【体験談】あとで後悔したくない

男性不妊を乗り越え、可愛い双子の親に 夫婦二人の生活も楽しいけれど 今、何もせずに年齢を重ねて あとで後悔したくないから。

子どもは欲しい、でも、是が非でもというわけではない…。

こんな中途半端な気持ちで治療に挑む資格があるのか。

自問自答しながらも、とにかく一歩踏み出したから 家族四人の笑顔が揃う、幸せな今があります。

将来の自分たちのために 今、できることを

それぞれ仕事に趣味にと、夫婦二人の暮らしを楽しんできた浩二さん( 39 歳)とミキさん ( 37 歳・ともに仮名)ご夫妻。 子どものいる友人たちの家庭を見ていると、楽しそうだな、うちも子どもが欲しいな、という思いはあったそうです。とはいえ、絶対何としても子どもをもちたい!とまでの熱烈な気持ちはない、というのが正直なところ。二人だけの生活に特に不満はありませんでした。
 
そんなお二人が不妊治療を考え出したのは、結婚して 7年が経ち、ミキさんに高齢出産といわれる年齢が迫ってきた頃。たまたま「若い頃はなんとも思わなかったけれど、40 歳を過ぎたら子どもが欲しくてたまらなくなった」という方の話が耳に入ってきたことから、「もしあとで自分たちも子どもが欲しくなった時、 産めない年齢になっていたら後悔するかも」との思いがよぎり、夫婦で沿線の不妊治療専門クリニック主催の説明会に参加してみたそうです。
 
その後勧められて受診した男性不妊専門クリニックで、 浩二さんの精索静脈瘤が判明。乏精子症との診断を受けました。
 
精索静脈瘤は決して珍しくなく、不妊原因としてはごくありふれたものです。ですが男性不妊に対する知識不足や男性側の協力体制の不備から検査を受ける機会をもたないまま見逃されてしまうケースがとても多いのだそう。この点お二人にとって、浩二さんが自身の検査や治療にも積極的だったことは大きな幸いでした。

「男性不妊は決して珍しいことではないと聞いたので、男性側も積極的に受診して、限りある時間を大切にしたほうがいいと思ったんです」と浩二さん。

常に混み合うクリニックで 気分が落ち込むことも

検査後、本格的に不妊治療に挑むことを決めたお二人。 検査結果を考慮して、まずは人工授精に取り組むことにしました。
 
実際に治療を開始すると、負担はどうしても女性であるミキさんに偏ってきます。クリニックにも一人で行くことが多かったそうなのですが、通院を重ねるうち、ミキさんには気持ちの揺れが訪れました。
 
クリニックはいつも予約がいっぱい。なのに「できれば子どもは欲しいけれど、もしできないならそれでもいいかな」と安易に構えて、子どもを授かりたい!という絶対的な決意に欠けている自分が、この場所にいてもいいものか…。より深い思いで全身全霊をかけて治療に挑む人たちにとって、自分が邪魔な存在のように感じることすらあったそうです。
 
また、不妊治療のゴールがどこにあるかわからないことも、ミキさんの精神的な負担になりました。これだけの時間とお金をかければ確実に妊娠するという保証もなければ、やめるタイミングがハッキリ決まっているわけでもない。通院しながらも迷い、葛藤する日々でした。

ついに妊娠、しかも双子 心配も、喜びも二倍!

そんななか、お二人の治療は次の段階へ。体外受精を見据えて採卵を行ったところ、思いがけず 13 個という多くの卵子の確保に成功。半分ずつ、体外受精と顕微授精に振り分けることにしました。その後 無事に育った受精卵を、毎月一つずつ戻すことに。最初の2 回は妊娠に至らず、次の 2 回は着床したものの残念ながら初期流産。期待が高まっていただけに、ご夫妻にとって心が重い日々が続きました。
 
そして迎えた 5 回目、クリニックからの提案を受け、成功率を上げるために受精卵を2個一度に戻してみることに。すると、喜ばしいことに、両方の受精卵がともにしっかり着床。そのまま順調に経過し、無事、双子の妊娠が確認できました。
 
多胎妊娠はリスクが高いため、妊娠期間中は心配の連続だったそう。ですが無事に生まれてきた二人の可愛い女の子は、お二人に二倍の喜びを与えてくれました。

「一人でも大変だと聞くのに、いっぺんに二人も自分たちに育てられるのか。妊娠してからは正直、不安だらけでした。実際、出産してからずっと娘たちの世話で自分の睡眠時間すらろくに確保できず、めまぐるしく日々が過ぎて今日に至っています。

 
でも、疲れを癒やしてくれるのも、我が子の可愛い姿。それに、親は大変ですが、子どもたち自身にとっては、姉妹の存在があることはのちのち心強いことと思います。自分の年齢を考えると次の出産は積極的には考えられなかったので…」と、ミキさん。

頑張りすぎない生活で ストレスを発散!

たまにお休みを挟みながら 1年半にわたった治療期間を、お二人は「思い悩むことも多くありましたが、自分たちにとって、今の幸せを得るための準備期間だったと思います」と振り返ります。
 
ミキさんは治療中、過度に体を労りすぎず、自由な生活を満喫することで、心のバランスを取っていたそうです。「“治療のためにいろいろ犠牲にしてるのに”とマイナス思考に陥るのが嫌だったので、やりたいことは我慢せず、友人と遅くまで出かけたり気ままに過ごしていました。それでうまくストレスが発散できたのかもしれません」
 
また、治療とパートのお仕事との両立に悩んだこともあったそうですが、周りの「治療だけの生活になると思いつめるから ほかのこともしたほうがいいよ」という助言もあり、辞職は踏みとどまったそうです。

「やはり辞めなくてよかったです。時間のやりくりは大変でしたが、仕事はいい気持ちの切り替えになりました」
 
一方、浩二さんは不妊治療の経験者として「男性に不妊原因があるケースも多いという事実が広く知られるようになってほしい」と話します。

「珍しいことではないので、検査や治療に関して気後れしなくても大丈夫。ただ、実際に治療に入ると男性ができることは少ないので、夫側は徹底して気配りをすることが必要だ と痛感しました」と浩二さん。
 
また、不妊治療、特に男性不妊の専門医は都市部に偏っているので、地方では効率よく通院できないという問題点についても指摘されました。

「不妊治療は長期の取り組みになるので、専門医がたまたま近くにあった私たちはとても恵まれていました。通院できる環境にある方は、メリットを生かして今のうちに始めてみることをおすすめします」

 

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。