早期卵巣不全って?妊娠できるの?

「いつかは子どもをもちたい」と考えている人やこれから妊活を始めようと思っている人に、ぜひ、知っておいてほしい早期卵巣不全(早発閉経)。その症状やリスク、治療法について、第一人者のローズレディースクリニック院長の石塚文平先生にお聞きしました。

石塚 文平 先生(ローズレディースクリニック 院長)昭和大学医学部卒業後、米国カリフォルニア大学 サンディエゴ校生殖医学科留学、聖マリアンナ医科大学教授、聖マリアンナ医科大学産生殖医療センター・センター長兼任・聖マリアンナ医科大学高度先進生殖医療研究開発講座特任教授を経て、2014年にローズレディースクリニック院長に就任。日本生殖医学会(名誉会員)、日本女性医学学会(名誉会員)、日本受精着床学会(名誉会員)等所属。

早期卵巣不全とはどういったことでしょうか?また、なぜ起きるのでしょうか?

早発卵巣不全とは、女性のうち40歳未満という早期に、月経がなくなってしまうことを言います。

日本人女性の閉経の平均年齢は50歳前後ですが、40歳より前に月経が3ヵ月以上来なくなり、卵巣機能が低下した状態のことを早発卵巣不全(または早期閉経・早発閉経)といいます。

卵子(原始卵胞)の数は、生まれたときには決まっていて、生涯増えることはありません。卵子の数は、お母さんのおなかの中にいる胎児のときが最も多く約700万個。生まれた時には約200万個、月経が始まる思春期には約50万個、そして閉経時には約2,000個に減少します。正常であれば加齢とともにゆるやかに減少して、やがて閉経を迎えます。ところが早発卵巣不全では、通常より急激に卵子が減少して、早く閉経に至ります。

卵子が一定以上に減少すると、妊娠できなくなります。

どんな人に早発卵巣不全が起こりやすいのでしょうか?

原因として明らかなのは卵巣における卵子数の減少が加速している事と考えられます。

早発卵巣不全が起こる頻度は、29歳までは1,000人に1人、39歳までは100人に1人、最近、欧米では2%近くが40歳までに閉経するとするデータも出ています。

卵巣の手術、抗がん剤治療、放射線治療により卵巣の機能が低下する場合がありますので、このような経験のある人には多くなります。

近年は晩婚化が進み、妊活しようと思ったときには卵巣機能が低下しているという事態が多くなり、問題となっています。

どんな検査、治療をするのでしょうか?

卵巣の機能を調べるホルモン検査を行い、治療はホルモン補充を行いながら強い卵巣刺激を行います。

超音波で子宮の大きさや卵巣の大きさ、卵胞が残っているかを検査し、ホルモン検査、または抗ミュラー管ホルモン(AMH)で診断します。また、甲状腺や副腎の病気、糖尿病、自己免疫疾患が原因であることがあり、これらの検査も受けることが望ましいでしょう。

早発卵巣不全を招く卵巣機能不全の初期症状に月経不順があります。月経不順が気になったら早めの産婦人科受診をおすすめします。

当院では、新しい不妊治療である原始卵胞体外活性化法(IVA)を行なっています。卵巣組織を一度取り出し、体外で卵子の発育を活性化し、卵巣に戻す新技術です。

早発卵巣不全で不妊治療を受けている方々はうつ、不安の程度が高く、とても強いストレスを抱えています。当院ではカウンセラーによるカウンセリングも行い、精神面のサポートを重視しています。

早発卵巣不全でも妊娠・出産できる可能性はありますか?

無月経となってからの期間の短い患者様ほど、妊娠率は高く、35歳未満、無月経4年未満の患者さんでは一般不妊症の妊娠率とほぼ変わらない妊娠率が得られています。

早発卵巣不全の場合、妊活は時間との戦いなので、一刻も早く適切な治療をすることが大切です。若ければ加齢による卵子の質の低下は少ないため、排卵があれば妊娠の可能性は十分あります。

無月経期間が長くなればなるほど長く厳しい治療が必要となります。お子さんを望む方で、月経不順血中な方やFSH(卵胞刺激ホルモン)値が高い、AMH(抗ミュラー管ホルモン)が低いと言われた方は時間の経過とともに妊娠が難しくなる傾向があるため、無月経となっていなくてもできるだけ早く当院を受診することをおすすめします。

体質改善に有効なものはありますか?

適度な運動をする、良質な睡眠を取る、体を冷やさない、ストレスをためないなど生活習慣にも配慮しましょう。

誤ったダイエットなどをしないように、妊娠に向けての基本の食生活を見直して、糖質を制限、タンパク質、必要な栄養素を取りましょう。なかなか食事だけでは摂れないし栄養素はサプリメントで補うといいでしょう。卵巣の質を上げるサプリメントとして、DHEAメラトニンなどがあります。

またタバコを吸う女性は、そうでない女性よりも閉経が2年早いという調査結果があります。血流が悪くなるので、卵巣の血流も低下し、卵子が早く減ると考えらます。喫煙はNGです。

最後に先生からメッセージをお願いします。

月経不順でピルの服用を開始した人は、定期的に卵巣機能のチェックをしましょう。ずっと続けて服用していると、その間に卵巣機能が低下してもわからないからです。1~2年に1度、3ヶ月ほどピル服用を休んで、その間に自然に月経があるかどうかを見極めましょう。また、通院先でFSHやAMHを検査してもらうといいでしょう。

早発卵巣不全は以前には治療法がなく、患者さんは現実を受け入れるしかありませんでした。しかし現在は、早く気づいて適切な治療をすれば妊娠が可能です。すでに月経不順、また長期間にわたり月経が起こらない場合は、卵巣機能の低下が進んでいる可能性が高いため、妊娠を希望するなら早く産婦人科を受診しましょう。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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