転院か今のクリニックで採卵か

採れる卵子の数は多くても受精率が低く、胚の発育も不良です

ぶーちゃんさん(40歳)先月の採卵で9個採れて7個が受精。でも、その後発育不良のため凍結にまで進みませんでした。6月にも採卵していて、その時は14 個採れて9個が受精するも発育不良で凍結まで進まず、7月から10 月までサンビーマーをクリニックからレンタルしました。「朝晩使って卵子の質の改善をしましょう」というのが先生の提案です。サンビーマーと個人的に不妊鍼灸に通って10 月の採卵に臨んだのですが、やはりダメで年齢的なものかと感じています。転院したほうがいいのでしょうか?

これまでの治療データ

●検査・治療歴

出産歴あり。不妊治療期間は3~4年。子宮卵管造影検査では右側卵管に詰まりがあるとの結果。不育症検査では特に悪いところはなし。現在、体外受精を実施。

●精子データ

良好

●サプリメントの使用

葉酸やビタミン類のサプリ

おおのたウィメンズクリニック埼玉大宮 大野田 晋 先生 東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。東京慈恵会医科大学附属病院、獨協医科大学埼玉医療センター、みなとみらい夢クリニックなどの勤務を経て、おおのたウィメンズクリニック埼玉大宮を開院。結果を的確に分析し、できるだけ多くの卵子を採って確率を上げる攻めの治療で保険診療内での妊娠を目指す。

ドクターアドバイス

●採卵方法の再考が必要かも
●サンビーマーの効果は不明
●男性側も一度詳しい検査を

14個、9個と卵子の数は採れていますが、受精後は発育不良のため凍結まで進まないとのこと。原因はどのようなことが考えられますか?

大野田先生●数値は記されていませんが、卵巣の予備能や残りの卵胞数をみるAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値は良いといわれているそうですね。採卵をする時にどのような排卵誘発法をされたのかは不明ですが、卵子の数もしっかり採れています。しかし、その割に受精する数が少ないように思われます。また、受精しても胚の発育が不良とのこと。

こうしたことから、採卵が適した形で行われなかった可能性が考えられるでしょう。卵胞がきちんと成熟しない状態で採卵に進んでしまったのかもしれません。

どのような形で採卵すればよかったのでしょうか。

大野田先生●誘発のあと、排卵させる時のタイミングが重要だと思います。体外受精では採卵前、トリガーといって卵胞を成熟させる目的で注射や点鼻薬を使うのですが、卵胞がなかなか成熟しないケースではこれらを使う時間帯を少しずらしたり、本来の採卵決定の卵胞径より大きくなってから採る、つまりやや過熟ぎみ傾向で採ったりといった工夫が必要だと思います。

同じ排卵誘発法を続けて行っているということでしたら、次は方法を変えてみたり、トリガーを再考することで、良い結果が得られるケースもあると思います。

担当医の先生はサンビーマーを使って卵質改善することを提案されたようですが。また、個人的に不妊鍼灸に通われているそうです。

大野田先生●サンビーマーは遠赤外線を応用した医療機器ですね。遠赤外線で血流を良くして卵質の改善を目指すという目的で使用をすすめられたのだと思いますが、僕は使用したことがないのでその効果については何ともいえません。

不妊鍼灸については、ご本人の負担が大きくなければいいのではないかと思います。不妊専門の鍼灸を行っている先生は意識の高い方が多く、食生活や冷え予防など日常生活のことについても細やかなアドバイスをしていただけるようです。

サンビーマーや不妊鍼灸、アロマなどもそうですが、受けることでご本人が妊活に前向きになったり、心の支えになるのであれば、本来の治療にプラスして取り入れてもいいのではないでしょうか。

サプリメントもその一つですよね。ぶーちゃんさんは現在、葉酸やビタミン系のサプリメントを摂られているとのこと。当院では卵質の改善が期待できることをベースとしたサプリメントのほか、メラトニンや抗酸化目的のレスベラトロールなどをプラスでおすすめすることもあります。

患者さんによっては効果が見られる方もいますし、治療が行き詰まってしまった時、治療以外で何かできることがあるとご本人も頑張ろうという気持ちになります。どちらかというと、精神的な効果のほうが大きいと思いますね。

先生だったら、次はどのような治療を提案されますか。

大野田先生●まず排卵誘発法を検討すると思います。40歳というご年齢ですがAMHの値は良く、これまで卵子の数は採れているので高刺激法でいいのでは。受精卵の成長が止まることが多い人は確率を上げるために刺激を強めにしてできるだけ卵子の数を確保したほうが望ましいでしょう。

高刺激だと当院の場合、PPOS法(黄体ホルモンを用いた卵巣刺激法)がメインですが、年齢が高い方にはショート法を使うこともあります。低刺激も考えますが、1回に採れる卵子の数が少ないので採卵回数も増えてしまう。高刺激法で、トリガーや採卵時期を工夫していくという形をとると思います。

移植は新鮮胚移植や初期胚移植ではなく、胚盤胞の凍結胚移植を第一選択に。当院では保険診療内で妊娠を目指すと考えているので、40歳というご年齢と保険の回数制限も考慮しながら、採卵や移植のやり方をご提案していきます。

保険診療はどこでも同じ治療が受けられると思っている方も多いようですが、治療法の選択の仕方やさじ加減で結果は大きく異なってきます。漫然と同じことを繰り返しているクリニックであれば、転院を検討されてもいいのではないでしょうか。

男性側で何かすべきことはありますか。

大野田先生●胚の成長が止まってしまうのは女性側だけでなく、男性側の因子が関係していることもあります。見た目の精子は問題がなくても、よく調べると異常があることも。反復不成功の場合、当院では精子の詳しい検査をしたり、現状の精子からより良い精子を選択して顕微授精に臨んでいただくようにしています。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。