【Q&A】子どもの障害と検査について~久慈先生【医師監修】

Cさん (25歳)
これから結婚を考えています。彼の母方の祖父母が従兄弟同士で結婚していることもあり、彼の兄弟や従兄弟に障害をもって産まれてきている人が多いです。そのこともあり、子どもが障害をもって産まれる可能性が高いため、つくらない方向で話をすすめています。
でも、もし産める可能性があるのなら、と考えてしまうときもあります。このような場合、実際どのくらいの確率で障害をもって産まれてくるのか、妊娠したときにわかる範囲内の障害が早くてどのくらいでわかるものなのか、専門的な意見を聞きたいです。
障害があってもなくても、どんなかたちでも命には変わりないので、覚悟をもって産み育てるものだと考えています。
その上で不安な部分のことを知って参考にできればなと思います。

Noah ART Clinic 武蔵小杉の久慈先生に聞いてきました

【医師監修】Noah ART Clinic 武蔵小杉 統括医師 久慈直昭 先生 
慶應義塾大学医学部卒。東京医科大学産婦人科学教授を経て、2023年5月より、Noah ART Clinic 武蔵小杉の統括医師に。生殖医療専門医・指導医。臨床遺伝専門医。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

いとこ同士の結婚など、血縁の近い結婚(近親婚)では遺伝性疾患が出やすいと言われています。その理由は、子どもが潜性(劣性)の遺伝病になりやすいからです。

人間は両親のそれぞれから遺伝子を受けつぎますから、たとえば一つのタンパクに対して父方、母方それぞれからひとつずつ、2つの遺伝子を受け継いでもっています。ちょうどこれは、腎臓や卵巣が左右二つあるようなもので、片方の遺伝子が壊れてタンパクを作れなくても、もうひとつの遺伝子がこれを補うことができるのです。ところが、二つの遺伝子とも壊れていると、このタンパクを全く作ることができなくなって、病気になります。これを潜性の遺伝病(親に原因があるが、その原因が潜在的で、隠れているから)と呼んでいます。

二つの遺伝子のうち一つが壊れている人(保因者といいます)は、一般の集団ではそれほど多くありません。たまたま保因者同士が結婚すると子どもは1/4の確率で病気になりますが、たとえばこの病気の保因者が100人に一人の病気ならば、夫婦双方が保因者であるカップルは10000回に一回しか発生しません。ところが、たとえば祖母が保因者である場合、孫は1/4の確率で保因者となり、孫同士、つまりいとこ婚では1/16という高い確率で保因者同士の結婚となるのです。ただ、いとこ婚で遺伝病の危険が増すのは、その結婚で生まれてくるこどもだけです。たとえばいとこ婚の結果生まれた症状のない子どもが、血縁のない人と結婚した場合、その子どもが潜性の遺伝病になる可能性は高くなりません。

一方、ご家族に似た障害を持っている方が多い場合、近親婚以外の原因(たとえば顕性の遺伝疾患など)がある可能性があります。「臨床遺伝専門医」や「認定遺伝カウンセラー」は、このような心配をなさっている方に、どのような原因でその病気が家系に多いと考えられるのか、またもしお二人が結婚するとして、子どもに同じ症状が出てくる可能性がどの程度あるのかを説明する仕事をしています。全ての疾患ではありませんが、疾患によっては生まれてくる前に、羊水検査などで診断することもできるかもしれません。

若いうちは「子どもはいらない」と思っていても、年がたってから「やはりほしい」とご夫婦が思うようになることは珍しくありません。ですが夫婦が赤ちゃんを作ることができる時間は限られています。ほしいのになかなかできない、という年代に入る前に、できるだけ早く「臨床遺伝専門医」や「認定遺伝カウンセラー」のいる施設で相談しましょう。そこで原因に対するきちんとした説明を受けてから、子どもを作るか作らないかをお二人で考えることを、強くおすすめします。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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