血糖値が高めです。
不妊治療と糖尿病、どちらの治療を優先すべき?
妊娠中に糖尿病を発症した場合はお腹の中の赤ちゃんにも影響し、さまざまな合併症が起こり得ます。そこで不妊治療と糖尿病について、注意点や治療の選択など福井ウィメンズクリニックの福井敬介先生に詳しいお話をお聞きしました。
ドクターアドバイス
●妊娠中の食事療法と体重管理は重要。
●定期的な検診で病気の早期発見、治療を。
妊娠中の高血糖による影響はお母さんと赤ちゃんの両方に
――血糖値が高めの場合、妊娠時にどのような影響があるのでしょうか?
福井先生●不妊症や月経不順に糖尿病や糖尿病予備軍が関連することがあります。血糖を下げる働きのあるインスリンはその排卵機構にとってとても重要なホルモンであることが知られていて、糖尿病ではインスリン代謝が障害されることが多いため、排卵障害をきたす頻度も高いと考えられています。排卵障害の機序の一つにインスリン抵抗性が関与していると考えられ、肥満や多囊胞性卵巣症候群(PCOS)とも関連し、排卵障害をきたし、不妊の原因となります。
お母さんが高血糖であると、お腹の中の赤ちゃんも高血糖になり、さまざまな合併症が起こり得ます。血糖がコントロールできない状態で妊娠すると、流産や、胎児に先天奇形を合併しやすくなります。
――どのような検査で糖尿病を診断するのでしょうか?
福井先生●血液検査では、空腹時血糖値(グルコース)とインスリンのほかに、糖化ヘモグロビン(HbA1c)を調べます。正常な場合、食後2時間ほどで血糖値は正常域まで下がりますが、糖尿病の人は食後10時間以上経過してもなかなか正常域まで下がりません。つまり、空腹時血糖値が高い人は、糖尿病の可能性が非常に高いというわけです。ところが、空腹時の血糖値は正常でも、食後の血糖値が基準を大きく超える人がいます。このような状態は「隠れ糖尿病」といわれ、やせ型の人や若い人にも存在します。空腹時血糖の検査だけでは見逃されてしまいがちです。
いずれにしても血糖がコントロールできない状態で妊娠すると、流産や、胎児に先天奇形を合併しやすくなります。高血糖が胎児に及ぼす影響を防ぐために、妊娠前に血糖コントロールをすることが重要です。妊娠前の糖化ヘモグロビン(正常値4.6~ 6.2 %)の目標値は7%未満です。できれば6.2%未満を目指しましょう。
安全な妊娠のためには血糖コントロールが重要
――血糖値が高めになったことは、妊娠糖尿病を再発したと考えてよいのでしょうか?
福井先生●内科的にはいったん終了されているようですが、血糖値が高めという検査結果からも再発の可能性は考えられます。特に移植直前の厳密な血糖コントロールは必須となりますので、しっかりと検査を行う必要があります。できればすぐに内科を受診し、きちんと検査するべきでしょう。
――血糖値が高く、妊娠糖尿病の場合、不妊治療で気をつけることを教えてください。
福井先生●まず第1子妊娠時にはおそらく、内科での血糖コントロールを並行して不妊治療を進められていたのでしょう。残念ながら中絶されたとのことで、おつらかったでしょうね。今回のご相談には、中絶の原因や何週目かが書かれていないので、はっきりとしたことは言えませんが、ケイさんは血糖値が高めだったこと、抗リン脂質抗体症候群を発症されていたこともあって、流産や早産などに対するリスクがあったと考えられます。
軽度の場合は食事療法で血糖値をコントロールできます。ヨガや散歩など適度な運動や、バランスの良い食生活を心がけましょう。
妊娠糖尿病の多くの方は分娩後、血糖値が正常に戻ります。しかし、その後2型糖尿病を発症するリスクは、血糖が正常だった妊婦さんに比べて7倍以上です。そのため、分娩後も、太りすぎないように栄養管理することが大事です。自覚症状はなくても、母子ともに重篤な病気を誘発してしまう恐ろしい病気なので、予定された妊婦健診をきちんと受けて、異常を早期発見することがとても重要です。また特に40代の方は生活習慣病の発生リスクも高まります。妊娠・出産は、心臓や腎臓にかなり大きな負担がかかりますから、心疾患や腎疾患は、将来の妊娠のためにもチェックしておくべきです。持病などによって妊娠が難しい人も定期的な検診、プレコンセプションケアによって早めに改善してもらうことで、妊娠の道を探ることができるのです。