体外受精からタイミング法に替える時の注意点は?

体外受精からタイミング法に切り替える場合、気をつけることは?

不妊治療を続けるご夫婦のなかには、さまざまな理由から自分たちの意志で体外受精からタイミング法に治療方針を切り替えるケースもあるようです。治療をうまく移行するために気をつけることとは?

田村秀子婦人科医院の田中紀子先生にお聞きしました。

田村秀子婦人科医院 田中 紀子 先生 京都府立医科大学医学部大学院修了。医学博士。アメリカ留学、扇町レディースクリニック勤務を経て、現在、田村秀子婦人科医院副院長。

ドクターズアドバイス

  • クロミッドⓇ以外の排卵誘発法を試してみる。
  • 鍼やレーザー、サプリで卵巣を活性化。
  • 治療を一時休んで自然な周期を取り戻す。

おもちさん(43 歳)からの質問  体外受精を始めて5回目ですが、金銭的な理由で最後の治療になり   ます。もしも今回うまくいかなかったら、次はタイミング法にチャ レンジしようと思いますが、気をつけることはありますか?クロミッドやピルを5カ月間飲み続けていて、月経量も少なくなっています。自分の体のサイクルがわからなくなっているなかでの、  タイミング法の進め方や注意点を伺いたいです。これまでの治療では、胚盤胞までたどり着けません。卵胞も毎回2個が限界です。刺激法が合っていないのでしょうか?

 

連続した治療は、卵巣機能の低下や 卵子の質や胚の成長に影響することも

おもちさんは現在アメリカで治療をされていますが、採卵数が少なく、胚盤胞までたどり着けないそうです。排卵誘発法が合っていないのでしょうか

田中先生● A R T の卵巣刺激方法には、主に注射を中心とした通常の標準的な卵巣刺激と、自然周期やクロミッドⓇ(クロミフェン)などを使った低刺激の方法があります。日本でも卵巣機能が低下している方を中心に低刺激法が行われています。

おもちさんはクロミフェンを使った低刺激法で毎回採卵されていますが、連続的に治療を続けていることが卵巣機能や胚の質の低下につながっていることも考えられます。

生理中の F S H 値や卵巣内の小さな卵胞数(胞状卵胞数: A F C )は生理周期ごとに変動しているので、胞状卵胞が十分に育っていない状態で次の治  療を始めてしまうと、排卵誘発に対する卵巣の反応が悪くなり採卵数も少なくなるだけでなく、卵子の質や胚の成長にも影響します。

A F C や F S H を参考に、低刺激法だけではな く、通常の卵巣刺激法に変えてみると採卵数の増加    や胚の発育も改善されることも期待できます。

年齢が高い方にはレトロゾールを卵巣の状態で刺激の方法を変えてみては

 どのような排卵誘発法がおすすめでしょうか?

田中先生●一般的に採卵数が1〜3個程度の方のAMH値(抗ミュラー管ホルモン)は1 ngml 未満のことが多いのですが、おもちさんは41 歳の時に2.23 ng /mlとあり、わりと高めだと思います。

AMH値は年齢とともに低下する傾向がありますが、43 歳になってもAMH値や A F C が良ければ、レトロゾールという飲み薬をメインにしながら、生理中から注射を連続投与する通常刺激法にアンタゴニストを組み合わせることで、採卵数を増やせる可能性はあります。レトロゾールはクロミフェンよりも子宮内膜への影響が少なく、着床環境や採卵数、卵子の質の改善なども期待でき、年齢が高い方に適したお薬だと思います。排卵誘発法を変えることで、採卵数も増え胚盤胞になる可能性もあります。

そのほか、鍼やレーザー治療で子宮や卵巣の血流 改善や細胞の活性化を促したり、抗酸化作用が期待できるコエンザイムQ10やLカルニチンやレスベラトロール などのサプリメントの服用を治療と並行するなど、卵巣や卵子のアンチエイジング対策を行うのもおすすめです。

治療を休みピルやカウフマン療法などで卵巣の状態を整えることも

 体外受精からタイミング法に変えることを検討されています。治療にうまく移行するために気をつけることはありますか?

田中先生●おもちさんの治療歴からは焦りのような気持ちが感じられます。精神的な負担やストレスも大きいのではないでしょうか。ストレスが治療の結果に大きく影響することもあります。毎月連続して治療を続けてこられたので、1周期ほどお休みしては。先ほどもお話ししたように、連続的な治療は卵巣機能を低下させることがあります。お休みしている間にピルやカウフマン療法などで卵巣の状態を整えることもできます。

タイミング法に切り替える場合は、最初はお薬を使わずに自分の生理周期をみておかれるといいのではないでしょうか。特におもちさんはクロミフェンを連続して使っていて月経量も減ってきています。クロミフェンは長期間にわたり繰り返し使用すると子宮内膜が薄くなってしまう作用があり、年齢とともに子宮内膜が薄くなる傾向も合わさって、着床環境が悪化します。タイミング法でも A R T でもクロミフェン以外の排卵誘発法を試されるほうが良いと思います。

まずは自然の排卵に近い状態にもっていき、ご自身の状態が整ったら、通常の排卵誘発法を取り入れながらタイミングを合わせていきましょう。もし状態が良くなれば、A R T に再チャレンジを考えてみても。弱い刺激と強い刺激をメリハリつけながら試していかれるといいと思います。

 

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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