クロミッド®を使っても卵胞が大きくならず排卵に至りません
多囊胞性卵巣、潜在性高プロラクチン血症と診断されたようですが。
伊藤先生● もこさんはもともと生理周期が不規則ということですね。3周期後D34のホルモン負荷テストでは、LHの数値が投与前・30分後・60分後で、10・7、233・9、237・0、FSHが4.9、17・5、21・8。これらの条件に加え、画像で小さな卵胞がたくさん認められたのであれば多囊胞性卵巣症候群の診断基準に当てはまります。高プロラクチン血症に関しては潜在性ということ。これに関しては大きな不安材料はない気がします。
また、閉経するのではないかと心配されていますが、FSHは正常値なので早発閉経の可能性はないでしょう。不安を払拭するためにも、残りの卵胞数を知る目安にもなるAMH(抗ミュラー管ホルモン)の検査を受けてみてはどうでしょうか。多囊胞性卵巣症候群だと数値が高くなるので、その診断材料の一つにもなると思います。
クロミッドRがなかなか効かない場合、どうしたらいいのでしょう。
伊藤先生●このままクロミッドRを使い続ける選択をするのであれば、さらにメトホルミンを併用してみては? これは抗糖尿病薬ですが、多囊胞性卵巣症候群の方が使うと排卵の状態が改善されることがあります。
自費となってしまいますが、クロミッドRの量をもう少し増やすというやり方も。1日2錠でだめでも、3錠服用で排卵が起こってくる方があります。
それでも効果がない場合は?
伊藤先生●クロミッドRで反応しない方の場合、次の段階としてフェマーラRという薬に替えるという手もあります。これは保険適用で使える薬剤。当院のケースで見てみると、多囊胞性卵巣症候群の方はクロミッドRよりフェマーラRを使ったほうが排卵しやすい傾向があります。まだ試されていないようでしたら、一度トライしてみてもいいと思います。
それでも排卵しなかったら、最終段階としてFSHの注射という選択肢もあります。経口薬に比べ注射は高刺激なので、ほとんどの方は卵胞が育ち、排卵に至ることができると思います。
ただ刺激が強い分、副作用も心配されます。多囊胞性卵巣症候群の方は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こしやすいので、注射の場合は注意深く診ていくことが必要になってくるでしょう。
このように、もこさんのようなケースでもまだ治療の選択肢はいくつかあるので、段階を踏んで前向きに治療を進めていっていただきたいと思います。