【Q&A】凍結した初期胚の移植個数について~政井先生

まめさん(39歳)

現在、凍結初期胚が4つあります。
前回は凍結胚1個を移植して化学的流産になりました(通算6回目の移植で初めて着床しました)。
次回こそは妊娠したいと思っていますが、年齢も年齢なので、確実に着床して妊娠継続させるには、1個ずつ移植した方がいいのか、2個移植した方がいいのか悩んでます。
別のクリニックで過去4回移植した時は、すべて新鮮胚移植で、複数戻しても1つも着床すらしませんでした。
移植できる保険適用回数を考えると、今の凍結胚をすべて使い切った時に採卵して移植となり、年齢も上がるのできっと今よりも質が落ちてなかなか妊娠につながる卵が取れないのではないかと考えてしまいます。
今ある卵に望みを託したいと思い、アドバイスをお願いします。

政井先生にお聞きしました。

佐久平エンゼルクリニック 政井 哲兵 先生
鹿児島大学医学部卒業。東京都立府中病院、日本赤十字医 療センター、佐久市立国保浅間総合病院、高崎ARTクリニック 勤務を経て、2014年に佐久平エンゼルクリニックを開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください
まず、2個胚移植については、各施設ごとの考え方がありまして、そもそも2個胚移植を許容している施設(実施可能とする施設)と、1個胚移植しか選択肢がない(2個胚は絶対しない)とする施設とあります。

そもそものところで言うと、現在日本産科婦人科学会は多胎妊娠を予防するための取り組みとして原則1個胚移植を推奨しています。
ただし、35歳以上の方で、反復不成功の方などを対象に、インフォームドコンセントを行ったうえで、2個胚移植を”許容”という言い方をしています。
つまりこれは、多胎妊娠のリスクを考慮すると学会としては2個胚移植を”推奨する”とまでは言っておらず、”あくまでも担当医と患者様の間での合意の下で2個戻すとしてもそれは許容されます”というようなあいまいな言い方をしているというところです。
生殖医療ガイドラインも日産婦の見解に基づき、同じようなスタンスを取っています。
なので、1個胚移植にするか2個胚移植にするかについては、単に妊娠するかしないかの視点も大事ですが、その後の周産期リスク(妊娠した後に起こり得るリスク)をご自身が許容できるかどうかという視点も必要になってくることから、担当の先生の見解もそれに基づき分かれてくるのではないかと思います。

2個胚移植と1個胚移植の違いは、複数個の凍結胚がある場合に最終的に妊娠という目的を達成するまでの時間を短縮できるかどうかという点になります。
現在4個の凍結胚があるという状況で、この中に将来赤ちゃんになれる胚があると仮定して、それをもちろん1回目で引き当てればよいですが、4回目ということもあります。
そうすると妊娠するまでにかかる時間は4か月となります。
仮に2個ずつ戻していくとその半分の時間となります。
今凍結してある卵で妊娠できるかどうかは、今凍結してある卵の中に将来赤ちゃんになれる卵があるかどうかで決まってきます。そういう卵が1個という場合もあれば複数個もしくは1個もないという可能性もあります。
現在おかかりの施設が、2個胚を許容する(2個胚をやってくれる)施設であるなら、2個胚を移植した場合に起こり得る多胎妊娠のリスクと、妊娠という目的を達成するまでに要する時間とを比較して、ご自身にとってどちらを優先したいかによって、1個ずつの移植とするか2個ずつの移植とするか、担当医の先生ともよく相談していただいてもよいかと思います。
保険診療の場合はこれに回数制限という考え方も出てきますが、当院では患者様に対して、残り○○回しかありませんという言い方はせず、残り○○回も移植できるチャンスがあるのでとにかく今は前向きに取り組んでいきましょう・・というような言い方をしています。悲観的に考えても回数が増えるわけではないですし、先に述べたように今ある卵の中に赤ちゃんになれる卵があるかどうかで結果は決まってしまいます。
そうすると全てをネガティブに考えて進むよりも、妊娠できる卵があると信じて前向きに取り組む方が気持ち的にも楽に治療に臨めるのではないかと思います。

今後の治療の方向性ですが、凍結胚移植で初めて化学流産までは行けたということなので、着床は出来たと考えると、進むべき方向性としては引き続き凍結胚を同じ条件で戻してみるという考え方でもよいかと思います。

あとは、戻す個数を1個でいくか、2個胚をするか、その部分の考え方になってくると思います。
敢えてさらに、次回の移植にベストを尽くすという観点からは、トリオ検査を事前に行ってみるもありかと思います。
トリオ検査は現在先進医療として保険診療と組み合わせて行うことができます。
トリオ検査で子宮の状態を確認した上で、凍結胚移植を行うというのが今取りうる最大の治療法ではないかと思われます。
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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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