ワクチン接種後の妊活について

コロナ禍の妊活やワクチン接種について、不安を抱えている方は少なくありません。この時期の妊活は、どのように進めていくのがいいでしょうか。神戸三宮・山下レディースクリニック山下正紀先生にお話を伺いました。

1980年、奈良県立医科大学を卒業後、京都大学産婦人科に入局。舞鶴市民病院産婦人科の医長として同院の生殖医療を確立後、神戸中央市民病院で産婦人科医長、体外受精チーフとして数多くの患者さんの治療にあたる。1997年、神戸三宮に山下レディースクリニックを開設。一般不妊治療から高度生殖医療にわたる初診から妊娠成立までを一人で担当し、妊娠したカップルは10000組を超える。キッズルームを併設し、2人目不妊にも対応している。

コービーさん(37歳)医療従事者のため、もうすぐコロナワクチン2回目を接種します。その後の妊活はすぐに行ってもいいでしょうか?接種日が生理後11日目のため、タイミングを取り始めようと思っています。AMHは7.03です。半年前まで28日だった月経周期が24〜25日になり、高温期も9〜11日と短いです。5年前に子宮筋腫核摘手術をしましたが再発。約2cmのものが2つあります。流産後はタイミング法6回、人工授精3回を行いました。現在は体外受精を検討しています。

 

AMHと月経周期についてどう思われますか?

 

AMH7.03の値はかなり高く、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方によくみられる状態です。PCOSの場合はAMH値が高いことが多く、その場合卵巣にたくさんの卵胞が残っている可能性が高いので、卵巣予備能は十分に保たれていると思います。

一方で、月経周期がこの半年で短くなっているのでしたら、先ほどのお話とは反対に、卵巣機能の低下の初期の症状が疑われます。AMHはいつ計測されたのでしょうか。たとえば、それが35歳のときであれば、この2年間で急速に数値が低下している可能性はあります。

月経周期が短くなる大きな理由が年齢です。もしかすると高温期だけでなく、排卵までの期間も短くなっているかもしれません。加齢により卵巣機能が低下すると、月経周期が短くなる特徴があります。そうなると残念ながら治療の手立てはありません。このまま月経周期が短くなるようでしたら、できるだけ早く妊娠・出産をめざされるのがいいでしょう。

子宮筋腫の再発は体外受精に影響しますか?

 

筋腫は2㎝とのことですので大きさは心配ありません。それよりも問題なのは筋腫ができる場所です。粘膜下筋腫のように子宮内膜に飛び出ている場合は、大量の出血などがみられ、手術の対象になります。また、あきらかな粘膜下筋腫でなくても、筋腫が粘膜に比較的近いところにあれば要注意です。

コービーさんについては、体外受精に進まれて、まずは採卵した受精卵の凍結をおすすめします。そして、受精卵を移植する前に子宮鏡検査をされるといいでしょう。子宮内腔に影響するような筋腫が認められなければ、移植を進めていかれるといいと思います。子宮鏡検査は筋腫のチェックだけでなく、ポリープや慢性子宮内膜炎を調べる着床検査のファーストステップにもなります。ぜひ受けていただきたいと思います。

 

ワクチンと妊活についてどのようにお考えですか?

 

ほとんどの不妊専門施設がそうだと思いますが、当院でも診察室や電話で多くの問い合わせを受けます。実のところワクチンと妊活の関係については、エビデンスの蓄積がなく未知のお話です。またワクチンの影響に関する中長期のデータもありません。

このような現状のなかで、米国疾病予防管理センター(CDC)が妊娠中の女性に関する研究報告書を出しています。それによると「妊娠中の女性にワクチン接種後の懸念すべき有害事象などが認められない」として、妊娠中の人へのワクチン接種を推奨しています。また、妊娠を計画している人に対しても「ワクチン接種のために妊娠の計画を延期する必要はない」としています。

ワクチン接種や接種後の妊活を迷われている患者さまに対しては、このCDCの研究報告書をもとに推奨する方向でアドバイスをしています。ただ、コロナ禍では里帰り出産がむずかしくなるなど、さまざまな制約も生まれています。年齢がかなり若く、時間的なゆとりがある方で、すぐに治療を必要とする状況でなければ、コロナが収束するまで様子をみてもいいと思います。ですが、年齢が上がってきたり、妊娠のチャンスが少なくなっているなど時間にゆとりがない方は、これにとらわれずにすみやかに妊活を進めていきましょう。

 

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。