麻布モンテアール・レディースクリニック 院長山中智哉(やまなか ともや)先生 1998年山梨医科大学卒業。同大学産婦人科、不妊治療専門クリニックなどを経て2020年7月、麻布モンテアール・レディースクリニック院長に。医学博士、日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、日本抗加齢医学会専門医、米国ISFN認定サプリメントアドバイザー、点滴療法研究会認定医。

ラビさん(39歳) 約10カ月前に、卵管水腫の疑いがあって卵管造影を行いました。その時は、両方通っていると診断され、子宮の形が少し弓状かもしれないということでMRIを撮りました。結果、そこまで弓状ではなく問題ないと言われました。その後もタイミングでは妊娠せず、子宮鏡検査も行いました。筋腫はあるものの、小さく、場所も問題ないとのことでした。それから人工授精(AIH)にステップアップしましたが、数回しても妊娠せず。最近、腰痛になり、整形外科で腰のレントゲンを撮ったところ、造影剤の塊が映っていました。「おそらく卵管造影の時の造影剤で、卵管水腫だろう」と言われました。今度、もう一度子宮鏡検査をして確定診断となるそうです。MRIや子宮鏡検査を受けても、卵管水腫が見つからないことはありますか?それとも、急激に悪化したのでしょうか。10カ月も前の造影剤が残っていたなら、前から水腫があった可能性は高いのでしょうか。

卵管水腫とは、卵管に感染などによって炎症が起き、通りが悪くなったり、閉塞することで液体が貯留して、水ぶくれのような状態を形成していることをいいます。

卵管が閉塞している場合、卵管造影検査において卵管は描出されませんが、卵管が通過していて卵管水腫がある場合には、卵管は通常よりも拡張して描出されます。造影剤は通常、自然に卵管内から排出されて、腹腔内で吸収されて消失しますが、卵管水腫がある場合には、その排出が遅れて、しばらく卵管内に造影剤が貯留していることもあります。

卵管造影検査で卵管水腫を指摘されず、またその後のMRIでも造影剤の貯留所見がなかったのであれば、その時点では卵管留水腫はなかったものと考えます。しかし現在、あらためて卵管水腫が疑われるのであれば、過去の卵管造影像やMRI所見を見直して、その時点ですでに疑わしい所見がなかったかを見直す必要があります。

卵管水腫があっても、通常10ヶ月もの間、卵管内に造影剤が貯留しつづける可能性は低いと考えますが、卵管が水腫化して排出能が低下している場合は、それも否定はできません。レントゲンで造影剤の塊が写っていたとのことで、もしそれが造影剤ではなかった場合には、X線が透過しにくい滲出液などが貯留している可能性や、卵管とは異なる部位の石灰化や瘢痕などの可能性もあります。

子宮鏡を行なって診断を確定する予定とのことですが、子宮鏡は、子宮の内部を見ることが主な目的で、卵管については開口部しか確認できないため、卵管水腫を同定することは困難です。

したがって、X線で写った塊が何かを確定するためには、再度MRI検査を行なう方が妥当だと考えます。

このMRI検査で卵管水腫があると診断された場合、水腫の程度が大きければ、卵管切除の検討も必要になってきます。

卵管水腫の程度が軽ければ、手術より先に妊娠を目指しても構いませんが、これまでの不妊期間や39歳という年齢的なことを考えますと、これを機会に体外受精にステップアップされることをご検討されるのもいいかと思います。

体外受精におきましても、卵管水腫は胚移植の着床率を下げる原因になりますので、引き続き、卵管水腫の状態を確認しながら、手術を行なうかどうかの判断が必要となります。

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