PCOSではないのにAMH値が高めです。排卵誘発の注意点は?

神奈川レディースクリニック 小林 淳一 先生 慶應義塾大学医学部卒業。1984 年より習慣流産の研究と診療に携わり、1989 年より済生会神奈川県病院においてIVFを不妊症・不育症の診療に導入。その後、新横浜母と子の病院の不妊・不育・IVFセンター長に就任。2003 年、神奈川レディースクリニックを開院する。患者さまの個々のペースに合わせた無理のない医療を目指す。
相談者 : ななさん(35歳)現在、タイミング指導を経て2回目の人工授精までいったところです。AMH値が10.6mg/ml と高めなのですが、ネックレスサインやホルモン値の異常はなくPCOSではないようです。前回周期にクロミッド®(1日2錠・5日間)とHMG注射(3回)の併用で卵巣が反応しすぎてしまったようで、卵胞が大きめのもの4個、小さいものも数個と数が育ちすぎてしまい、タイミングも人工授精も中止に。AMH値が高い場合、排卵誘発で卵胞ができすぎてしまうことはよくあるのでしょうか。

排卵誘発で卵巣が反応しすぎてしまったということですが。

小林先生●人工授精をする時にお薬を使ったそうですね。この方はもともと生理が順調にきているので、あえて排卵誘発剤を使う必要はなかったのでは?
 クロミッドRやHMG注射を使って過排卵させて妊娠率を上げるのは良い方法だと思いますが、きちんと排卵があるのであれば薬を使わなくても妊娠のチャンスは十分あると思います。
 排卵が正常な方が排卵誘発を行うとたくさん排卵しすぎてキャンセルになってしまったり、双子や三つ子など多胎になりやすいというリスクがあります。特にこの方のようにAMH値が高く、反応が過剰になりそうな場合、当院だったらお薬なしで人工授精をおすすめすると思いますね。

「AMH値が高めなのにPCOSではない」というケースもあるのですか。

小林先生●AMH値が高くても排卵障害がなければ、PCOS(多囊胞性卵巣症候群)と診断しません。AMH値は卵巣の予備能を表しているので、「高い=卵巣年齢が若い」とプラスに考える方が多いと思いますが、必ずしもそうではなく、人によっては排卵障害が起きたり、卵子の質が悪くなったりすることもあります。また黄体機能不全といって、排卵後のホルモン状態もあまり良くないということも起こるので。
 ななさんのAMH値は確かに年齢の平均値より高めですが、それは元々の体質であり、排卵障害はないのでそれほど悩むことはないと思います。

今後、どのように治療を進めていけばいいのでしょうか。

小林先生●人工授精を5、6回やっても結果が出なければ、体外受精にステップアップすることを考えてもいいのではないでしょうか。人工授精で結果を出している8割の方は4回までに妊娠されています。5回、6回となると2割くらいに落ちてしまうので、それ以上続けるのはあまりおすすめできません。
 体外受精の場合、高AMHだと卵子がたくさん採れる可能性があります。当院だったら、前の周期にピルを1カ月服用して卵巣を休めてからロング法を実施。注射は一度にたくさんの量を使わず、少量ずつ気をつけて使っていきます。
 人工授精に何回トライしても結果が出ない場合、一般不妊治療では解決できない問題が潜んでいることも考えられます。受精障害や着床障害など、体外受精をして初めてわかる原因もあるので、前向きにステップアップを考えていただきたいですね。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。