生理不順と卵子の質。
良好な卵子を採るためカウフマン療法をすべき？40 代でAMH が高め。1 日でも若いうちにたくさん採卵したいのに、生理不順などで良好な採卵ができず焦る日々。このまま採卵を続けるか、まず先に子宮環境を整えたほうがよいのか。治療方針の岐路に立つ相談者のお悩みに厚仁病院の松山先生が答えてくださいました。
ドクターアドバイス
●カウフマン療法だけに頼らずに。
●生理不順の根本原因を探るべき。
●ホルモンや子宮環境の検査も検討を。
脳下垂体の問題もさらなるホルモン検査を
カウフマン療法とはどのような症状に対して行う治療法でしょうか。
松山先生●カウフマン療法とは、正常の月経周期や女性ホルモン環境を人工的に作り出すホルモン療法です。まずはエストロゲン製剤を数日間投与した後、プロゲスチン製剤も併用して投与します。その後一度、投与を止め、休薬時に月経を起こさせるというものです。仕組みとしては、投薬中に下垂体機能が抑制され、薬を中止することで視床下部から下垂体の機能が活性化して、卵胞発育とそれに引き続いて排卵が誘発されるというもので、それによるリバウンド現象によって、その後の自然排卵周期が期待されます。
もし対象となる方に、肥満傾向があったり、摂食障害や過激なダイエットによる体重減少、激しい運動や過度のストレスなどがある場合、視床下部から下垂体への司令がうまく働かないことがあるため、カウフマン療法を試す価値はあると思います。しかし、はずみをつけて生理を起こさせるだけなので、１〜２度試して改善されないようなら、別の治療法を検討したほうがいいと思います。また、うまく生理が起こったとしても数カ月後にまた生理不順になった場合は、根本的にその原因を探る必要があると思います。
カウフマン療法で改善しない場合、ほかにどのような治療法が考えられますか。
松山先生●カウフマン療法は視床下部から下の司令系統に影響を与えますが、それで効果が得られない場合は、視床下部や脳下垂体からの司令系統に問題がある可能性も検討したほうがよいでしょう。
また年齢の割にＡＭＨが高い点や生理不順などを考えると、多囊胞性卵巣症候群の可能性もあるのではないでしょうか。ほかにも、にきびや肌荒れ、肥満などの自覚症状がある場合も多囊胞性卵巣症候群の可能性があります。
ちなみに身長と体重の情報を見ると糖尿病予備軍の可能性も考えられますので、検査をおすすめします。不妊治療には関係なさそうに思えますが、当院の患者さまのなかにも不妊治療がきっかけで糖尿病が発見され、その治療を行いつつ、不妊治療を行っている方もいます。
ストレスは大敵有酸素運動がおすすめ
出血もあるようですが、年齢を考えると採卵を続けるべきでしょうか。
松山先生●すでに子宮体がんなどの検査をされているとは思いますが、それらの病気でない場合も出血があると採卵はできたとしても移植はできませんから、子宮内環境を整えることも大切なことと思います。
年齢を考えると焦る気持ちも分かりますが、次の周期ではホルモンの検査を行い、脳下垂体からの司令系統のどこに問題があるかを探ることをおすすめします。その結果によって、治療法は変わってきます。また、多囊胞性卵巣症候群の可能性も示唆しましたが、もしそうだった場合、その事を踏まえた排卵誘発を行うといった治療法も選択肢になると思います。
自身でできる改善方法はありますか。
松山先生●すでにサプリメントや漢方薬を服用するなど、よい卵子が採れるようすごく気をつけられていますね。あえて言うなら、日頃の生活でストレスを溜め込まないこと。ストレスは私たちの体に大きな影響を与えていて、生理不順や多囊胞性卵巣症候群だけでなく子宮筋腫などのさまざまな病気の原因につながります。
おすすめは、有酸素運動です。ウォーキングなどの有酸素運動はストレスによって発生する活性酸素を除去するといわれ、肥満解消にもつながります。散歩の習慣を毎日の生活に取り入れるとよいと思います。
