着床してもうまく育たない。胚移植を続けるべき?

胚移植は化学流産や陰性に。
保険が使えない43 歳でも妊娠できるか心配です保険診療から自費診療に切り替わる「43 歳の壁」に直面し、治療の継続に悩む人も多いようです。妊娠を諦めず、今からできる治療や可能について、久保みずきレディースクリニックの石原尚徳先生に教えていただきました。

久保みずきレディースクリニック 石原 尚徳 先生 高知大学医学部卒業後、神戸大学医学部大学院修了。医学博士。兵庫県立成人病センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2008 年より久保みずきレディースクリニック菅原記念診療所勤務。不妊治療から周産期・小児医療まで、地域に根ざした総合的なサポート体制が整う同クリニックで、不妊治療/婦人科、産科を担当する。
なのかさん(42 歳)からの相談 去年から体外受精を始め、今年初めて移植しました。1回目の移植は化学流産に終わり、2回目の移植を10 日前にしました。BT10 で妊娠検査薬は真っ白だったので、着床もしなかったと思います。子宮側に問題はなく、旦那の勃起障害でずっとセックスレスです。保険適用が始まりましたが、私が4カ月後に43 歳になるので、保険適用では良くて2回しか体外受精できないと思います。その後も一応2回分くらいの体外受精の費用は貯めてあります。しかし、年齢を考えるとやはり可能性は低いのでしょうか。どうしても子どもを授かりたいと思っています。希望はもちたいですが、毎日が怖いです。

ドクターアドバイス

●若いうちに採卵して良好な胚をつくる。
●良好な胚ができればPGT-A も検討を。
●サプリメント摂取も卵子のために有効。

1回の妊娠に必要な卵子数は約20個以上できるだけ早めに採卵と移植を

移植1回目は化学流産、2回目は着床不明だそうです。この結果をどのように思われますか?

石原先生●今後の治療について一番悩む年齢ですね。なのかさんは、卵子が何個採れて、そのうち胚盤胞が何個できて、どのグレードのものを凍結されていたのでしょうか。

通常、もっとも妊娠しやすいとされるのは、良好な胚盤胞を凍結融解移植することです。そのためには、採れる卵子の数も必要になってきます。たとえば、一人の赤ちゃんに出会うまでに必要な卵子の個数は、30歳の人では平均10個程度ですが、40歳以降の人では20個以上になります。その一方で、年齢が高くなるにつれて1回に採れる卵子の個数は減ってきます。

なのかさんのAMH値は1・15ng/mlとのことですので、複数個の卵子を採ることは可能かもしれません。ただ、年齢的には一度に10個以上を採卵するのは難しいでしょう。そうなると採卵する回数は増え、移植するまでにかかる時間が長くなります。

さらに、40代になると体外受精の妊娠率は1年ごとに急速に低下し、反対に流産率がどんどん高くなります。保険診療を考えるのであれば、移植のチャンスが2回残っていますので、少しでも若いうちに頑張って採卵し、良好な受精卵や胚盤胞をつくることに尽きると思います。

それがうまくいかなくても、自費診療であれば43歳を超えても治療はできます。当院にも治療を継続されている方は多くいらっしゃいます。この年齢の体外受精の妊娠率は、10%前後とそれほど高くありませんが、赤ちゃんを授かれる可能性は残っていますので、希望はまだありますとお伝えしたいです。

サプリを取り入れた生活改善とPGTーAを考えてみるのも一つ

「どうしても赤ちゃんを授かりたい」とのことですが、ほかにできることはありますか。

石原先生●一つは、いつもお話ししている生活改善ですね。食事内容の見直しや睡眠の質を上げること、さらに有酸素運動を定期的に行うことです。特におすすめしたいのはサプリメントの摂取。必要な栄養素は人により異なってはくるのですが、なかでも年齢の高い方には、妊娠に不可欠な葉酸、ビタミンをバランス良く配合したマルチビタミンや、アミノ酸などが豊富に詰まったプラセンタ(胎盤抽出成分)が有効だと思います。

もう一つは着床前胚染色体異数性検査(PGT – A)を受けられるかどうかです。PGT – Aは胚盤胞の中の染色体数の異常を調べる検査で、全国にある特別臨床研究の認可施設で受けることができます。なのかさんは2回着床できない反復着床障害ですので、検査の対象になります(良好な胚盤胞が複数個できることが条件になります)。

年齢が高くても良好な胚盤胞ができる人は、この検査で正常が確認できた胚盤胞を移植して、妊娠率の向上が期待できます。ただ、胚盤胞1個につき費用が発生しますので、検査をするほど費用の負担は大きくなります。また、検査後の妊娠率は70〜80%程度で、15%は流産する可能性もあります。100%の治療法ではありません。

さらに、検査を受けることにより、さまざまな問題に直面する可能性もあります。その一つは、ご夫婦のどちらかに染色体異常が見つかる場合です。

もう一つは、正常な細胞と異常な細胞が混ざりあったモザイク胚についての倫理的な問題です。赤ちゃんになるかもしれない胚をどう取り扱うか悩むことになるかもしれません。

このような問題をクリアするためには、事前に遺伝カウンセリングを受けることが重要です。検査のメリットだけでなく、リスクや問題点もちゃんと理解したうえで、ご夫婦で検査を受けるかどうかを決められるといいですね。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。