【Q&A】着床させて妊娠出産するためには~政井先生

政井先生にお聞きしました。

佐久平エンゼルクリニック 政井 哲兵 先生
鹿児島大学医学部卒業。東京都立府中病院、日本赤十字医 療センター、佐久市立国保浅間総合病院、高崎ARTクリニック 勤務を経て、2014年に佐久平エンゼルクリニックを開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

まめさん(38歳)

体外受精1回、顕微授精4回、胚移植5回してきましたが、一度も着床したことがありません。
2年半前に検査したAMHは0.9と年齢よりも低い数字です。
毎回ショート法で取れる卵も5個前後で、胚盤胞になったのも一度しかありません。
子宮鏡検査やフローラ検査などしましたが、問題ありませんでした。
着床しないのは胚が良くないから、と言われましたが、どうすれば着床できるような胚を作ることができますか?
内膜の厚みもそこまで厚くならないのですが、それも関係ありますか?
あと、夫の喫煙も関係ありますか?
夫の精子の運動率は悪くないのですが、ネットで調べると「運動率に関係なく、喫煙によって精子のDNAが損傷している」とありました。
今年39歳になるので、なんとか着床させて妊娠、出産したいと思っています。
今後の治療についてや生活についてもアドバイスをお願いします。
これまでの治療を見ますと、現状で想定されるあらゆることをされているというように拝見しました。
子宮鏡検査やフローラ検査でも特に異常がないということですし、なかなか胚盤胞にならないということでもあるので、たしかにおっしゃるように純粋に胚の問題なのかとも思われます。

いわゆる胚の質を規定する要因としては、卵子側の要因(いわゆる卵子の質)と精子側の要因(精子の質)というのがあります。

卵子の質や精子の質を明確に見極めるための一般化された検査方法やそれに対する有効な治療法というのは現状なかなか少ないと思いますが、最近はおっしゃるように精子のDNA損傷の程度をしらべるような検査方法も出てきています。(精子DNA損傷検査や精子抗酸化力検査などがこれにあたります)

精子DNA損傷検査は、見た目では分からない精子のDNA損傷の程度について、数値化することができます。
また、精子抗酸化力検査は精液中の抗酸化物質の量を調べることができ、生活習慣の改善(喫煙、飲酒、睡眠など)に繋げたり、抗酸化物質が含まれるサプリメント(ビタミンEやビタミンCなど)摂取や食生活の改善等につなげるきっかけになる可能性もあります。

精子のDNA損傷はそれ自体が胚の質に影響して不妊や流産の原因にもなるとされていますし、精液中の抗酸化物質が少ない方では精子のDNA損傷に繋がるといった意見もあります。

ただ、これらの検査によって異常が出た場合、もちろん食生活の改善や生活習慣の改善は大切ですが、一朝一夕にすぐに効果がでるというものではありません。
しかし、これまでの治療でなかなか結果が出ていないことを踏まえると何か少しでも結果につながる可能性のあることに積極的に取り組んでみるという姿勢は大切ではないでしょうか?

また、喫煙はそれ自体が精子の質を低下させると言われています。
喫煙者の精液中には抗酸化物質が少なく、また精子のDNA損傷等の原因となる活性酸素が多く含まれるといったことも指摘されています。
もし、ご主人が喫煙をされる方であったり、喫煙はしなくても職場など周囲の環境で受動喫煙にさらされるリスクの高い方であったりした場合は、このような状況を変えていくといった工夫も必要かもしれません。

胚盤胞到達率が低いという点についてはもちろん精子側の要因だけで解決できるものではありませんし、卵子側の要因も大きくかかわってくる問題です。
卵子(女性側)、精子(男性側)それぞれに責任を求めるというよりは、夫婦の問題としてお互いの生活習慣を見直す、食生活を見直す、運動やストレスの少ない生活を二人で心掛けるなどして、妊活に一緒に向き合ってみるというような考え方も大切ではないでしょうか?

今後の治療について

39歳という年齢は、たしかに年齢の壁を意識する時期でもあり、様々な焦りも感じる状況かと思います。
ただ、これまでAMHが低いながらもしっかり卵子が取れていることなど踏まえると、例えば、胚盤胞にこだわらず、新鮮胚移植にチャレンジして移植の回数を増やすことを考えてみるとか、もし仮にこれから先胚盤胞が確保できた場合の移植方法として、2段階胚移植やSEET法などこれまでチャレンジしたことのない方法があればやってみるとか、これまでの経過を拝見してまだ何かしらできることがあるのではないかと感じました。
もちろん、現在おかかりの主治医の先生の考え方もあろうかと思いますが、何か気になる治療法などあれば、積極的に聞いてみる、可能であればチャレンジしてみるというやり方も大切ではないでしょうか??
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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