2回の胚移植は陰性。卵管水腫の手術を最優先するのがいい?
良好胚を2回移植しても着床しないそうです。卵管水腫の手術を優先したほうがいいですか?
山田先生●初回は胚の異常が原因であった可能性はありますが、2回目も着床しないとなると着床側の原因も考えられ、卵管水腫が原因である可能性は考えられますね。治療としては卵管切除術になりますが、そのかわり以降は自然妊娠を望めません。
当院ではスクリーニングで卵管造影検査を行いますが、卵管水腫があっても着床する方も珍しくありません。そのため、初回はまず移植を先行します。それで着床しなかった場合は、それぞれの患者さんの状態により方針を決めます。胚が複数個あるのであれば、二回移植しても着床しない場合に手術をすすめることも多いです。
とんさんは、年齢は32歳(染色体異常率は高くない)で、二回とも良好胚であったことから手術をおすすめします。胚が残っていない場合は、先に採卵をして良好胚を確保してからの手術をすすめます。手術後はAMH が低下し、再度採卵を行う場合は、採取数が低下する可能性もあるからです。
手術後の妊娠率ですが、当院のデータでは約1・8倍と明らかに上昇します。吸引だけでも効果があるように思われますが、すぐに再貯留するケースが多く、処置後の妊娠率も処置をしない場合と同等でした。
PGT -A 検査やERA 検査は必要でしょうか?
山田先生●胚側よりも着床側が原因になっている可能性が高いと思われますので、PGT -A は積極的にはおすすめしません。
ERA 検査に関しては、手術を行っても着床しない場合に検討するといいと思います。ちなみにERA 検査で異常がある方の大半は、通常の移植日にはまだ準備が整っておらず、移植を通常より遅らせるケースです。そのため、ERA 検査をせずに5日目の胚盤胞を6日目に移植する方法もあり、当院でも実際に行っています。
また最近、当院では卵管切除術前の治療として、「卵管鏡下卵管形成術(FT)」も行っております。通常はタイミング療法や人工授精で妊娠を目指す方に行う治療です。卵管水腫に対しては、狭窄部分を解除することで水腫を軽減し、着床率の向上を目指しています。
データの蓄積はこれからですが、手術に抵抗のある方や、軽度でも水腫が原因と思われる場合は、検討されるといいと思います。