【Q&A】自然周期の移植について~重富先生【医師監修】

みーさん (39歳)
ホルモン補充周期にてERA検査を実施し、半日早いとのズレあり。
6回ホルモン補充周期で移植するも、化学流産3回、陰性3回。
今回始めて自然周期にチャレンジします。
ホルモン補充周期のERA検査の結果は考慮せず、排卵+5日での移植とのことだが問題ないでしょうか?
土曜午前中のLH18、卵胞18.2mm、夜にhcg注射。
月曜排卵予定にて移植計画をたてられましたが、日曜に排卵することはないでしょうか?
のびおりは木曜ぐらいからありました。

重富先生に聞いてみました。

【医師監修】ASKAレディースクリニック 副院長 重富洋志 先生 2003年、奈良県立医科大学卒業。星ヶ丘厚生年金病院、奈良県立医科大学で産婦人科医の経験を重ね、2017年よりASKAレディースクリニックの副院長として従事。患者様が納得して治療を進めてもらえるような診療がモットー。患者様の生活スタイルに合わせた診療を行い、土日祝だけでなく、夜は20時まで受付時間を設けている。生殖医療専門医、日本産科婦人科学会専門医。趣味はマラソン。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

胚盤胞の排卵周期(自然周期)での移植日は5日後です。ERA検査の結果は、ホルモン補充環境での指標になるため適応できません。
土曜日の午前に卵胞径が18mmということですので、日曜日に排卵する可能性は低いと思われます。しかし、絶対というわけではありません。この点が排卵周期での移植が難しところでもあります。
のびおりについては卵胞発育に伴い生じるものなので、木曜日から自覚されていても問題はありません。

1 ホルモン補充周期の移植で化学流産と陰性を繰り返しています。原因としてどのようなことが考えられますか?

一般的に、移植不成功や生化学妊娠の原因として受精卵の問題が多いとされています。着床前診断のデータでは、39歳で得られた胚盤胞の7割近くが染色体異常です。また、子宮内膜症では同じ年齢の方に比べて卵子の質が低下するという報告もあります。こういった背景が患者様の治療結果に影響を及ぼしている可能性があります。

受精卵以外の原因として、着床側の因子が考えられます(着床障害)。しかし、着床障害に対するエビデンスレベルが高い検査、治療方法はまだありません。患者様が受けられたERA検査は比較的エビデンスがあるため先進医療として認められています。他の検査は自費検査であり、また研究段階です。

そのため、現時点では移植を繰り返す治療がメインとなります。

2 排卵したと思われる日から生理までの期間が短いようですが「排卵+5日での移植」は問題ないでしょうか?

胚盤胞の移植は自然周期では5日目に行います。排卵日から月経まで期間が短いとのことですので、黄体機能不全があるかもしれません。自然周期でも排卵後に黄体ホルモンを投与されることがあるため主治医とご相談ください。

黄体期が短くても排卵から5日目の移植で問題ありません。

3 みーさんの場合、ホルモン補充周期よりも自然周期のほうが妊娠の確率が上がると思われますか?

申し訳ございませんが、どちらの方が妊娠の確率が上がるかはわかりません。

自然周期に比べてホルモン補充周期の方が妊娠率が高いという報告があります。そのため多くの施設で移植方法としてホルモン補充周期が選択されています。しかし、臨床ではホルモン補充周期でなかなか妊娠に至らない患者様が、自然周期で妊娠されることも経験します。

ホルモン補充周期は薬剤や投与方法など様々な改良が重ねられていますが、自然のホルモン環境を完全に再現できているわけではありません。患者様によっては、なんらかの因子がホルモン補充周期では不足しており、自然周期の方がよい可能性があります。そのため、ホルモン補充周期で結果が伴わない患者様に自然周期を提案することがあります。その際は、ERA検査の結果は適応できません。排卵後、5日目の移植になります。

患者様へ

不妊症の7割は、原因不明です。世界中で様々な研究が行われていますが、確実な検査法、治療法がないのが現状です。そのため不妊治療は、患者様にとって暗闇の中を歩いている状態とも表現されます。医療の限界であり、患者様にご負担をおかけしています。

お二人の治療においては、化学流産が続き残念な結果ですが、⼀⽅で、妊娠できるということでもあります。まずは、主治医の先⽣とともに現在の治療を継続されてはいかがでしょうか。

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