【Q&A】遺残卵胞について~政井先生

せっかく準備をしてきたのに、採卵を見送りに…

その原因が遺残卵胞だった場合、どう考えたらいいのでしょうか?

政井先生にお聞きしました。

政井 哲兵 先生 鹿児島大学医学部卒業。東京都立府中病院、日本赤十字医 療センター、佐久市立国保浅間総合病院、高崎ARTクリニック 勤務を経て、2014年に佐久平エンゼルクリニックを開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
おやまさん(38歳)遺残卵胞ができないようにするにはどうしたらいいですか。
ロング法では過去に何度も採卵しています。
毎回採卵する生理周期の前の周期の高温期から点鼻を1日3回します。
今回、いざ採卵に向けてHMG注射を始める段階で遺残卵胞があることがわかり、採卵が見送りになりました。
スプレキュアを使うと、2ヶ月ほど期間を開けないと、生理周期や体温が戻りません。
再度2ヶ月待って、また遺残卵胞があると言われることが怖いです。
どうしたら遺残卵胞ができないのでしょうか。もしくは、点鼻薬を始める前にわからないのでしょうか。
採卵方法を変えたいと主治医に打診をしましたが、この方法があっていると変えてもらえませんでした。
また、生理周期や体温が戻らないままスプレキュアをまた使用しても問題䛿ないのでしょうか。
ロング法でこれまで複数回採卵をされているとのことですが、第1子を妊娠された際の治療法もロング法だったということでよろしいでしょうか?
第1子をロングで妊娠されている場合、確かに第2子の治療にあたり、同じ方法をまずはやってみるという考え方も悪くはないですが、なかなか治療が思うように進んでいない現状では次の一手を打つべきではないかと思います。
まず、遺残卵胞で採卵周期がキャンセルになったのは今回が初めてなのでしょうか?
キャンセルになったのが今回初めてということであればたまたまということも
あるかとも思うので、もしその先生との信頼関係ができていて、もう一度先生の提案通りやってみようというお気持ちがあれば、先生の提案するロング法でやってみても良いかもしれません。(特に、第1子がロング法で妊娠されている状況でしたらなおさらのことかと)
しかし、キャンセルが初めてではなく過去に何度かあるようでしたら、やはり刺激法を変えてみるという方向が良いかもしれません。
採卵周期の前周期、高温期からスプレキュア点鼻が始まっているということですが、スプレキュアの開始前にピルの使用はなかったでしょうか?
一般的に刺激の開始前にピルを使うことで下垂体の抑制がかかり、卵胞発育が抑えられるため、排卵誘発剤を開始した際にある程度均一な卵胞発育が期待できると言われています。
ロング法におけるスプレキュアの作用は下垂体のダウンレギュレーションと言って、下垂体の働きを抑制して早発排卵を抑えることにありますが、スプレキュアは使用初期にフレアアップといって、一過性に下垂体ホルモン(FSHLH)の分泌を促進してしまうので、今回の遺残卵胞がフレアアップの作用によって発生したものであれば、それがそのまま卵巣刺激の開始時期にも残っていたという可能性は考えられるかもしれません。
また、いただいた情報だけからは、AMHやその他のホルモン状態(FSHやLHの基礎値)が分からないので何とも言えませんが、もともと卵巣機能が悪くて、ベースのFSH、LHが高い状態であったとすれば、すでにスプレキュアの開始前から卵胞の発育があって、それが卵巣刺激の開始時に残っていたという可能性も考えられます卵巣機能の悪い方は常にFSHやLHの高い状態にさらされているので、卵胞発育が早く、いつでも勝手に卵胞が育ってくるような状況が考えられます。
スプレキュアの開始前に既に発育しかけている卵胞があったのか(FSH、LHの作用でもともとあったものと言える)、もしくはその時になくて、スプレキュアを開始した後に発生したのか(そうするとフレアアップによって生じたもの
であると言える)、確認してみるのが良いかもしれません。
もしこのままロング法で続けるとした場合、
・ピルを併用していなかったとしたら、前周期にピルを使って下垂体抑制をかけておいて、スプレキュア開始時のフレアアップを抑えることで卵巣刺激開始時の遺残卵胞の発生を抑える。
・もしくは卵巣機能が悪くてFSH、LHが常に高い状態で遺残卵胞ができやすい状況であれば、ピルもしくはカウフマンなどでFSH、LHを下げることで遺残卵胞ができやすい状況を回避する。
ということが考えられるかと思います。
(ただし、卵巣機能が悪い状態での長期のピルはかえって卵胞の発育を悪くする場合があるので避けるべきとも言われています)
もしくは、そもそもの刺激法を思い切ってスプレキュアを使用しないアンタゴ二スト法やクロミフェンなど別の方法に変えてみるというのも一法かと思います。フレアアップによって遺残卵胞ができやすい状況になっているとしたら回避ができる可能性があります。
いずれにしても年齢も上がり、第1子の治療の際よりも条件は徐々に不利になってきています。刺激法は一つの方法に固執せず、卵巣機能やその周期ごとのホルモン値によっても柔軟に変えてみるという考え方が良いように思います。
できれば1周期も無駄にしないよう、納得のいく対策が必要ではないかと思います。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。