場合などは、初期胚/通常の胚盤胞での移植を繰り返しおこなってみましょう。場合によって複数胚の移植もあってよいと考えます。それでも妊娠に至らなければ、申し訳ないですがご自身の卵子での治療は難しく、卵子提供をお勧めします。 5年以上前の私共の経験でも40台の半ばから数十回の採卵と移植を繰り返すも流産1回のみで生児が得られず、(他国で)卵子提供によるPGT-A併用で正常染色体胚盤胞を1個初回移植で生児を得た50代の患者さんも経験しています。

繰り返しになりますが、体外受精治療の成功への近道は、染色体が正常の胚を適切な着床環境に移植することに尽きます。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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