【Q&A】採卵したが、良い卵子が採れない~中島先生【医師監修】

さとっぽさん(38歳)現在体外受精2回目です。アンタゴニスト法により卵巣刺激しエコーでは6個卵子が見れたものの、3個採卵できいずれも不良だった為受精までする事ができませんでした。主治医から私の年齢で卵子6個とも不良なのは稀であり卵質が悪いと言われました。今後の治療をどうしようか迷っています。主治医から卵巣刺激法を変えて、いい卵子が採れるまで保険診療分は挑戦してみたらと言われましたが、年齢やAMH の低さ等を考えてあまり前向きな気持ちになれません。今後の生活習慣改善で卵質が良くなる事はあるのでしょうか?ちなみに昨年の体外受精1回目の時は、卵子6個採れたのち3個受精し、胚盤胞4BB移植→初期胚2個同時移植しましたが、2回とも陰性でした。
【医師監修】空の森KYUSHU 中島 章 先生 鹿児島大学医学部卒業。久留米大学病院産婦人科、国立成育医療センター周産期診療部不妊診療科(現・国立成育医療研究センター)などを経て、空の森CLINIC(沖縄県)立ち上げより参加。2022 年4 月、地元久留米市に空の森KYUSHU 開院、院長就任。サッカー観戦が趣味で、特にアビスパ福岡を応援しているそう。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

・38歳、採卵数3個、全てが卵質不良で受精しなかったそうです。原因はどんなことが考えられますか? 

卵質不良で受精しなかったとのことですが、体外受精を行って受精しなかった場合、採卵された時点で卵子がまだ未熟だった可能性が高いと考えます。もし顕微授精を行っても未受精だった場合は、卵質の低下により顕微授精の機械的な刺激が卵子の変性に繋がった可能性や、一見成熟しているように見えても十分な減数分裂が完了していない未熟性によるものなどが考えられます。まれに顕微授精をしてもかなり受精率の悪い受精障害も存在しますが、これまでの妊娠歴や治療歴などからは、それは考えにくいです。

この方の印象としては、卵巣刺激に用いた注射の投与量が足りなかったことをまず考えた方がよいのではないか?と思います。これにより全体的に卵子の成熟不良がおきていると考えられます。

・卵巣刺激を工夫することで、採卵時の未熟卵や変性卵、空胞などを減らすことができるのでしょうか? 

おそらく卵巣刺激が適切に行われていなかった可能性があります。保険診療の可能な範囲で、卵巣刺激の経過中のホルモン値をしっかりとモニタリングしながら、適切なタイミングでHCGやGnRHアゴニストでのトリガー(卵成熟)を行う必要があります。成熟度が悪い場合にはHCGとGnRHアゴニストを同時に使用してトリガーする方法もよいかもしれません。

・アンタゴニストで採卵成績が良くない場合、先生であればどのような卵巣刺激を勧められますか? 

卵巣予備能が低くなってしまい、基礎のFSH濃度が高い場合には卵質が低下している可能性がるので注射を開始する前にエストロゲン製剤やLEP製剤などで少し調整してから刺激を開始する事も考慮するとよいと思います。アンタゴニスト法が悪いと決めるよりは、適正な量のFSHで刺激できていたのか?について考えてみる必要があるかもしれません。体重や体脂肪(皮下脂肪)のつき方などによっては、思った以上に血中FSH濃度は低い可能性があり、反応不良により卵の成熟不良を起こしていた可能性もあります。また、一方でFSHによる刺激を強めに使い続けると、P4が上昇し、卵質も低下してくる可能性もありますので、モニタリングには細かい配慮が必要です。アンタゴニスト法はこの辺りの十分なモニタリングができないと、症例によっては思ったような成績が出ないこともあります。AMH:1.22ng/mlからはshort法に切り替えてもいいかもしれません。

・日常生活で卵子の質が良くなることはあるのでしょうか?自分でできることがあれば教えてください。

35歳を超えてきたらアンチエイジングサプリメント(ビタミンCやビタミンEなど)の摂取を開始してもよいと考えています。

食事においては一口一口、よく噛んで(30回は噛みましょう)、過剰に食べすぎず、また日常的にしっかりと水分をとっていくようにします。

毎日、タンパク質や良好な脂質を十分に摂取し、彩り良く食物繊維を取り入れ、糖質に関しては急激な血糖値上昇を招くような食べ方を慎むことも必要です。

朝食をしっかり摂り、朝のうちに少し日光を浴びて意識的に体を動かし、夜は早めに休んで十分な休養をとって体を休ませる事は、不妊治療を継続的に行う上でのメンタルの安定から、さらには卵質改善にもつながると思っています。

オフにはリラックスして過ごせる時間を作り、日々健康を感じられると、自ずと妊娠力はアップしてきます。もちろんこれらを夫婦で行う事で、精子の質の向上にもつながると思います。

(余談ですが、パートナーにも、週に2~3回程度の射精頻度を持っていただく事で、受精卵の質の改善にもつながる可能性があります。)

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。