ひと通りの検査が終わり、次はいよいよ治療がスタート。
不妊治療にはどんな方法があって、それぞれどれくらいの期間受けるの?
検査をしてもわからない原因不明の不妊もあります
おもな不妊原因にはどんなものがありますか。
俵先生●女性の場合は多囊胞性卵巣症候群や高プロラクチン血症、早期卵巣不全などにより排卵が不規則になったり、無排卵になる「排卵因子」、子宮内膜症やクラミジア・淋菌などの感染により卵管が癒着して詰まったり、細くなるため、精子や卵子、受精卵がうまく運ばれなくなる「卵管因子」、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症、双角子宮などの形態異常により受精卵が着床しにくくなったり、着床してもうまく育たない「子宮因子」などがあります。
一方、男性不妊の場合、その原因の8割は精子をうまくつくることができない「造精機能障害」といわれています。また、閉塞性無精子症などにより精子が運ばれなくなってしまう、射精障害や勃起障害など性機能に障害がある場合も妊娠が難しくなってしまいます。
これらの原因は検査により判明することがほとんどですが、検査をしてもわからない機能性不妊(原因不明の不妊症)の方も少なくありません。検査をして異常がないから受診をやめてしまうのではなく、その後、1つずつ治療を進めながら不妊の原因を探っていくことが大切だと思っています。
不妊治療のステップは大きく分けて3つ
一般的な治療の内容や流れを教えてください。
俵先生●不妊治療は大きく分けて3段階のステップで行います。
ステップ1は「タイミング療法」。妊娠しやすい時期に性交を行うように指導します。自然妊娠を希望されていて、不妊歴が短く、不妊の基本的な検査で異常がなければ、ほとんどの場合、この治療からスタートします。
ステップ2は「人工授精」。排卵のタイミングをみて、採取した精液から状態の良い精子を取り出して濃縮。子宮内に直接精子を注入する治療です。精子の数が少なかったり、動きが良くない、性交障害などがある場合に行います。
ステップ3は「生殖補助医療」。卵巣から卵子を採って、体外で精子と受精させ、得られた受精卵を子宮に戻す方法で、いわゆる体外受精と呼ばれている治療です。受精段階で顕微鏡を使い、人の手を介して行うものは顕微授精といって、精子の数が極端に少ない場合や精子の動きが良くない時に行われます。
生殖補助医療はステップ1、2を経ても妊娠に至らない、または妊娠は難しいという場合に行う、最終段階の治療といえるかもしれません。
治療計画は3カ月ごとに見直すのでご安心を
各治療、どのくらいの期間行ったらステップアップするのでしょうか。
俵先生●以前はタイミング療法6回、人工授精6回など、ステップアップの目安が示されていたこともありましたが、今はそのような考え方をしている施設はほとんどないのでは。
年齢や不妊歴、不妊原因など、条件は人それぞれ異なります。まだ年齢的に卵巣機能が良く時間的余裕がある方ならタイミング療法を6回続けられてもいいと思いますが、年齢が高く、自己タイミングを何年取られても妊娠しなかったら、タイミング療法を飛ばして次のステップから始めることもあります。
保険診療のスタートに伴い、治療計画書を立てることになりました。計画はだいたい3カ月ごとに見直すことになっているので、治療を進めながら結果を受けて変更していくことも可能です。ステップアップの期間や受ける治療は、ご夫婦の希望も伺いながら柔軟に変更できるのでご安心ください。