不妊治療の保険適用スタート!体外受精で知っておきたい3つのこと

2022年4月からスタートした保険適用制度。体外受精の費用も安くなり、治療が受けやすくなった一方で、保険でできる内容には、これまで使われていた薬の種類、治療などに一部制限も…。「どう使ったらいいのかわからない」と悩むカップルも多いようです。そこでHORACグランフロント大阪クリニックの森本義晴先生に、体外受精をはじめる前に知っておきたい3つについて教えていただきました。

HORACグランフロント大阪クリニック 森本 義晴 先生 「IVF大阪クリニック」「IVFなんばクリニック」「HORAC グランフロント大阪クリニック」を運営。西洋医学に心 理療法、運動療法、栄養療法を組み合わせた統合医 療を実践し、卵子の質の改善を目的としたミトコンドリア 研究に長年携わる。2016年から自家ミトコンドリア移植法 「オーグメント療法」の臨床研究をスタート。世界体外受精学会のプレジデントを務めるなど、生殖医療のパイオニアとして世界を牽引し続けている。

1 保険制度について勉強する

不妊治療の保険適用制度は、使えるお薬や治療について不確定な部分が多く、運用してみないと見えないこともたくさんあります。とくに体外受精の治療は、年齢、状態、治療経歴などによって一人ひとり異なります。また、治療費に対する考え方も「保険をうまく活用したい」「フルパフォーマンスの自費診療を受けたい」など、人によってさまざまです。

これから体外受精を検討される方はもちろんのこと、すでに治療をされていて助成金制度から保険制度に移行する方は、まずはご自身でもしっかり勉強し、「どんな治療をしたいのか?」を自己決定していくことが大切です。当院でも保険制度に関する情報共有や、治療費に関する個別相談など、できる限りのサポートを行っていきますが、治療は患者さんと病院の共同作業です。治療を効率よく進めていくためにも、わからないことはどんどん質問してください。まずは保険診療で体外受精を受けるときのポイントを確認しておきましょう。

 

胚移植は年齢ごとに回数制限がある

40歳未満の人は6回、40歳〜43歳未満の人は3回までの胚移植が可能です。採卵の回数制限はありませんが、これまでのようにその周期に移植をせずに採卵だけ行う「貯卵」はできません。採卵した受精卵は必ず移植する必要がありますが、その周期に余った受精卵の凍結は認められています。

また、43歳以上の人や、保険の回数制限を超えた人は自費診療になります。費用の負担は大きくなりますが、保険診療では認められていない有効性の高いお薬の使用や治療も可能になります。さらに当院の場合、自費診療の方は統合医療(鍼灸、レーザー治療、マインドフルネスなど)を同時に受けることができます。

 

保険診療と併用できる先進医療もある

保険診療と併用できる先進医療には6つあります。なかでも当院は全例に実施しているタイムラプスインキュベーターをはじめ、子宮内膜受容能検査(ERA)や子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE)を中心に行っています。

・タイムラプスインキュベーター

・子宮内膜受容能検査(ERA)

・子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE)

・IMSI(強拡大鏡による形態精子の選別)

・子宮内膜刺激胚移植法(SEET法)

・子宮内膜スクラッチ

 

混合診療は原則としてNG

保険診療と自費診療を同日に行う「混合診療」は、現在の医療制度では受けることができません。また、保険診療で体外受精を行う場合は、治療計画が立った時点で、同じ施設でのサプリメントの購入や統合医療も受けられなくなります。

 

2 自分に合った刺激法を知る

 

体外受精では妊娠率を高めるために、卵巣を刺激する注射薬や服用薬を使い、複数の卵子を育てます。卵巣の刺激法には低刺激、中刺激、高刺激があり、保険診療でも従来通りの治療がほぼ受けられます。

3DエコーでAMH(卵巣予備能)とAFC (胞状卵胞数)を測定し、その結果に合わせて刺激法を選択します。年齢が若くても卵巣機能が低下していることがあります。半年に1回測定できるAMHは刺激法を決める大きな指標になります。

40歳未満の人の刺激法

基本的に40歳未満の方はAMHが高い傾向にあり、中刺激(アンタゴニスト法)、高刺激(ロング法、ショート法)、PPOS(黄体ホルモン併用療法)など、複数の選択肢が考えられます。黄体形成ホルモン(LH)を多く含有したhMG製剤を除き、使用する薬剤のほとんどは保険の範囲内で使用できます。

 

40〜43歳の人の刺激法

年齢が高くなるとAHMは低下する傾向にあります。たとえば、AMHが1ng/ml以下で、AFCが両側で10個未満の方は、卵巣機能の低下が考えられます。

このような場合の刺激法には2つの選択肢があります。一つはFSH(レコベル®︎)という自己注射薬を使った高刺激法。やや強めのお薬を使って一気に卵胞を育てる方法です。もう一つは、服用薬(クロミッド®︎、レトロゾール®︎)に、注射薬(hMG)を少量加える中刺激法です。

また、43歳以上の方など卵巣予備能がさらに低い方は、服用薬(クロミッド®、レトロゾール®︎)のみを使い、1〜2個の排卵をうながします。今回はセキソビット®という服用薬は保険適用外になっています。さらにAMHが0.1ng/ml未満の方には、お薬をまったく使わない完全ピュアな方法や、エストロゲン待機療法という方法があります。

 

卵巣の状態に見合った刺激法の選択が重要

卵巣の状態と刺激法がうまく合っていないと、卵巣に負担がかかり卵子の質が低下しやすくなります。とくに多嚢胞性卵巣症候群の方は、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こりやすくなります。OHSSは不妊治療の最大の副作用であり、これを防ぐことがとても重要です。予防薬にはカルペゴリン®︎、レトロゾール®︎、レルミナ®︎という3種類のGnRHアンタゴニスト製剤があります。新薬で有効性の高いレルミナ®︎は保険適用外になっています。

 

3 集中的な体質改善で早く授かる

妊娠率を高めるためには、治療だけでなく(1)抗酸化力を上げる(2)バランスの取れた食事を摂る(3)有酸素運動が欠かせません。当院で治療を受けていただく方は、この3つのケアからスタートします。

とくにコロナや不妊治療の影響で心身にかかるストレスは大きくなっています。なかでも酸化ストレスが増加すると、卵子や精子の細胞内のミトコンドリアにダメージを与え、卵子の質の低下や精子の運動低下につながります。そこで酸化ストレス・抗酸化力を測定し、検査結果によってお薬やサプリメントの処方、生活習慣のアドバイスなどを行っています。

また、栄養バランスを考えた食事で糖化を防ぎながら、タンパク質をしっかり摂ることが大切です。管理栄養士による栄養指導で妊娠しやすい体づくりを目指していきます。それと同時に運動する習慣も必要です。ミトコンウォークなど、自宅でも気軽にできる有酸素運動の指導も行っています。毎日30分間のミトコンウォークをするだけで脳が活性化され、気持ちが前向きになり、冷え性や胚の質が改善するなど、多くの効果が認められています。

あわせておすすめしているのが、鍼灸やレーザー治療といった統合医療です。当院では治療計画が立つまでの1カ月間や、治療をお休みしている間に統合医療を取り入れて体質改善を行っていただくことができます。同時に妊活に欠かせない葉酸をはじめ、卵巣の機能を高めるDHEAやL-アルギニン、卵子の質を高めるL-カルニチン、メラトニン、PQQなど、目的に合った質の高いサプリメントをしっかり摂取するのも有効です。このような体質改善を集中的に行うことにより、治療の相乗効果を高め、結果的により早い妊娠が期待できます。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。