卵子と着床のためにできること-4

先進的な検査や治療も大切ですが、まずは妊娠できる体づくりを

低刺激を中心に治療を行っている高崎ARTクリニック。臨床で効果を実感したものに関しては最新検査も積極的に取り入れていますが、妊娠に近づくためにまずは健康的な体づくりが基本と考えています。卵子の質と着床率の向上についてどのような考えをおもちなのか、久保祐子先生に詳しいお話を伺いました。

高崎ARTクリニック 久保 祐子 先生 群馬大学医学部卒業。群馬大学医学部附属病院、さいたま赤十字病院、群馬県立小児医療センターなど勤務を経て、高崎ARTクリニックの院長に就任。生殖医療専門医。「患者さまに寄り添った診療」をすることを第一に、妊娠への期待や不安などすべてを受け止め、心も体もサポート。

着床率や妊娠率を上げるためにはまずは健康的な体づくりを

着床不全と診断した場合、当院では慢性子宮内膜炎の検査、子宮内フローラの検査、ERA(子宮内膜着床能)検査はおすすめしています。子宮内膜炎の治療後、子宮内フローラの改善後、ERA 検査結果に従って、最適な時期に胚移植することにより、当院のデータでも着床率、妊娠率は上昇しています。

体外受精によって得られた胚の染色体数を移植前に調べるPGT ーAはかなり有効な検査だと思いますが、当院は低刺激法を中心に行っている施設のため、現在は採用しておりません。日本産科婦人科学会の見解に基づき実施したいと考えており、導入に向け準備は進めています。

着床率や妊娠率を上げるために先進的な検査や治療も必要だと思いますが、当院ではプレコンセプションケアとして健康的な体づくりに力を入れています。

特に体づくりの基本となる栄養面では、管理栄養士を中心とした栄養プロジェクトチームが専門的な立場からアドバイス。初診の早い段階から採血して、ビタミンDや亜鉛、鉄などの不足がないか調べています。ビタミンD不足は着床不全に関係するというデータも多く出ているのですね。

当院において初診時の検査でビタミンD不足を指摘される人は9割以上もいます。栄養士の指導で食生活等を改善していけば、健康的な体づくりはもちろん、着床の問題においても良い方向へ転換できるのではないかと思っています。

サプリをたくさん使うのではなく、バランスの良い食事をおいしく摂る

当院ではサプリメントを取り入れていますが、おすすめしているのは亜鉛、鉄、ビタミンD、葉酸くらいです。きちんとエビデンスのあるものを最低限使っていきます。数種類のサプリメントをたくさん摂ることで、妊娠率の向上や胚質が一気に改善されるわけではありません。1個1個のサプリメントを摂ったからいいわけではなく、やはり必要な栄養素をバランス良く摂ることが大切なんです。それも楽しく食事ができておいしく食べたうえで、という考えです。基本的には普段の生活習慣と食事、運動の指導に力を入れています。

先進的な治療開発を待つより、まずは正しい情報の発信を

今後期待している治療法ですが、今の段階では卵子の質を上げることに関しては限界がきているような気がします。治療しても最終的には妊娠にもっていけないケースもたくさんありますから。遺伝子治療などについては画期的だと思いますが、まだ安全性に問題があり、すぐに導入することは難しいのではないでしょうか。

それよりも不妊に関してもっと情報を発信していくことが重要なのではないかと思います。不妊の予防や解消は1人の女性ができることではありません。社会構造が変わらないと現状を変えられないと思うのですね。不妊予備軍をつくらないために、私たち医師も積極的に情報や知識を発信していくことが大切なのではないかと考えています。

 

卵子と着床について先生のお考えを聞きました!

着床に有効と思われる検査や治療は?

子宮内フローラ 、 ERA、ビタミンD、 慢性子宮内膜炎、甲状腺機能、銅・亜鉛

AMH の数値と卵子の質は相関していると考える?

いいえ

年齢以外の理由で、卵子の質が良くない人の共通点は?

はっきりしたことはわかりませんが、ある一定の割合で卵子の質が悪い人がいます。過度の栄養不足や、過体重なのに栄養状態が良くない、PCOS の人など。原因不明の場合は治療しながら問題を探っていきます。

採卵や高グレード胚盤胞ができない人へおすすめしているものは?

睡眠の質を高めること、バランスの良い食事、適度な運動、サプリメント

クリニックでおすすめしているサプリは?

亜鉛、ラクトフェリン、ビタミンD、鉄、葉酸

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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