そのつど戦略を変え、2年後に妊娠できました。

うまくいかず落ち込んでもすぐに気持ちを切り替え情報収集保険適用の範囲で何ができるかを探り、そのつど戦略を変え、2年後に妊娠できました。
2年間で3回、採卵を行い、受精卵のグレードが全体的に低かったものの3回目の移植で妊娠。ネットの情報を読み、そのつど保険の範囲内でやれることを考え、自分なりに戦略を変えながら治療を進めたのが功を奏したようです。

治療開始から半年で体外受精にステップアップ

「つい3日前、胎動を感じたんです。ようやく実感がわいてきたところです」。取材当日は妊娠6カ月目に入る頃でした。おだやかな笑顔でH子さん(37歳)はそう話してくれました。

H子さんがNさん(40歳)と出会ったのは2021年4月。初対面で「この人なら大丈夫」とお互いに惹かれ合い、11月に入籍。二人とも、早く子どもが欲しかったのでおつき合いの当初から妊活を始めたそうです。

「ただ、私がもともと生理不順でピルを6年ほど服用していたのですが、やめてから4回目の生理がこなくて。クリニックで検査を受けたらAMHが18.16ng/mlとかなり高く、PCOSで無排卵だとわかったんです。入籍後、まずはクロミッドRで排卵誘発しながらタイミング法を試すことになりました」

ところが卵巣が腫れてしまってうまくいきませんでした。結局、半年の間に1回しか試せなかったので、H子さんは埒があかないと思い、体外受精へステップアップすることにしました。

なかなか受精しないのは夫との相性が悪い?

1回目の採卵はクロミッドR+HMG注射で卵巣刺激を行いました。20個以上の卵胞が見えたものの採卵できたのは2個でした。

「採れた卵子2個で体外受精をしようとしたのですが、受精障害なのかそれもかなわず。だから凍結胚もゼロ。夫の精液検査では何も問題なかっただけに、夫との相性が悪いのかと思い悩みました」

仕事で長期出張があったので2カ月ほど休んで再び治療開始。H子さんはドクターに「次は顕微授精で」とお願いしました。

2回目の採卵はフェマーラRでの刺激に変え、採れた卵子は1個。5 日目4 A A の胚盤胞が凍結でき、自然周期で5AAになったものを移植しましたが陰性でした。

3回目の採卵ではクロミッドR+HMG注射の刺激法に戻しました。局所麻酔で激痛に苦しみ、軽いOHSSになりながらも何とか14個採卵でき、顕微授精で7個凍結できました。

「その中にはAのつく胚が一つもなくて評価はイマイチだなと感じていたのですが、ドクターは全体的に成長が遅いだけだと。その言葉に少し希望をもちました」

2回目の移植はホルモン補充周期に変えて5日目4BBが5BBとなったものを移植しました。

「結果はHCG1.5mIU/mlという何とも微妙な数値。でも、ドクターが『まったくの陰性だと0.2未満だけど、1.5ということは少し着床したことになる。前回より少し前進できたね』と言ってくれて。よし、あと一歩!何か改善できることをやってから次に臨もうと決めました」

そのため、H子さんは2周期休み、これまで受けてこなかった子宮鏡検査とTRIO検査を受けることに。TRIO検査は都の先進医療の補助金を利用しました。

「子宮鏡検査では子宮口近くに7~8mmほどのポリープがあったのでその場で切除。TRIO検査で着床の窓のずれはなかったのですが、子宮内が無菌状態だとわかったので移植10日前からラクトフローラフォルテ(腟錠)を服用しました。この効果がかなり大きかったようです!」

3回目の移植はホルモン補充周期に4CBの凍結胚で実施。10日後に陽性反応が出ました。

「不思議なのですが、予感めいたものを体に感じながら、結果を聞きに行ったところ、ドクターが『妊娠検査薬で確かめたら反応が出ますよ』と。夫と二人でああ、ようやくスタートラインに立てたねと喜び合いました」

夫がどんな父親の顔を見せてくれるか楽しみ

H子さんもうまくいかなくて落ち込み、何度も涙した日もあったそう。ただ、あまりつらさを引きずらず、気持ちを切り替えて自分でいろいろ調べ、次に何をするかを考え、治療を進めていました。そこが3回目の移植で妊娠できた要因かもしれません。

「次にどうしたらいいかは妊活ブログやネットで情報を得て、自分なりに戦略を立てました。そのつど少しずつやり方を変えたのがよかったかもしれないです」

また、保険診療の中で妊娠できたことが自分にとっては意味があったと言います。

「2 回目の採卵のタイミングで保険適用が始まったんです。この頃は保険の回数制限のなか、治療をどう進めていくかと戦略をずっと考えていました。特に3 回目の採卵では凍結胚がB とC ばかりだったのでどれかを廃棄すべきじゃないかとか、2 個移植したほうがいいんじゃないかとすごく悩みました」

そんななか、心強かったのは常に不妊治療の伴走者として隣にいてくれたNさんの存在です。

「すごく協力的でした。採卵日は午前中病院へ同行して、午後は在宅勤務にしてくれたり、クリニックでもらった資料も熱心に目を通してくれました」。ちなみに治療費は二人の子どものことだからと折半にしているそうです。

「知り合ってすぐ結婚したので治療の2年間はつらいことも多かったですが、二人にとっては互いをよく知る、“いい時間”になった気もします。子どもが生まれてくることも嬉しいですが、夫がどんな父親の顔を見せてくれるかも私は楽しみなんです」

実は今年1月から土地を探し始め、今は買った土地にマイホームを建設中とのこと。

「最初は不妊治療だけで頭がいっぱいになるとつらいから、気分転換とこの先の楽しみを作っておこうということでマイホーム計画を立て、実現したわけです。完成は12月で、出産予定日は11月なので、新居では親子3人の暮らしから始められそうです」

H 子さんの「ジネコ」活用方法

ジネコの「Her Story」の体験談がやはり大変参考になりました。「この人の場合は」などケーススタディごとにドクターがQ&Aスタイルで答えている記事も読みやすかったです。「40 代の人は」「採卵がうまくいかない人は」など、カテゴリー別に参考になることがまとめられているのもよかったです。

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