5年前から受精卵が凍結できるような結果になりません

相談者 : エリコさん(39歳)夫42 歳・妻39 歳、不妊治療歴5年です。AMH 値0.8ng/ml、誘発方法は低刺激、男性不妊(治療開始当初に精索静脈瘤手術済み)もあり顕微授精です。採卵は13 回、5年前から受精卵が凍結できるような結果になりません。具体的にはダイレクト分割や3日目の分割停止などで、治療開始から同じ結果です。数回、分割胚移植もしましたが着床していません。夫婦でサプリや食生活に気をつけていますが、5年前とまったく変わらない状況で行き詰まっています。
神奈川レディースクリニック 小林 淳一 先生 慶應義塾大学医学部卒業。1984 年より習慣流産の研究と診療に携わり、1989 年より済生会神奈川県病院においてIVFを不妊症・不育症の診療に導入。その後、新横浜母と子の病院の不妊・不育・IVFセンター長に就任。2003 年、神奈川レディースクリニックを開院する。患者さまの個々のペースに合わせた無理のない医療を目指す。

5年前から凍結できる受精卵を得ることができていないそうですが、原因はどこにあるのでしょうか。

小林先生●女性側、男性側、どちらにも原因がある可能性が考えられます。一度ご夫婦の染色体を調べたほうがいいかもしれません。ただ検査では異常が出なくても、体質的に胚質が悪いという方もいらっしゃいます。

エリコさんはダイレクト分割や3日目で分割が止まってしまうとのこと。ダイレクト分割は2細胞→4細胞→8細胞という通常の分割ではなく、1細胞→3細胞、2細胞→5細胞というように変則的な形で分割するケースです。多くの場合、このような分割をした受精卵は胚盤胞に到達しなかったり、胚盤胞になったとしても妊娠に至りません。

もともと男性不妊があり、ご主人はすでに精索静脈瘤の手術を受けたそうですね。この処置をすると精子のDNAの損傷率が下がってくるのですが、手術をして半年ほど経つと効果は変わらなくなります。

今後どのような治療方針を立てていけばいいですか。

小林先生●3日目あたりの胚が途中で分割が止まってしまうことが多いようですが、できれば胚盤胞になるのを待って移植していただきたいです。

エリコさんはAMH値が0.8ng/mlと低いので、現状通り低刺激で無理なく4、5個卵子を採っていくことを目指しましょう。辛抱強く採卵を続けて、良い卵子を待つしかないと思います。

また、男性不妊となると顕微授精はIMSI(イムジー)で。通常よりも高倍率の顕微鏡を用いることで精子の形態をより詳しく観察することができます。

サプリメントは現在、葉酸とビタミンD、コエンザイムQ10を摂っていらっしゃるようですが、当院では途中で胚の分割が止まってしまう人にはレスベラトロールをおすすめしています。

これはコエンザイムQ10と同様に抗酸化効果が期待されるものですが、ほかの成分に比べて抗酸化力が高いといわれています。卵子への酸化ストレスを取り除くために、このようなサプリメントをプラスしてもいいでしょう。ご主人も服用されるといいです。

保険診療でトライされている場合は移植の回数に制限があります。中途半端な状態の胚を移植して回数を消費してしまうのではなく、やはり胚盤胞になるのを待ってから移植を。そのほうがより妊娠に近づけますし、経済的にも負担がかからないと思います。

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