高FSH で低AMH。先生から採卵できないといわれてしまいました
40 代という高齢に加え、AMH 値が低く、FSH が閉経レベルの高値に。妊娠において3つの悪い条件が揃った状況で、有効な治療法はあるのでしょうか。大島クリニックの大島隆史先生に詳しいお話を伺いました
ドクターアドバイス
●FSH 値を下げてから排卵誘発を。
●一緒に考えてくれる先生を探すこと。
FSH値が18ng/mlを超えているとホルモン的には閉経状態です
高FSH・低AMHということですが、この方の数値についてどう思われますか。
大島先生●FSH(卵胞刺激ホルモン)は脳下垂体から分泌されるホルモンの一種。卵巣に働きかけて卵胞の発育や成熟をうながし、排卵にもっていく作用があるのですね。
FSH値が10ng/mlを超えると卵巣機能不全、18ng/mlを超えるとホルモン的に閉経状態といわれています。たとえば51歳で閉経した人の数値を測ると80~ 100ng/mlまで上昇。妊娠を考えた場合、40ng/mlを超えていると結構厳しい状況かもしれません。
一方、AMHは抗ミュラー管ホルモンというホルモンで、この値は卵巣という倉庫に卵子という商品が今いくつ残っているのかを示すものです。AH値は0でも卵子が採れることがあり、当院でも実際に20代で値が0でも1、2個採卵することができて、妊娠されたケースがあります。AMH値は卵子の質には関連しません。この方の場合、まだ年齢が若く、少ない卵子でも質が良かったので妊娠されたのかもしれません。
低AMHだけならまだ希望は十分にあるかもしれませんが、治療希望さんの場合、41歳という年齢、FSHが50ng/ml近い、低AMHという3つの悪い条件が揃っています。早発閉経ではありませんが、卵巣機能の落ち方は通常よりかなり早い状況なのではないでしょうか。
筋腫が着床に影響するかどうかは大きさよりもできた場所が問題に
子宮筋腫の大きさや状況についてはどうでしょうか。
大島先生●子宮筋腫は大きくても着床に影響しないこともあります。問題はできている場所ですね。ある程度大きさがあっても子宮腔に顔を出していないかぎり、大丈夫だと思います。
ただやはり、あるよりはないほうがいいでしょうね。アメリカのデータに、4.5cm以上の筋腫があると妊娠率が悪いという報告例があります。複数個の受精卵を凍結して、子宮筋腫を取り除く手術をしてから移植をするという選択肢もありますが、この方の場合、子宮筋腫より、卵子が採れるかどうかが今の一番の問題でしょう。
カウフマン療法でFSH値を下げた後、黄体ホルモンを使った刺激法を
このようなケースの場合、どのように治療をしていったらいいですか。
大島先生●高FSHの方に向けた方法の一つとして、カウフマン療法というものがあります。プレマリンⓇと黄体ホルモンを使う昔ながらの治療ですが、それを行えばFSH値が下がって卵巣機能が一時的に回復する可能性があるかもしれません。
生理の5日目から21~24日間お薬を内服すると、2、3日後に次の生理が起こります。これを3~6周期繰り返し、FSH値が10ng/ml前後まで下がることを目指します。下がったタイミングで、今度は排卵誘発をして卵子を採るための治療をしていきます。
刺激法については悩むところです。以前、当院でAMHが低い方に治療を行った際、HMGを使って途中からアンタゴニストに変えて誘発していったのですが、早めに排卵してしまいました。卵巣機能がかなり低下すると排卵させるホルモンが多く分泌されてしまうのですね。
今は月経の2日目からデュファストンⓇという黄体ホルモンを通常の倍量飲んでいただき、途中からアンタゴニストを使う方法を採用。こうすると早発排卵を抑えられます。治療希望さんもそのような方法でトライしてみてもいいかもしれません。
大変だと思いますが、何よりも重要なのは今の厳しい状況でも治療希望さんのお気持ちに寄り添い、どうしたらいいか一緒に考えてくれる先生を探すことだと思います。