助成金を活用して治療の選択肢を広げよう

不妊治療の保険適用により国の特定不妊治療助成制度は終了しましたが、自治体が独自の助成を行っている地域もあります。島根県松江市の制度について内田先生に伺いました。

内田クリニック 内田 昭弘 先生 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、1987年、島根県の体外受精による初の赤ちゃん誕生に携わる。1997年に内田クリニック開業。生殖医療中心の婦人科、奥様が副院長を務める内科、大阪より月1回来院の荒木先生による心理カウンセリングとサポート体制が充実。

治療者の立場に寄り添う松江市独自の助成制度

松江市は、令和4年4月より、「不妊治療(生殖補助医療)費助成制度」として独自のスタイルで助成制度を実施しています。助成額は、保険診療で生殖医療を行い、あわせて先進医療を実施した場合、1回の上限は5万円で回数の制限はありません。

保険診療外で生殖補助医療を治療として実施した場合は、1回の上限は30万円。採卵をしない、または採卵で卵子が得られず治療を中止した場合は、上限10万円です。

保険診療では40歳未満の方は通算6回までで、40歳以上になると通算3回までと決まっています。松江市の制度には年齢に上限がないのが大きな特徴で、43歳以上で年齢が区切られることのない素晴らしいシステムです。

ですから、40歳未満の人は保険で6回の治療ができて、保険外でなおかつ6回、トータル12回のチャンスを、43歳を超えても保険で3回、市の助成金で3回、トータル6回のチャンスを松江市はもたせてくれているということです。

他の自治体の助成金制度の仕組みは、保険診療で3割負担になった治療費をさらに助成したり、年齢に制限を設けられたりしています。保険診療になった段階で国から7割の助成をしてもらっているので、保険診療の段階を超え保険外の治療を選択せざるを得ない時点でも助成金制度が充実するのはいいと思っています。

保険診療と保険外診療先の治療を見据えた選択を

次に、保険外診療についてですが、保険診療との一番の違いは、日本生殖医学会が出したベース、エビデンスのある治療基準、ガイドラインを患者さんによって変えることができることです。保険診療は、どちらかというと画一化されてしまい、妊娠に至らなかった時に苦しい場面があるのでは、というのが率直な印象です。

保険診療と助成金をうまく使い分けることで、最大限の助成金を受けながら治療を進めることも可能です。たとえば、6回目までは保険診療だけを行い、7回目以降に助成金を使うというやり方。ほかには保険を使い切る前に、助成金での治療を組み込むようなやり方です。例として、1回目はスタンダードな保険診療、2回目は先進医療を組み込んだ保険診療、3回目はPGT-Aを加えるので助成金制度を使う、というような進め方になります。ただし、これは松江市のように保険診療外での助成金を出す自治体であれば、ということになります。

保険診療と併用可能な不妊治療の先進医療

保険診療には、先進医療と認定され併用可能となった治療がいくつかあります。先進医療とは、まだ保険診療としては認められていませんが、その安全性や有効性を検討し、将来、保険診療として認められることになる予定の検査や治療です。

適用になった先進医療は、PICSI、タイムラプス、子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE)、SEET法、子宮内膜受容能検査(ERA)、子宮内膜スクラッチ、IMSI、二段階胚移植法です。

治療に直結するものとベースになる検査になるものが分かれていて、それぞれの検査や治療に有効性があると考えています。検査に関してはコストも時間もかかりますので、初回の治療でできなくても、2回目以降で組み込んでいく意味はあると思いますよ。

特に患者さんの年齢を考えた時に何回もできないとか、凍結保存の個数が少なければ、1回目で妊娠できなかった時には2回目でなど、何か新たな手を打ちたい時に先進医療は有効だと考えています。

保険診療、保険外診療、住んでいる自治体の助成金、先進医療の内容など、知ることで有効な治療に繋げていくことができます。通院している医療機関や自治体に問い合わせ、ベストな組み合わせを考えて治療の選択肢を広げていきましょう。

助成金を活用した治療のポイント

◎ 助成金は、保険診療と組み合わせることで使いやすくなります。

◎ 助成金の仕組みは、住んでいる自治体によってそれぞれなので、公的機関の窓口に問い合わせ、計画的に有効活用しましょう。

◎ 松江市のように保険外での助成金を自治体が設けていれば、保険での胚移植の回数を使い切るまでに保険適用外の治療を組み込むことも検討しましょう。

島根県松江市の不妊治療費助成金制度

対象者

❶ 松江市内に住所のある方(夫または妻〔一方でも可〕)

❷ 生殖補助医療(体外受精、顕微授精)以外の治療法では妊娠が望めないと医師の診断があった方

❸ 令和4年4月1日以降に治療を開始した方

助成額・助成回数

【保険診療で生殖補助医療を行い、あわせて先進医療を実施した場合】

● 1回上限5万円(保険外の先進医療費の助成)回数制限なし

【保険診療外で生殖補助医療を治療として実施した場合】

● 1回上限30万円(注意1の場合は上限10万円)注意1:採卵を伴わない治療

・以前に凍結した胚を解凍して胚移植をした場合
・採卵したが卵が得られない、または状態のよい卵が得られないため治療中止した場合

● 初回の申請にかかる治療の開始時点での妻の年齢

・40歳未満の方は通算6回まで
・40歳以上の方は通算3回まで

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。